最近の出来事

  1. 2017年6月25日(日)10時50分~に,「CHI勉強会2017」が,東京,北海道,関西の3会場をコンピュータでつないで開催されました.関西会場は,認知科学研究センターの支援のもと大阪いばらきキャンパス(OIC)のB棟カンファレンス室が充てられました(幹事団の一人が松村耕平).
  2. 2017年6月17日(土)に,日本認知科学会主催「知覚と行動モデリング(P&P)研究会」が,認知科学研究センターとの共催のもと,大阪いばらきキャンパス(OIC) B棟1階で開催されました.
  3. 2017年5月26日(金)に,第10回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命K305において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    大石衡聴(総合心理学部)16:30~17:00:「脳の律動的活動から文処理過程を探る試み」オンラインで言語情報(特に文のレベル)を処理している際の脳活動について検討するにあたっては,一般的には外的事象に関連して惹起される一過性の脳電位変動である事象関連電位 (Event-related potentials: ERPs) が指標として用いられている.それに対して発表者は,自発脳波データに時間周波数解析を実施することによって観察される脳の律動的活動 (oscillatory activity) を指標とすることで,従来の事象関連電位を指標とした研究手法では検証が困難であった文処理過程に付いても検討が可能となることを示すための研究を実施している.具体的には,「予測との不一致」という事象が発生していない場合の文処理過程の内容について検討するにあたって脳の律動的活動の変化パターンを観察することの有用性を実証している(事象関連電位は「予測との不一致」に伴い惹起される).本発表では,処理のある過程で文の心的表象が二つ以上構築可能な文と一つのみの文とを呈示した際の脳波を比較し,前者のみでα帯域(8−13ヘルツ)で有意に大きな事象関連脱同期 (Event-related desynchronization) が観察されたというデータを公表した.それをもとに,事象関連電位のみならず,脳の律動的活動もあわせて用いることによって文処理システムの実態により深く迫ることができると主張した.

    小松原哲太(言語教育センター)17:00~17:30「凝縮された意味理解をもたらすカテゴリー化の文脈調整」言語を用いたコミュニケーション方略の中で,語の意味を柔軟に転用するレトリックの表現は,効率的かつ印象的な意味伝達を可能にしている.提喩は,一般的な類によって特殊例を表す (e.g. 甘いもの>菓子) ,あるいは特定の例によってカテゴリー全体を表す (e.g. ごはん>食物) レトリックである.提喩のようなレトリックが日常言語においても重要な役割を担っていることは,一般には知られていない.本発表では,認知言語学の立場 (e.g. Langacker 2008) から,日本語の提喩を考察対象として,提喩が,日常的な名づけの体系から脱し,新しい視点からターゲットとなる概念の特定の側面を際立たせ,浮き彫りにする効果をもつことを示した.本発表で論じた言語現象は,日常言語の意味伝達が,厳密な推論と計算のプロセスにもとづくものであるというよりは,慣習的な言語知識とコミュニケーションの文脈との関係を柔軟に調整するプロセスを基盤としていることを示唆している.参加者との質疑応答では,具体事例の観察にもとづいて,カテゴリー化と意味理解に関する問題が提起され,建設的な意見交換を行うことができた.

    岡本雅史(文学部)17:30〜18:00「漫才対話のマルチモーダル分析に基づくコミュニケーション支援:コミュニケーション能力の向上から教育コンテンツのデザインまで」:本発表では,漫才対話をコミュニケーション実践と情報伝達様式という2つの観点から検討した.従来の漫才研究が「お笑い」という話芸の一典型としてどのようにユーモアを生成させているかという観点の研究が主であったのに対し,本発表では,岡本(2007)で提案した〈オープンコミュニケーション〉という,直接の対話者以外の第三者に開かれた対話様式を漫才対話が取ることに着目し,そうした対話の場の外に向けられる外部指向性が視線と身体方向というコミュニケーションのモダリティ間のギャップによって実現されていることを明らかにした.一方,言語学的にはツッコミ発話が先行発話行為,先行発話内容,対話者の非言語行動,という複数のレベルにまたがる不適切性の指摘として実現されることを示し,そうした複数レベルにまたがる言及の指向性が,ヒトの事態把握における高次認知能力としての理解プロセスの解明に繋がる可能性を示唆した.このように漫才対話をコミュニケーション的に捉える本研究は,次世代コミュニケーション能力の育成や対話型の教示コンテンツのデザインの指針の策定に寄与するものであると考えられる.
  4. 2017年4月17日(月)に,センターの新運営委員として,仲谷善雄,木村朝子,谷口忠大(いずれも情報理工学部教授)の新規加入が認められました.
  5. 2017年4月1日(土)に,認知科学研究センターの拠点を衣笠キャンパスから大阪いばらきキャンパス(OIC)に移しました.
  6. 2017年3月31日(金)に,第9回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)B棟4Fの研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    山本博樹(総合心理学部)16:00~17:00 「授業デザイナ-に課された支援的説明の難題」:本発表では,授業デザイナ-に課された支援的説明の難題について,理論と実践の両面から検討した.そもそも,教師が授業デザイナ-と称して授業に関与し始めたのは,Norman (1988) により「自称」デザイナ-の身勝手さが糾弾され,学習者中心に軸が移行し,支援重視へとデザイン原則が転換した後,である.よって,「本当の」授業デザイナ-とは,学習支援に献身的な努力をする者を指すはずである.特に,リアルな学習支援の場面では支援的説明の提供という形をとると考えられる.この実践事例として,読解に苦戦する二部中学校へ通う生徒への支援として,教師が自作教材を作成し,メタ説明をデザインした授業実践を紹介した (山本, 2009).しかし,併せて,支援的説明を始発させるはずの支援要請の把握時に,児童生徒が支援要請を表出しなかったり,表出された要請を支援者が捏造したりするという難題が生じることもデ-タや事例を基に指摘した.この難題の解消を目指すとき,学習者の「つまずき」(failure) を主体性の発露とみなし,この発露を支援要請として受給するというロジックに一定の可能性があることを述べた.発表では,このロジックに対する解釈や考察,今後の課題について相互に意見交換を行った.

    春日彩花(大阪大学)17:00~17:30 「学習者の「つまずき」の一側面:素朴な概念に着目して」: 学習のつまずきに関わる要素の1つとして,日常生活の中で構築される素朴な概念(プリコンセプション)を取り上げた.プリコンセプションは,学校で教えられる概念(科学的概念)とは必ずしも一致しないものの,首尾一貫性があり,日常生活では問題が生じず繰り返し使われるため,強固で変化しにくいという特徴がある.本発表では,プリコンセプションから科学的概念への変容過程を調べるために行った実験を,特に概念変容に至らなかったケースに注目して報告した.実験では,大学(院)生67名に中学校で学習する力学課題を提示した.その結果,多くの対象者が,科学的概念と不一致のプリコンセプションを所持していた.さらに,概念変容モデル(Hashweh, 1986)に基づいて教材を作成し,全問正答者を除く52名に提示した後,事後テストを行った.その結果,プリコンセプションを科学的概念へと変容した「概念変容群」,プリコンセプションを維持し続けた「プリコンセプション維持群」,プリコンセプションを一部変化させた「プリコンセプション変容群」の3パターンが存在していたことが分かった.また,①プリコンセプションと科学的概念の違いが正確に認識されないこと,②科学的概念に対して生じた疑問が解消されないこと,③プリコンセプションより科学的概念のほうが有用であると認識されないことによって,科学的概念への変容が達成されない可能性が示された.

    北村尊義(情報理工学部)17:30~18:00 「続けるためのICTの利用」:本発表では,つまずきに関する話題提供として,(1)つまずき克服のための支援方策と,(2)そもそもつまずかないようにする方策の研究を1件ずつ紹介しました.(1)は,環境配慮行動の習慣化につまずくという課題に対して,ゲーミフィケーションを用いる研究です.ゲーミフィケーションは困難な課題にゲーム要素を取り入れることで実践を容易にする手法ですが,環境配慮行動の場合は実践したかどうかの計測が難しい行動が多く存在し,導入が難しいという問題がありました.本研究では,この問題に対し,仮想エージェントとの信頼構築をすすめる恋愛ゲーミフィケーションを提案し,評価しました.(2)は,カーナビゲーションを使い始めのうちは音声案内による指示がわからない,距離感がつかめずに間違えるというつまずきに対して,パーソナライズ化した自分のつぶやき(「あとちょいで左」など)を利用するという手法の研究です.自分のつぶやきをカーナビゲーションの音声案内に用いることの効果については不明な部分が多いのですが,本研究の実験結果では一般的な音声案内と比べての正答率が有意に高いとう結果を得ることができました.(1)と(2)はともにICTの可能性を活用する研究であり,つまずきの克服とつまずきの撤廃という両方向からのアプローチについてのディスカッションを求めました.
  7. 認知科学研究センター主催「特別セミナー」を,2017年3月15日(水)16時30分より、びわこ・くさつキャンパス(BKC)・エポック立命K306において開催しました.

    カナダのYork大学のHiroshi Ono教授を迎えて,Revising cyclops and his eyeという演題のもと,両眼視空間のサイクロピアン・アイをテーマとしてセミナーを開催しました.
    サイクロピアン・アイとは,両眼(2つの光学的原点)を使って物を見ているにもかかわらず,その物の視方向が特定の方向に見える(視覚的原点は1つ)現象です. セミナーでは,認知科学のさまざまな研究者から積極的な意見が出されました.日本語と英語が混在したセミナーになりました.
  8. 2017年1月30日(月)に,第8回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21 K306において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    島川博光 16:30~ 「生活行動の丁寧さからの高齢者の生活意欲の推定」:近年,独居高齢者が要介護状態に陥らないように,彼らに生活意欲を高く維持してもらう必要がある.日常生活の乱れは,独居高齢者の身体的かつ精神的な衰えをあらわすと考えられるため,生活意欲が低下する前兆と捉えることができる.
    本発表では,日常の生活行動を識別し,識別された各生活行動の丁寧さを判定する手法を提案する. 本手法では,高齢者のプライバシーを考慮して輝度分布センサを用いる.輝度分布センサから得られる輝度を用いて機械学習することで生活行動を識別する.識別された各生活行動について,人の体幹の動かし方の違いから生活行動の丁寧さを判定するモデルを作成する.
    手法の評価実験として,掃除,調理,食器洗いといった三つの生活行動における識別率と,掃除を実施する丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いを検証した.識別結果のF値は それぞれ0.975,0.912,0.927となり,すべての生活行動で9割を越える精度で識別した.丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いをあらわすNagelkerke R2 は0.599となった.本手法を用いて作成したモデルは,日常生活から長期的に輝度データを取得し,生活意欲の低下を認知するために問題ない精度であると考えられる.

    林 勇吾 17:00~ 「異なる視点に基づく人間/人間の協同問題解決:エージェントを用いた実験的検討」:本発表では,協同問題解決研究で検討されている諸問題を取り上げ,異なる視点に基づくインタラクション方略の有効性や妥当性基準の違いによって発生する葛藤状態について紹介した.そしてその知見をベースに,図地反転の原理を応用して作成した異なる視点に基づく協同問題解決のための実験課題を紹介した(林・三輪・森田,2007).本課題を用いた問題解決者ペアの発話プロトコル分析により,自身の視点への固着(バイアス)が他者視点の誤解やコミュニケーションの齟齬を引き起こしていることが確認された.また本発表では,複数人で行う協同問題解決において,どのような要因が視点取得やコミュニケーションの齟齬に影響を及ぼすのかについての紹介も行った.この検討に際しては,ネットワーク上で動作する複数の自律型の対話エージェントを人間のサクラとして開発し,メンバーの視点の多様性や葛藤の度合いを操作した(林・小川,2012).本実験システムを用いて得られた成果として,グループ内に異なる視点を有する少数派が存在した場合において,グループ内に同数の異なる視点を有する場合よりも異なる他者の視点を取得しようとする傾向が確認された.発表では,これらの結果に対する解釈や考察,今後の課題についての意見交換を行った.

    東山篤規 17:30~「鏡の中の空間的広がり」:鏡の中に移されるターゲットの虚像までの知覚された距離や奥行きについて話した.平面鏡を用いてたとえば20m離れたターゲットを映したとき,ターゲットは光学的には虚像として鏡の中に定位するが,われわれがその虚像を観察したとき,虚像の実際の位置ではなく,それよりも近い位置(14m)に定位しているように知覚される.このような距離の短縮化は,反射面の小さな鏡に対していっそう促進される.また凸面鏡を用いてターゲットを映したとき,凸面鏡からターゲットの虚像までの距離は,鏡の曲率の増加に伴って小さくなるが,虚像までの知覚された距離は,これに反して,鏡の曲率の増加に伴って大きくなる.これらの事実は,ターゲットの虚像を観察したとき,虚像が定位する位置にターゲットが位置しているように見えていないことを意味する.また,ターゲットを3種類の金属鏡(銀,青銅,白銅)を使って映したとき,銀メッキのされた通常の鏡よりも,青銅や白銅で作られた鏡の方が,虚像までの見かけの距離が大きく,虚像間の見かけの奥行きも大きくなることが報告された.

近い将来の予定

  1. 2017年7月に,第11回研究センター研究会が, 大阪いばらきキャンパス(OIC)において開かれます.演者は不二門尚先生(大阪大学)と木村朝子先生(立命館大学)を予定しています.
  2. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います
  3. 学内の諸学部・研究科間の連携に止まらず,他大学の認知科学の研究者との連携も深めていきます.
  4. 国外の認知科学の研究者を招待した講演会や認知科学の諸学会と共催した講演会を計画しています.