最近の出来事

  1. 2023年3月31日(木)に第44回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    山崎 大暉さん(総合心理学部永井研・学振PD) 『身体前後をまたぐ聴覚的な空間的注意シフト』
     視覚の及ばない身体後方空間への注意は主に聴覚に頼り,危険検出や会話等で重要な役割を担う.視覚的注意が頭部方向に向きやすいことや,背後の音の定位精度が低いことから,身体前後の音における空間的注意シフトの有効性は方向によって異なる可能性がある.本研究では,参加者の前後に呈示した聴覚刺激に対する内発的注意課題を実施した.前後位置での刺激の出現確率を変化させ,内発的注意を操作した.実験の結果,後ろから前への注意シフトには,逆方向のシフトよりも大きな時間的コストが生じた.背後の音への注意維持に高い負荷がかかることで,後方から前方への注意シフトが非効率になった可能性がある.

    竹島 遥貴 さん(総合心理学部高橋研) 『太斜線の傾き歪み錯視の実験的検討』
     太斜線の傾き歪み錯視とは,太さのある線分の傾きが線分終端によって歪んで知覚され,その効果が長さによって異なるというものである(錯視コンテスト2022入賞).これまでの実験では,この錯視に影響する諸要因として,線分の長さ,線分の傾き,線分終端タイプ(水平,直角,垂直)の効果を検討した.その結果,線分が短いほど線分終端タイプによる影響が大きいことが明らかとなった.加えて,太さのある線分を平行四辺形と捉え,平行四辺形である場合と長辺のみがある場合の効果を比較検討した.その結果,平行四辺形である場合の方が,終端タイプの効果が大きく,傾き角の影響を受けづらくなるということが明らかとなった.


    金村一輝さん『進化的リザバー計算機を用いた感覚器回路の獲得』
     現在までに,2台のリザバー計算機(RC)を相互作用させることで,連続多感覚情報入力に含まれる特定の刺激ペアを検出し,文節化するモデルの提案を行った.今後は,各RC(以後,感覚モジュール)の回路最適化を行う.理論神経科学において,視覚系や聴覚系の回路形成には情報量最大化原理が有力であるとの報告がある.そこで本研究では,情報量最大化を軸に必要な制約下で進化的アルゴリズムを用いることで,感覚モジュールの最適な回路構造の獲得を目指す.本研究での成果は今後,脳機能解明への貢献だけでなく,回路構造獲得の点に対する議論を可能とするだろう.

    森 海龍さん(情報理工学部 泉研) 『実道具への装着を必要としないワイヤー型力覚提示デバイスによる仮想オブジェクトへの接触感の評価』
     VR技術を用いて現実感の高い体験を提供するために,触覚提示が注目されている.既存研究では仮想空間で道具を用いる際の触覚提示のために,実空間でも同形状の道具を用いる手法が提案されている.これに対し本研究では,実空間では道具を使わずに触覚を再現することを検討した.提案手法ではワイヤー型力覚提示デバイスを同形状の道具の代わりにコントローラに接続する.棒状の仮想道具を対象に,提案手法における道具の長さが違和感や手応え感に与える影響を比較検証した.その結果,道具の長さが50cm程度より短い場合,実道具を用いなくてもコントローラにワイヤー型力覚提示デバイスを接続することで,実道具使用時と同様の感覚が提供できることが示された.

  2. 近い将来の予定

    1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います.次回の研究会は,2023年6月を予定しています.詳細は追ってお知らせいたします.