最近の出来事

  1. 2020年3月27日(金)に,第27回研究センター研究会が,公益財団法人大学コンソーシアム京都(京都市下京区キャンパスプラザ京都内)において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMを用いたTV研究会としました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    岡 耕平(滋慶医療科学大学院大学)17:30~「障害支援や医療福祉の分野における適応認知行動学的研究」
       適応認知行動学(Behavior Oriented Psychology)とは,実際の人間の活動場面において観察された行動の特徴について,その背景にある認知的メカニズムについて明らかにしようとする学問領域です. 本講演では筆者が障害福祉事業所や特別支援学校,あるいは病院で活動する中で観察した特徴的な行動について,適応認知行動学的な観点から行った研究結果について紹介いたしました. とくに「ゲーム依存という行動特性がどのように始まりそしてどのように終わるのか」について,発表者自身の体験も含めて,そのメカニズムを検証した知見を紹介しました.

    ズームで写しだされた画面.発表者が右下に写っています
    メイン会場のようすです.


    下野 孝一(東京海洋大学)18:10~「周辺の3次元刺激配置が空間定位と空間認知に及ぼす影響について」(東京からZOOMを通しての発表・参加)
       人間は日常3次元空間の中で生活している. そこでは異なる奥行きをもつ様々な対象が点在している. 最近われわれは,研究対象である刺激(当該刺激)の周辺に,奥行量の手がかりの1つである両眼視差をもつ刺激(奥行刺激)を提示すると,当該刺激の見えは,奥行知覚,方向知覚,数量知覚に関する従来の知見と異なることを発見した(たとえば,Aidaら, 2015a, b, 2020; Kusano & Shimono, 2018; Shimonoら, 2015, 2020). これらの発見は両眼視差で定義される奥行きが当該刺激の空間定位や空間認知に影響することを示唆している. 本講演ではこれらの発見を紹介するとともに,発見を説明する両眼視差処理負荷仮説を提案した. この仮説は,周辺刺激の奥行き(両眼視差)が視覚系に“負荷”を与えた結果,当該刺激の見えが変化すると仮定している. もしこの仮説が正しいとすれば,視差処理負荷は上記以外の見えにも影響する可能性がある.講演ではその可能性についても議論した. さらに講演では,奥行刺激の当該刺激の見えに影響するということが,視覚系の機能の中でどのような意味があるのか考えてみた.

  2. 2020年2月4日(火)に,第26回研究センター研究会が,京都リサーチパーク「たまり場」において開かれました.次の写真は講演光景です.

    演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    岡本真彦(大阪府立大学)18:00~「成人の分数表象の認知的特性」
       近年,分数の認知が心の中でどのように表象あるいは処理されているのかを明らかにしようとする研究が盛んに行われるようになってきています. というのも,分数の理解がそれ以降の算数・数学のカギとなっていることが分かり始めてきたからです. 例えば,欧米では小学校の分数の成績で中学校の関数などの成績が予測できること,つまり,小学校の分数ができるかどうかで中学校の数学の成績が決まるということを報告している研究があります. 日本でも教育現場では,古くから分数の獲得が難しい子どもがいると指摘されてきています. 分数は整数と違って,数(分母)が大きくなると量は小さくなるという性質があり,整数が獲得できてもその知識はそのままでは分数に使えないという特徴を持っています. 実際,我々の研究でも小学生は整数と小数は心の中で同じ一つの数直線の中で扱っているのに対して、分数は別の数直線として扱われている可能性を示唆する結果が得られています. 当日の講演では,分数の扱い方を調べるための実験を実際に体験してもらって,成人である大学生が分数を心の中でどのように表象しているか(扱っているか)に関する研究を紹介してみました.

    山西良典(立命館大学情報理工学部)18:45~「コミック工学とAI −漫画を工学する挑戦−」
       コミック工学は,2013年から草の根的な研究活動を広げ,工学的な技術によって漫画コンテンツの魅力を再発見し,新たな可能性を模索するために2019年に設立した新しい研究分野である.コミック工学研究会では,画像処理,言語処理,音情報処理,データベース,インタフェース,HCIといった様々な研究分野の研究者が一堂に会して,クリエイターから編集者,書店,読者まで,漫画を取り巻くあらゆる場面の課題や要求を工学的なアプローチによって解決するための議論を行っている.コミック工学は,漫画というコンテンツを中心に置き,コンテンツの特性を考慮した分析や処理,インタラクションデザインを提案していくコンテンツ指向研究として位置づけられる.本講演では,電子化がますます勢いを増す漫画の背景とともに出版社や書店に対するインタビューによって得られた知見を共有すると共に,これまでに発表されてきた代表的な研究事例を紹介した.また,漫画を読むという行動を人間のマルチメディア処理の一例として捉えた,エンタテインメントコンテンツの「楽しさ」の秘密に迫るアプローチの展望についても概説した.

  3. 2019年11月22日(金)に,第25回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス,B棟4F B412(研究会室2)において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    多田 美香里(関西福祉科学大学)17:15~「把持に関わる空間の認識について」
       把持の正確さに関する研究と,空間の大きさの見積もりに関する研究について報告する.対象を把持するとき,握り手(ハンドル)のある対象の把持は正確で速いと言われている.対象のどの部分をどのように把持すべきかがはっきりしているためであると考えられる.また把持の経験があるよく知っている対象の方が把持しやすく,さらにそれがよく知っている向きで置かれているときの方がより把持しやすいと考えられる.もし把持到達運動を繰り返し行った過去の経験からそのような効果が生じるのであれば,把持の経験が多い対象とそうでない対象とでは,ハンドルの有無の効果や,対象と観察者の空間配置による影響が異なるのではないかと考え,対象の形状(ハンドルの有無)と熟知性およびその配置による把持の正確さへの影響について検討した.一方で,把持には自らの手の動作に関わる空間の大きさも考慮する必要がある.そこで手の動作可能空間の変化に応じて空間の見積もりがどのように影響されるのかについても検討した.

    木村 貴彦(関西福祉科学大学)18:00~ 「三次元空間における視覚認知:観察者の前方空間と後方空間での比較」
       三次元空間内における注意特性については注意移動や注意配分などの観点から検討が行われてきた(Andersen,1990; Atchley et al., 1996など).しかしながら,多くの研究では両眼視差を用いた立体視環境で実験が行われ,人間の行動空間である実際空間で行われた研究は比較的少ない.我々は実際空間内での視覚的注意研究をこれまでに行ってきたが(木村他,2007; Kimura et al.,2009),これらの研究では観察者の前方空間に刺激が配置されていた.他方,日常生活では自動車の運転時のように,後方に広がる空間から鏡を用いて情報を獲得する場合もあり,三次元空間は観察者の後方にも広がっていると言える.また,鏡の中の対象は反転しているにも関わらず,我々は必要な情報を適切に獲得して行動に役立てている.
       そこで,本講演では観察者の前方空間と鏡を介した後方空間における物体の位置関係や注意配分について注目し,我々がこれまでに行ってきた研究を紹介する.まず,液晶シャッターを用いた瞬間提示事態において物体の位置を再生する課題を行い,前方空間と鏡を介した後方空間での物体認知について比較した.次に,奥行き方向での注意の移動特性について,空間手がかり法(Posner et al.,1980を用いて検討した.これらの実験で得られた知見から,観察者の前方空間と鏡を用いた後方空間における視覚認知特性について議論する.

  4. 近い将来の予定

    1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,隔月に研究会を開催し,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーと外部からお招きした方々の発表を行います.次回の研究会の予定は次のとおりです.
      日時:2020年5月下旬
      場所:びわこ・くさつキャンパス(BKC)あるいは京都駅周辺の適切な会場