最近の出来事

  1. 2021年11月24日(水)に第36回研究センター研究会が,ZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    品川 啓介(テクノロジーマネジメント研究科)5:30~『学術研究における経路依存の発生過程および企業の研究開発への影響』
     自然科学分野の専門の学術領域を構成する研究者集団には,蓄積された知識に囚われ他領域の進歩や現況の認識を欠いたまま,それぞれの研究に邁進してしまう現象が散見される.本稿ではこれを研究プロセスにおける経路依存と定義し,この(経路依存の)存在が科学の進歩の様相を分けた事例として青色発光ダイオード開発における発光素材料の開発競争を選び比較する.この競争では科学理論に基づき成功が期待されてきたZnSe研究において理論の新たな展開が見られないなか,期待されてこなかったGaN研究において画期的な科学の発見を基にした展開が生じたこと,ZnSe研究の研究者達はこのような状況下でも研究を継続したことが知られている.これについて,それぞれ定量分析(科学論文の書誌情報分析)と定性分析(研究者インタビューなど)を行うことで,経路依存が発生する過程と,それが企業の研究開発へ及ぼす影響を明らかにする.これを,企業における経営戦略策定において研究開発テーマを設定する際に勘案すべき重要事項として提案する.

    松村 耕平・川上 雄大・渡邊 将太(情報理工学部)6:15~『感情の時系列的表現が可能な顔アイコンアニメーション作成システム』 
     感情を絵文字として表した顔アイコン(顔文字,Emoticon)がオンラインコミュニケーションを円滑にする目的で用いられてきています.これらは便利な一方でコミュニケーションの問題を生じる原因にもなっています.たとえば,顔アイコンにメッセージの送り手が持たせた意味が受け手の解釈と相違することによって誤解を招くことがあるでしょう.私たちは顔アイコンをアニメーションとすることによって感情を時系列として表現することができるシステムを開発しています.第一部では,その入力インタフェースの特徴,システムの応用としてオンラインレビューへと展開した最新の研究例について説明します.第二部では,システムの表現力を向上するための試みと,その試みに関連した問題と最新の研究成果について説明します.研究会では,これらの研究成果について議論したいと考えています.

  2. 2021年9月30日(木)に第35回研究センター研究会が,BKCアドセミナリオA210教室およびZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    高橋 康介(総合心理学部)5:30~ 『顔認知の多様性』
     (他者の)顔の認知が人々の社会的活動を支える重要な認知機能であることは言うまでもありません.多くの人は顔を見ることに過度に習熟しており,誰もが自分と同じような仕方で他者の顔を認識していると感じているかもしれません.顔認知に関する諸現象,例えば倒立効果(サッチャー錯視),整列効果(キメラ顔),魅力規定因などについて観察者の地理的文化的背景の影響が取り上げられることは稀です.一方で表情の表出と認識についてはなお文化的差異について見解が分かれています.私たちの研究チームではこのような顔認知の普遍性を検証するため世界各地のフィールドで顔認知に関する実験を行ってきました.絵文字の表情認知,モノやノイズ的パターンが顔に見えるパレイドリア現象,顔の描画などの一連の研究を通して,私たちが想像していた以上に多様な顔認知過程の一端が示されつつあります.例えばインターネット上のやりとりでよく使われる笑顔のスマイリー(J),これが誰にとっても笑顔に見えるわけことが示されました.本講演では私たちが取り組んできた顔認知の多様性に関する研究成果を紹介するとともに,フィールド実験という認知研究の可能性について議論しました.

    高田 秀志(情報理工学部)6:15~ 『協調作業支援における音声エージェントの活用』 
     近年,Amazon EchoやGoogle Nestなどのように,音声で操作し,様々な情報を得ることのできる音声エージェントデバイスが利用され始めている.このようなデバイスは,主に家庭において,個人の活動を支援するのが目的であるが,一方で,オフィスなどにおける協調作業に対しては,どのような機能を果たすべきかを人間によって抽出したような研究に留まっている.本発表では,複数人がWebから情報を収集し,何らかの合意形成を図る「協調Web検索」と呼ばれる作業を対象として,Webページの検索と参加者間のページ共有を支援する機能を持つ音声エージェントを開発し,使い勝手,作業への関与度合い,アウェアネスの観点から評価を行った結果を紹介した.評価の結果は必ずしも良いものとは言えず,参加者の作業への関与度合いやアウェアネスは向上する傾向が認められるものの,使い勝手は有意に低下してしまった.このため,ジャーナル論文への投稿では二度の不採録となっている.音声エージェントは複数人が関わる協調作業のどのような場面に有効に機能するのかについて議論をした.

  3. 2021年7月28日(水)に第34回研究センター研究会が,研究会室(OIC, B棟B414)およびZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    泉 朋子(情報理工学部)5:30~『災害時の避難行動を誘発する情報表現に関する研究』
     災害発生時において情報の受け手に対し即座の避難行動を誘発する情報表現について研究をしている.大規模な地震が発生した場合,逃げ遅れることで津波や土砂災害などの二次被害に巻き込まれ命を落とすケースが多数報告されている.そこで本研究では,避難が必要となる津波を伴う大地震を想定し,スマートフォン上での提示する災害情報について複数のテキスト表現を検討し,人が最も避難しようと感じる表現を比較調査している.本発表ではこれまでの調査結果と,現在の取り組みについて紹介する.これまでの調査では,津波高を数字で提示する表現,津波高を身の回りの物の高さに例えて提示する表現,津波到達予想時刻をカウントダウン形式で提示する表現,住家の損壊予想を提示する表現,市の避難予想人数を提示する表現,通信インフラの損壊予想を提示する表現の6種類を比較した.その結果,恐怖喚起コミュニケーションを用いた住家の損壊予想を提示する表現が最も避難行動の誘発効果が高いことを確認した.

    大石 衡聴(総合心理学部)6:15~『感情状態は言語処理に影響を及ぼすのか ー事象関連電位を指標としてー』 
     近年,感情状態が言語処理に影響を及ぼすという,新たな知見が積み重ねられている.その中でも興味深い発見として,文の統語的逸脱に敏感な P600 という事象関連電位 (Event-related potential: ERP) 成分がポジティブ感情状態の際には観察される一方でネガティブ感情状態の際には観察されないというものが挙げられる (e.g., 伏田・松原・片山, 2017; Yano, Suzuki, & Koizumi, 2018).このように感情状態の「違い」によって言語処理のされ方が異なることは示唆されているが,感情状態の「変化」が言語処理のされ方にどのような影響を及ぼすのかはまだ検討されていない.そこで本研究では,実験の前半と後半とで異なる感情誘導を試み,感情状態の変化によって統語的逸脱に対する脳反応に変化が生じるかどうかを検証した.中性感情に誘導した後で文を提示した前半では,正文(例:山田さんは椅子に座った.)に比べて非文(例:山田さんは椅子を座った.)で有意に大きな P600 が観察された.ポジティブ感情誘導後に文を提示した後半では,非文で前半と同様の P600 に加え,前頭部陰性電位も観察された.前頭部陰性電位は文の形態統語的逸脱を反映するとされる成分であり,本研究ではポジティブ感情誘導により覚醒度が上がったことによって脳が文の形態統語的側面にまで強く注意を向けるようになったと主張した.

  4. 近い将来の予定

    1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います.次回の研究会は,2022年1月下旬から2月上旬を予定しています.詳細は追ってお知らせいたします.