最近の出来事

  1. 2020年11月26日(木)に,第30回研究センター研究会が,コロナ・ウィルスの感染対策としてzoomを用いて開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    島川博光(情報理工学部) 17:30~ 『ふるまい,生理学信号を用いたモニタリング同調の検知と自己調整学習への応用』
       学生が自主的に学ぶことを旨とする自己調整学習に効果的なグループワークを多くの教員が導入しようとしている. 成功しているグループワークでは,メンバは,他のメンバが何を考えているか,どのようにすれば各自の案を融和できるかを思考するモニタリングに従事する. モニタリングがメンバ間で同時期に起こっているとき,学びのために何が必要かを各メンバが強制されることなく考える自己調整学習が起こっていると考えられる. 与えられた課題をグループ内での議論を伴う協働により解く場合を考える. 本研究では,ひとりの教員が多数の学生グループを指導している教育現場で,グループワークを成功に導く手法を確立することを目指している. 今回の発表では,侵襲性が低いセンサを使いグループ内でのモニタリング状態をその場で把握し,教員に知らせる実験について紹介する. さらに,そこでの結果を踏まえ,議論,協働が活発化しないグループを,教員が成功に導けるように指導する環境として,どのようなものが考えられるかの一案を示し,みなさまからのご批判を仰ぐ.

    北岡明佳(総合心理学部)18:15~  『フットステップ錯視のレビュー』
       フットステップ錯視(footstep illusion)とは,一定速度で動いている刺激の速度が,背景の縞模様と相互作用して,速く見えたり遅く見えたりする運動視の錯視(Anstis, 2001)である.フットステップ錯視は,運動する対象のエッジのコントラストに依存して知覚される速度が異なって見える現象であるという説明(Thompson, 1982)が有力である.それに加えて,Gregory and Heard (1983) が提案した幾何学的錯視,およびWade (1990) の隠し絵(hidden image)に類似した消失錯視によるポジションキャプチャとモーションキャプチャが重要な役割を演じていることを,本レビューでは指摘する.関連する錯視,たとえばキックバック錯視(kickback illusion: Howe, Thompson, Anstis, Sagreiya & Livingstone, 2006),キックフォーワード錯視(kick-forward illusion),でこぼこ道ドライブ錯視(driving-on-a-bumpy-road illusion),リバーストファイによるフットステップ錯視(the footstep illusion based upon reversed phi motion)などを考察する.


    ズーム・ミィーティングの記念写真
  2. 2020年9月25日(金)に,第29回研究センター研究会が,立命館大学茨木キャンパスB棟4階 B413研究会室 において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMによって参加することも可能にしました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    丸山勝久(情報理工学部)17:30〜 『自動プログラム修正の可能性について』
       ソフトウェア開発におけるプログラミングが人間による作業である以上,プログラム中にバグ(誤り)が存在することは避けられない.よって,誤りを取り除くデバッグは,ソフトウェアの信頼性の向上のために必須の作業である.近年,効率的なデバッグ作業の実現を目的とした自動プログラム修正(APR: Automated Program Repair)が注目を集めている.これは,バグのあるプログラムから完全自動でバグを取り除く技術であり,その成功例も報告されている.一般的に,自動プログラム修正では,バグを含むソースコードに対するテストケース(テストスイート)を用意する必要があり,テストケースの品質が自動プログラム修正の成否に大きな影響を与える.また,修正後のソースコードの品質も均一ではない.    本発表では,自動プログラム修正の最新技術を紹介し,我々が取り組んでいる遺伝的アルゴリズムに基づく手法や自動バグ修正の応用を紹介した.さらに,ソースコードに存在するバグやバグを含まないソースコードとはそもそも何を指すのか,ソースコードの品質とは何か,人間によるデバッグと機械によるデバッグに違いについても議論した.

    東山篤規(総合心理学部)18:15~ 『並木実験によって示唆された視覚および触運動空間の幾何学』
       視空間の現象を広範に記述する幾何学モデルのひとつにLuneburg-Blankモデルがある. このモデルを用いてIndowたちは,奥行方向につくられた非交叉並木と等距離並木の不一致を解釈して,視空間の幾何学は双曲的であるとした. 演者は,学生の頃から並木問題に興味をもってきたが,最近は,教示などの変数を厳格に統制した実験を実施したうえでモデルの前提条件を 少し変えることによって視空間をユークリッド幾何学的に解釈することができると思うようになってきた. そこで研究会では,並木問題の歴史的背景を紹介するとともに,視空間がユークリッド幾何学によって記述されうると思うようになった経緯について述べた. また目を閉じて触運動感覚のみをたよりにつくられた並木と視覚的を用いてつくられた並木の相違についても述べた. よって話の要点は1)視覚による並木実験の歴史的展望(平行線の定義問題を含めて),2)Luneburg-Blankモデルによる並木実験の解釈,3)演者の実験の紹介,4)並木をつくるにあたって用いられる視覚と触運動情報であった.

  3. 2020年7月21日(月)に,第28回研究センター研究会が,京都市下京区「キャンパスプラザ京都」において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMによって参加することも可能にしました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    松原崇充(奈良先端科学技術大学院大学)18:00~「確率共鳴に基づく生体模倣型触覚センサの触知覚感度強化」
       確率共鳴とは,弱い信号がノイズと共鳴して信号-ノイズ比が改善される現象である.自然界でも頻繁に観察されている. 我々は,生物の触覚における確率共鳴にヒントを得て,生体模倣触覚センサの感度を向上させるノイズの効果を検証した.実験では,触覚センサに取り付けた振動モータにノイズを印加し,10種類のサンドペーパーをなぞる触覚データをSVMで識別した. その結果,ノイズを加えることで大幅な精度向上を実現した.さらに,信号雑音比の改善も確認された.本講演では,これらの詳細に加えて,他のロボット触覚情報処理に関する我々の研究成果についても紹介した.

    麻生 武(奈良女子大学)18:45~ 「私的な意識の謎:痛みの概念の獲得から」
       「痛み」や「内的状態」の「私秘性」の意識は,単独者の孤独な思弁的反省からではなく,他者とのコミュニケーションの中で生まれてくるに違いない. 子どもが転んで痛くて泣きわめいても,大人はしばしば「痛みを感じる」当事者ではないにも関わらず自信をもって「痛くない,痛くない」と子どもを慰める. 大人は子どもの「リアルな気持」を差しおいて,子どもの気持ちを代弁する存在である.子どもは痛いのに「痛くない」と言われ,怖いのに「怖くない」と言われ,まずいのに「美味しいね」と言われて育つのである. おそらく,子どもは遅かれ早かれ,そのズレを感じ始めるに違いない.そこから,子どもは自分の感じる「痛み」や「心的状態」の「私秘性」を感じるようになっていくのだろう.しかし,それは生後2年目の子どもにはまだまだ手の届かない世界である. <私>とい意識の獲得も同様に謎に満ちている.「謎」が存在することを論じた.

  4. 近い将来の予定

    1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います.次回の研究会は,2021年2月の2週目あたりを予定しています.詳細は追ってお知らせいたします.