産学連携コンソーシアム


   我々は日々の生活において,きわめて自然に,衣服を着用し,床に立ち,ものを持ちます. このとき,衣服・床・ものと人体の間には常に機械的な接触が生じており,我々はこれを力覚・触覚(合わせて力触覚)として感じとっています.

   視覚や聴覚の研究では,光と音という外部刺激を受容する目と耳の仕組みが早くから解明され,また三原色と周波数という刺激の合成原理も発見されました. その成果をもとに,視覚や聴覚の情報工学においては,センサーであるCCD 素子やマイクロフォン,それらの記録手段,そしてLCD やHi-Fi スピーカーなどの再生装置をはじめとして高度な応用が進んでいます.

   一方,触り心地や手ざわりなどに関する工学的意匠の開発は,重要視されながらも,いまなお十分に展開されていません. 機械的刺激に反応するセンサーが,皮膚表面や筋骨格に内在していることは,すでに解明されています. しかし,力触覚に関する情報工学においては,微小な機械的刺激を計測するためのセンサー,計測結果の記録手段,計測結果から構成される対象属性の再現過程のいずれの段階においても,実用化には今一歩という状況です.

   ヒトの認知活動の基礎的な過程を研究している認知科学研究センターでは,環境に対する人間の適応を軸にして,各認知活動を記述し,その機能を解明するとともに,その背後にある機構を特定し,さらに認知過程の相互関係を明らかにすることを目的にしています. また応用的な問題にも研究の範囲を広げ,人間と環境,人間と人間,人間と機械の創発的協働を実現する俯瞰的な認知科学的体系の構築を目指しています.

   この認知科学研究センターの主宰する「力触覚技術応用コンソーシアム」の目的は,ヒトの力触覚の原理の解明を基礎にしながら,工学的に力触覚の過程を再現し,さらには応用にかかわるシームレスな情報収集・分析・構築のシステムをつくり,その得られた技術を企業などとも共有することです.

   本コンソーシアムでは,従来の文理の枠組みを超えて,さまざまな分野の研究者と企業が交流し,分析的なアプローチと構成論的なアプローチの両方法をとることによって,社会との連携を積極的に深めながら,力触覚の解明と応用に迫ります.


主な活動内容

   最後になりましたが,この「力触覚技術応用コンソーシアム」の設置趣意にご理解いただき,ぜひとも当コンソーシアムにご入会いただきたくようお誘い申し上げます. 立命館大学および認知科学研究センターでは,大学のインフラをべースに学外の技術と情報を広範囲に,かつ的確に取り入れることによって,メンバー各位に身のあるサービスを提供いたしますので,必ずや皆様の企業活動の発展に役立つものと信じております.

立命館大学OIC 総合研究機構 認知科学研究センター



QOL相談室

市民,企業,官公庁,教育界などさまざまな方面において,認知科学を基礎とした,生活の改善・向上につながる研究・調査を行っています.たとえば,人が陥りやすい錯誤に関連した問題,環境(騒音や照明光など)の改善につながる問題,認知的課題を含む学習上の問題,さまざまな機器の使い勝手(評価)に関するなどが,そのような対象になります.本研究センターのなかにQOL相談室(QOL= Quality of Life)を設けていますので,お問い合わせなどに対応できるようにしています.QOL相談室に関連した研究会として今は「説明研究会」と「騒音研究会」が活動していますが,今後,テーマを絞った研究を増やすことに努めてまいります.

説明研究会(主催者 山本博樹)

本研究会では,支援モデルの観点に立って,受け手が抱える理解不振のメカニズムを解明し,この理解不振を改善する説明原則の構築を目指します.説明の支援モデルでは,受け手を説明過程の「最後の審判」として戴くため,理解不振をうっかりの類とみなしません。むしろ,主体性の発露とみなし,これを把握し (時にくみ取り),説明過程の始発点と考えます.その上で,受け手の理解を支援する表現方略やデザイン戦略を考えるわけです.これは,教育分野だけでなく,医療分野や産業分野等に適用できる汎用性の高い考え方です.認知科学センタ-に集う研究者にとって,教育,医療,産業等の分野で説明の認知過程を解明し,説明実践の原則を総合的に構築するための繋留点が求められています.本研究会はこうした繋留点の役割を担っていきたいとも考えています.

騒音研究会(主催者 東山篤規)

騒音は心理的な概念である.騒音は行政的には地方自治体によって基準(約40~50dB)が定義されているが,たとえその基準よりも低い音であっても,場の状況によっては騒音になることがあります.たとえば,ひそひそ話(約20dB)は,ふつうは騒音と考えないが,それが図書館で読書をしている人に聞こえたときには騒音とみなされます.大学構内ではさまざまな音をともなう活動が催されていますが,ある人々はそれを騒音と考え,別の人々はそれを伝達・娯楽の手段として許容しています.この研究会では,この種の議論を整理し適切な環境基準を作るための基礎データを集めています.

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