最近の出来事

  1. 「説明研究会」の発足および「つまづき研究分科会」の解散について
    主宰:山本 博樹
    発足趣旨:
    本研究会では,支援モデルの観点に立って,受け手が抱える理解不振のメカニズムを解明し,この理解不振を改善する説明原則の構築を目指します.説明の支援モデルでは,受け手を説明過程の「最後の審判」として戴くため,理解不振をうっかりの類とみなしません。むしろ,主体性の発露とみなし,これを把握し (時にくみ取り),説明過程の始発点と考えます.その上で,受け手の理解を支援する表現方略やデザイン戦略を考えるわけです.これは,教育分野だけでなく,医療分野や産業分野等に適用できる汎用性の高い考え方です.認知科学センタ-に集う研究者にとって,教育,医療,産業等の分野で説明の認知過程を解明し,説明実践の原則を総合的に構築するための繋留点が求められています.本研究会はこうした繋留点の役割を担っていきたいとも考えています.
  2. 2017年9月29日(木)に,第12回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)のエポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    永井聖剛(総合心理学部)16:30~17:00:「大きなモノみて力強く! −知覚刺激が発揮筋力に与える影響−」:刺激−反応適合性研究に関しては空間次元について検討したものが多いが(e.g., Simon & Berbaum, 1990),少数ながら刺激の物理的強度と反応強度(「強い」あるいは「弱い」キー押し)との間の刺激—反応適合性,すなわち,大きい,明るいなど物理強度が大きい刺激に対し強い反応が適合していることが報告されている(Romaiguère et al., 1993).我々はさらに,刺激の単純な物理的性質だけでなく,より抽象化された概念的レベルでの刺激情報が反応出力システムと共有されていることが示唆する結果を示した.また,抽象化レベルでの情報共有は運動出力間でも生じること,すなわち,大きな声を出しているときには,小さな声を出しているときよりも,描画される円の大きさが大きくなることも見出した.したがって,刺激の物理量に関する情報,運動の強さ/大きさに関する情報は,知覚と運動との区別なく,抽象レベルで(例,大-小,強-弱)共通に表現され,相互に影響を与えるものと考えられる.
    この仮説に則って近年では,刺激—反応適合性パラダイムによらない実験事態で,刺激サイズや刺激が示唆するパワーと発揮される握力との関係を調べた。その結果,サイズが大きい刺激やレスラー画像に対しサイズが小さい刺激や乳幼児画像よりも大きな握力が発揮されることも示した.

    佐藤隆夫(総合心理学部)17:00~17:30:「モノを見るメカニズム」
  3. 9月19日に大阪いばらきキャンパス(OIC)フューチャープラザ3Fコロキウムにおいて,立命館大学「力触覚応用コンソーシアム」の初回の会合が開かれました.企業関係者30名あまりの方々にお集まりいただき,成功裏に会を終えることができました.野間春生の司会進行のもとにつぎの講演が行われました.

    東山 篤規「触覚の心理学的アプローチ」
    杉山 進「Siピエゾ抵抗効果を用いた力・触覚センサの実用化」
    寒川 雅之「マイクロカンチレバとエラストマを用いた触覚センサの開発と質感計測への応用」
    下江 輝「ディープラーニングを用いた素材識別の試み」

    この後,懇親会(OICフューチャープラザ1Fイベントホール3)がもたれ,懇親会場では,企業側からの参加者との間で有益な交流ができました.
  4. 学振外国人特別研究員の Valeria Casoldi 氏が8月16日にイタリアから来日され,大阪いばらきキャンパス(OIC) B棟5Fの認知科学研究センターの部屋を研究拠点に活動しています.滞在期間は10月まで.お見かけになることがあれば,お声がけください.
  5. 2017年7月27日(木)に,第11回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)大阪いばらきフューチャープラザ4F研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    木村 朝子,橋口哲志(立命館大学情報理工学部)16:30~17:15:「複合現実型視覚刺激が触力覚知覚に与える影響」現実空間と仮想空間を実時間で重ね合わせる複合現実 (Mixed Reality; MR) 空間において,視覚や聴覚による触力覚への影響といった多感覚刺激を活用する研究が注目を集めている.MR空間では,実物体にCGを重畳描画することで実物体の外観を視覚的に変更することができる.一方,人の触力覚は,視覚から影響を受けることが一般に知られていることから,現実空間に重畳描画される人工的な視覚情報(以降,MR型視覚刺激と呼ぶ)が触力覚に影響を及ぼす可能性は高い.本発表では,我々がこれまでに発見したMR型視覚刺激によるいくつかの視触力覚錯覚現象を紹介した.具体的には,実物体と重心位置の異なるCG画像を重畳描画した場合に,重心位置が複合現実型視覚刺激に引きずられ,知覚される重心位置が変化する錯覚現象 (Shape-COG Illusion) や,実物体(剛体)と仮想物体(液体)の運動状態が異なる場合に,力覚を通して実物体の運動知覚に影響を及ぼす錯覚現象 (R-V Dynamics Illusion) などが挙げられる.

    不二門 尚(大阪大学大学院医学系研究科)17:15~18:15:「医学的立場から見た立体視:小児の斜視と立体視障害,3D映像と眼の疲労」 HMDを用いた仮想現実(VR)の映像は広く普及しつつあるが,VRでは両眼に視差のある3D映像が用いられ,眼の輻湊系と調節系が解離するため、眼が疲れやすいという問題点がある.視差の大きな3D映画を見た後,内斜視が誘発された小児の症例が報告されたことなどから,近年では3D映画で用いる視差は基本的に1°以内に制限されている.立体視は6歳位まで発達期にあり,この間に眼の平行性が保たれないと立体視機能が失われるため,小児の3D映像視聴は注意する必要がある.一方立体視の弱い,斜視治療後の症例においては,通常の立体視検査で立体視(-)であっても飛び出しの大きな3Dアトラクションは立体的に見える可能性がある.逆にこのような症例では,視差の小さい3D映画は立体的に見えない.今後教育の現場で3D映像が使用される場合には,このような点に配慮する必要がある.
  6. 2017年6月25日(日)10時50分~に,「CHI勉強会2017」が,東京,北海道,関西の3会場をコンピュータでつないで開催されました.関西会場は,認知科学研究センターの支援のもと大阪いばらきキャンパス(OIC)のB棟カンファレンス室が充てられました(幹事団の一人が松村耕平).
  7. 2017年6月17日(土)に,日本認知科学会主催「知覚と行動モデリング(P&P)研究会」が,認知科学研究センターとの共催のもと,大阪いばらきキャンパス(OIC) B棟1階で開催されました.
  8. 2017年5月26日(金)に,第10回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命K305において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    大石衡聴(総合心理学部)16:30~17:00:「脳の律動的活動から文処理過程を探る試み」オンラインで言語情報(特に文のレベル)を処理している際の脳活動について検討するにあたっては,一般的には外的事象に関連して惹起される一過性の脳電位変動である事象関連電位 (Event-related potentials: ERPs) が指標として用いられている.それに対して発表者は,自発脳波データに時間周波数解析を実施することによって観察される脳の律動的活動 (oscillatory activity) を指標とすることで,従来の事象関連電位を指標とした研究手法では検証が困難であった文処理過程に付いても検討が可能となることを示すための研究を実施している.具体的には,「予測との不一致」という事象が発生していない場合の文処理過程の内容について検討するにあたって脳の律動的活動の変化パターンを観察することの有用性を実証している(事象関連電位は「予測との不一致」に伴い惹起される).本発表では,処理のある過程で文の心的表象が二つ以上構築可能な文と一つのみの文とを呈示した際の脳波を比較し,前者のみでα帯域(8−13ヘルツ)で有意に大きな事象関連脱同期 (Event-related desynchronization) が観察されたというデータを公表した.それをもとに,事象関連電位のみならず,脳の律動的活動もあわせて用いることによって文処理システムの実態により深く迫ることができると主張した.

    小松原哲太(言語教育センター)17:00~17:30「凝縮された意味理解をもたらすカテゴリー化の文脈調整」言語を用いたコミュニケーション方略の中で,語の意味を柔軟に転用するレトリックの表現は,効率的かつ印象的な意味伝達を可能にしている.提喩は,一般的な類によって特殊例を表す (e.g. 甘いもの>菓子) ,あるいは特定の例によってカテゴリー全体を表す (e.g. ごはん>食物) レトリックである.提喩のようなレトリックが日常言語においても重要な役割を担っていることは,一般には知られていない.本発表では,認知言語学の立場 (e.g. Langacker 2008) から,日本語の提喩を考察対象として,提喩が,日常的な名づけの体系から脱し,新しい視点からターゲットとなる概念の特定の側面を際立たせ,浮き彫りにする効果をもつことを示した.本発表で論じた言語現象は,日常言語の意味伝達が,厳密な推論と計算のプロセスにもとづくものであるというよりは,慣習的な言語知識とコミュニケーションの文脈との関係を柔軟に調整するプロセスを基盤としていることを示唆している.参加者との質疑応答では,具体事例の観察にもとづいて,カテゴリー化と意味理解に関する問題が提起され,建設的な意見交換を行うことができた.

    岡本雅史(文学部)17:30〜18:00「漫才対話のマルチモーダル分析に基づくコミュニケーション支援:コミュニケーション能力の向上から教育コンテンツのデザインまで」:本発表では,漫才対話をコミュニケーション実践と情報伝達様式という2つの観点から検討した.従来の漫才研究が「お笑い」という話芸の一典型としてどのようにユーモアを生成させているかという観点の研究が主であったのに対し,本発表では,岡本(2007)で提案した〈オープンコミュニケーション〉という,直接の対話者以外の第三者に開かれた対話様式を漫才対話が取ることに着目し,そうした対話の場の外に向けられる外部指向性が視線と身体方向というコミュニケーションのモダリティ間のギャップによって実現されていることを明らかにした.一方,言語学的にはツッコミ発話が先行発話行為,先行発話内容,対話者の非言語行動,という複数のレベルにまたがる不適切性の指摘として実現されることを示し,そうした複数レベルにまたがる言及の指向性が,ヒトの事態把握における高次認知能力としての理解プロセスの解明に繋がる可能性を示唆した.このように漫才対話をコミュニケーション的に捉える本研究は,次世代コミュニケーション能力の育成や対話型の教示コンテンツのデザインの指針の策定に寄与するものであると考えられる.
  9. 2017年4月17日(月)に,センターの新運営委員として,仲谷善雄,木村朝子,谷口忠大(いずれも情報理工学部教授)の新規加入が認められました.
  10. 2017年4月1日(土)に,認知科学研究センターの拠点を衣笠キャンパスから大阪いばらきキャンパス(OIC)に移しました.
  11. 2017年3月31日(金)に,第9回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)B棟4Fの研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    山本博樹(総合心理学部)16:00~17:00 「授業デザイナ-に課された支援的説明の難題」:本発表では,授業デザイナ-に課された支援的説明の難題について,理論と実践の両面から検討した.そもそも,教師が授業デザイナ-と称して授業に関与し始めたのは,Norman (1988) により「自称」デザイナ-の身勝手さが糾弾され,学習者中心に軸が移行し,支援重視へとデザイン原則が転換した後,である.よって,「本当の」授業デザイナ-とは,学習支援に献身的な努力をする者を指すはずである.特に,リアルな学習支援の場面では支援的説明の提供という形をとると考えられる.この実践事例として,読解に苦戦する二部中学校へ通う生徒への支援として,教師が自作教材を作成し,メタ説明をデザインした授業実践を紹介した (山本, 2009).しかし,併せて,支援的説明を始発させるはずの支援要請の把握時に,児童生徒が支援要請を表出しなかったり,表出された要請を支援者が捏造したりするという難題が生じることもデ-タや事例を基に指摘した.この難題の解消を目指すとき,学習者の「つまずき」(failure) を主体性の発露とみなし,この発露を支援要請として受給するというロジックに一定の可能性があることを述べた.発表では,このロジックに対する解釈や考察,今後の課題について相互に意見交換を行った.

    春日彩花(大阪大学)17:00~17:30 「学習者の「つまずき」の一側面:素朴な概念に着目して」: 学習のつまずきに関わる要素の1つとして,日常生活の中で構築される素朴な概念(プリコンセプション)を取り上げた.プリコンセプションは,学校で教えられる概念(科学的概念)とは必ずしも一致しないものの,首尾一貫性があり,日常生活では問題が生じず繰り返し使われるため,強固で変化しにくいという特徴がある.本発表では,プリコンセプションから科学的概念への変容過程を調べるために行った実験を,特に概念変容に至らなかったケースに注目して報告した.実験では,大学(院)生67名に中学校で学習する力学課題を提示した.その結果,多くの対象者が,科学的概念と不一致のプリコンセプションを所持していた.さらに,概念変容モデル(Hashweh, 1986)に基づいて教材を作成し,全問正答者を除く52名に提示した後,事後テストを行った.その結果,プリコンセプションを科学的概念へと変容した「概念変容群」,プリコンセプションを維持し続けた「プリコンセプション維持群」,プリコンセプションを一部変化させた「プリコンセプション変容群」の3パターンが存在していたことが分かった.また,①プリコンセプションと科学的概念の違いが正確に認識されないこと,②科学的概念に対して生じた疑問が解消されないこと,③プリコンセプションより科学的概念のほうが有用であると認識されないことによって,科学的概念への変容が達成されない可能性が示された.

    北村尊義(情報理工学部)17:30~18:00 「続けるためのICTの利用」:本発表では,つまずきに関する話題提供として,(1)つまずき克服のための支援方策と,(2)そもそもつまずかないようにする方策の研究を1件ずつ紹介しました.(1)は,環境配慮行動の習慣化につまずくという課題に対して,ゲーミフィケーションを用いる研究です.ゲーミフィケーションは困難な課題にゲーム要素を取り入れることで実践を容易にする手法ですが,環境配慮行動の場合は実践したかどうかの計測が難しい行動が多く存在し,導入が難しいという問題がありました.本研究では,この問題に対し,仮想エージェントとの信頼構築をすすめる恋愛ゲーミフィケーションを提案し,評価しました.(2)は,カーナビゲーションを使い始めのうちは音声案内による指示がわからない,距離感がつかめずに間違えるというつまずきに対して,パーソナライズ化した自分のつぶやき(「あとちょいで左」など)を利用するという手法の研究です.自分のつぶやきをカーナビゲーションの音声案内に用いることの効果については不明な部分が多いのですが,本研究の実験結果では一般的な音声案内と比べての正答率が有意に高いとう結果を得ることができました.(1)と(2)はともにICTの可能性を活用する研究であり,つまずきの克服とつまずきの撤廃という両方向からのアプローチについてのディスカッションを求めました.

近い将来の予定

  1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います.
  2. 2017年12月1日~3日に,本研究センターとの共催のもと,日本基礎心理学会第35回大会が立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開かれます.
  3. 2018年には,本研究センターとの共催のもと,日本認知科学会第35回大会(8月30日〜9月1日)と日本認知心理学会第16回会が立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開かれます.