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  1. 2024年7月20日(土)13:00-16:10,立命館大学大阪いばらきキャンパス H棟1Fテラスゲートにて,第50回認知科学研究センター研究会を開催します.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    • 長田 尚子 先生(立命館大学 共通教育推進機構)  「実践コミュニティにおける当事者研究としてのパターン・ランゲージ開発と活用」

       変化の激しい時代,実践コミュニティの存在への期待は高まる傾向にあるが,コミュニティの参加者による議論に注目があたることは少ない.佐伯胖は,人類学的アプローチによる正統的周辺参加論について,「参加」する動機が語られていないこと,二人称的に関わり合う存在として人間を捉える必要があることを指摘している.本研究では,実践コミュニティへの参加者が,彼らの活動をパターン・ランゲージとしてまとめる過程の談話を用いて,当事者の視点でコミュニティの様相を捉える過程とその意義を検討する.パターン・ランゲージの開発事例としては,産学連携PBLを支援する学生アシスタントと教員のコミュニティ,教育改善を目指す大学横断型の教員コミュニティの2つを予定している.ある領域でのコツや経験則をパターンとして掘り起こし名前をつけて議論するという過程を当事者研究として捉え,認知科学研究者の皆様からのご意見を仰ぎたい.
    • 城 綾実 先生(立命館大学 文学部)  「ジェスチャーが質問の組み立てに与える影響」

       挨拶されたので挨拶を返す、質問に対して応答する。こういった行為タイプのペア関係のことを会話分析では隣接ペアと呼ぶ。隣接ペアは第一成分と第二成分で構成される。第一成分で遂行される行為タイプ(挨拶や質問など)が、隣接ペアの第二成分で産出される行為タイプ(挨拶の直後は挨拶、質問の直後は応答)を限定する。会話分析と呼ばれる領域では、こうした隣接ペアの制約関係について文法や言語形式の点からの多くの研究がなされてきた。発表者は、情報や説明が一定程度終わるまでの会話の流れにおいて、質問者のジェスチャーと応答者のジェスチャーにどういった関連性があるのかをこれまで検討してきた。本発表では、質問を組み立てる際に、ジェスチャーがどういった影響を相互行為に与えうるのかについて、言語やジェスチャー等のさまざまな資源が組み合わさる様相、発話者たちの知識の程度などの関係性について、現時点での研究内容を報告する。
    • 布山 美慕 先生(立命館大学 文学部)  「文学・芸術鑑賞における不定性を伴う認知の可能性」

       不定性や曖昧性は、芸術や文学をはじめとする人文学において、創造性や社会変革の一つの基盤として重要視されてきた。一方で、近年の日本社会や認知科学・心理学をはじめとする研究分野では、不定性や曖昧性はむしろ忌避や最小化すべき対象としてネガティブに捉えられることが多い。本発表では、人文学の指摘を振り返った上で、文学・芸術鑑賞における不定性を伴う認知の可能性を探究する実証研究を紹介する。具体的には、文学作品読解時の解釈の不定性の時系列推定、視覚芸術における混合感情(ネガティブ・ポジティブ感情の重ね合わせやネガティブ感情と美的感情の重ね合わせ)の研究を紹介する。くわえて、こういった不定性を伴う認知を、発表者らは量子確率論を用いてモデリングしている。この量子確率論を用いたモデリングについても簡単に紹介する。
    • 村山 綾 先生(立命館大学 総合心理学部)  「内在的公正推論に関するこれまでの研究と今後の研究の構想」

       他者に起こった不運の原因を、直接的で物理的な因果関係がないにもかかわらず、その人物の過去の道徳的失敗に求めることを内在的公正推論という。「日頃の行いが悪いからそんな目にあったのだ」は、典型的な内在的公正推論である。本発表では、主に欧米を中心に行われてきた内在的公正推論に関する先行研究、ならびに発表者がこれまでに行ってきた日本人を対象とした内在的公正推論に関する一連の研究について紹介する。具体的には、不運のみではなく幸運を対象とした検討や、欧米で内在的公正推論を強めるとされる信仰の効果が日本人を対象とした場合でも見られるのか検討した研究などを取り上げる。その後、比較文化心理学の観点から、日本人の内在的公正推論を強める要因に関する今後の研究展開について触れる。また、社会的場面で生じるコミュニケーションの齟齬という観点から、今後あらたに展開したいと考えている研究テーマの構想についても紹介したい。

  2. 今後の研究会


    1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います.次回の研究会は,2023年9月末を予定しています.詳細は追ってお知らせいたします.