最近の出来事

  1. 2017年5月24日(木)に,第16回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    高橋英之(大阪大学 基礎工学研究科)5:00~ 「自分自身を見つめ直すためのロボット」
    発表者は,人間と相互作用するロボットの研究を行っているが,それはコミュニケーション相手のレプリカを創る行為ではなく,人間が自分自身について自問自答する場づくりにロボットのテクノロジーが生かせるのではないかという狙いから行っている.今回の発表では,被験者自身の意見をロボットに発話させることで外在化させ,その意見を被験者自身に否定させる,という経験を創り出すことで,被験者自身の価値観や考えを内的に変容させるシステムについて紹介した.このシステムの狙いは,自分自身の考えについて客観的な視点から批判的に疑い続けることは一つの思考の在り方であり,このような自分の意見を外在化するシステムを構築することで,外部からの手助け無しで自らの思考を深めることにつなげられたら良い,という想いがある.予備実験の結果,システムの使用前後で一定数の被験者が価値観を変容させること,特に日常的に自らの行動規範としていない価値観については特に変容しやすいことが示された.その上で,外的に価値を提供するのではなく,自問自答を通じて自らの内的な価値を発見する,そういう場の構築をサービスとして提供することの可能性を“地蔵”というキーワードから議論した.

    和田有史(本学 食マネジメント学部)5:30~「呼吸と連動した後鼻腔経路嗅覚刺激による味覚強度増強効果」
       嗅覚により知覚される味の強度が変化することは古くから知られてきた.特に後鼻腔経路と口腔内感覚の混同はしばしば報告されてきた.日常生活において,におい分子は呼気や吸気と共に嗅上皮細胞に運ばれ,嗅覚受容体に受容されるため,呼吸のタイミングと嗅覚経路の関係は強い可能性がある.そこで,呼吸と連動した後鼻腔,前鼻腔の両経路からの嗅覚刺激呈示が味覚強度の増強を引き起こすかを検討した.
       実験参加者は嗅覚刺激を受けながら溶液の味の強度を評価させる課題をおこなった.嗅覚刺激にはバニラエッセンスを,味覚刺激にはショ糖溶液を用いた.嗅覚刺激呈示には,参加者の呼吸と連動して刺激を呈示できるにおい呈示装置を開発し,使用した.味覚刺激呈示では,溶液の入ったシリンジを参加者に持たせ,指示に合わせてプランジャーを押し込ませて溶液を飲ませた.その後,VASを用いて味の強度の評価を求めた.
       その結果,各条件のVASによる溶液の味の評価得点について,におい呈示条件と溶液濃度条件の二元配置の分散分析を行った.その結果,両要因の主効果が有意であった.さらに,事後検定を行ったところ,後鼻腔経路条件がにおいなし条件と比較して溶液の味の強度評価得点が有意に高かった.
       また,塩味を増強するといわれる匂い刺激と食塩溶液を用いて実験を行ったところ同様の嗅覚による味覚増強効果が得られた.
       これらの結果は,呼吸と連動した嗅覚刺激呈示においては,後鼻腔経路からのにおい呈示が味覚強度の増強を引き起こすことを示す一方で,前鼻腔経路でのにおいの効果はないもしくは,微弱である可能性を示唆している.
  2. 2017年3月26日(月)に,第15回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)フューチャープラザ4F研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    多田昌裕(近畿大学 理工学部) 17:00~17:45「高齢運転者は本当に危険なのか?~運転行動面・心理面からの検討の試み~」
    世界一の超高齢大国であるわが国において,元気高齢者の社会活躍を推進することは重要な課題のひとつである.一方,ニュースなどで高齢者による交通事故が報道されることも多く,「高齢運転者=危険」という認識が社会で広まりつつある.筆者らはこれまで,アイカメラやウェアラブルセンサなどを用い,高齢運転者の公道上(一般道,高速道)の運転行動を計測・解析してきた.また近年は,高齢運転者の行動面に着目するだけでなく,なぜそのような行動をするに至ったのか,その内的状況に着目した研究を進めている.本発表では,これまでに計測した700人以上の高齢運転者のデータをもとに,高齢者は本当に危険なのか,そして超高齢社会における安全な交通社会実現のために,情報技術がどのように貢献できるか議論するための話題を提供したいと考えている.

    服部雅史(立命館大学総合心理学部・教授)17:45~17:30「認知の二重性と問題解決のパラドックス」
    私たちの認知は,タイプの違う二つの過程からなるという考えがある.これを総称して二重過程理論と呼ぶが,この考えは,心理学ではかなり古くからさまざまな研究者が異なることばで指摘してきた.2種類の過程とは,直感的で非意識的,自動的なタイプ1過程と,熟慮的で意識的,ワーキングメモリを必要とするタイプ2過程である.よくある誤解は,タイプ1は誤りやすく,タイプ2がその誤りを正すというものである.しかし,実際には必ずしもそうとは限らず,近年ではむしろ,タイプ1が規範的で(ベイズ的合理性を満たし),タイプ2が誤りの原因となるという見方すらある.注意すべきは,タイプ1と2の乖離が,問題解決におけるパラドックス的な現象と深く関わっている点である.パラドックス的な現象とは,正解するために十分な知識があるのにそれを使えないことや,問題から離れたときによいアイデアが浮かんでくるといったことである.認知の二重性,特に二つの過程の関係性や相互作用の解明は,私たちが創造的になるためにどうしたらよいかについてのヒントをもたらす.本研究発表では,私の研究室でこれまでに実施してきたいくつかの実験結果を紹介しながら,この難問についてオーディエンスと一緒に考え,今後の研究の展開について考えを深めたい.
  3. 2017年1月25日(木)に,第14回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    谷口忠大(情報理工学部)17:00~17:45「実世界感覚情報に基づく言語獲得の構成論~記号創発ロボティクスによる認知科学に向けて~」
            Computational models that can reproduce human developmental and long-term learning process have been widely explored. However, we have not obtained a computational model that enables a robot to learn physical skills and linguistic communication skills automatically through its sensorimotor interaction with its environment. Symbol emergence in robotics is a research field in which cognitive models that form symbol or representation systems in a bottom-up manner have been developed. In this talk, I talked about symbol emergence in robotics and its related topics. In particular, I focused on a word discovery task where double articulation analysis performs a central role. I introduced a nonparametric Bayesian method for unsupervised word discovery, nonparametric Bayesian double articulation analyzer and its applications. I also talked about a language acquisition and spatial concept formation method.
    Reference
    1. Tadahiro Taniguchi, Takayuki Nagai, Tomoaki Nakamura, Naoto Iwahashi, Tetsuya Ogata, and Hideki Asoh, Symbol Emergence in Robotics: A Survey, Advanced Robotics, 30(-), (11-12)706-728, 2016. DOI:10.1080/01691864.2016.1164622
    2. Akira Taniguchi, Yoshinobu Hagiwara, Tadahiro Taniguchi and Tetsunari Inamura, Online Spatial Concept and Acquisition with Simultaneous Localization and Mapping, IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 2017

    田浦秀幸(言語教育情報研究科)17:00~18:15「第2言語習得開始年齢と脳内コネクトーム」
            This study explores if L2 is processed qualitatively differently from L1, depending on the L2 onset age. To date, psycholinguists have tested Lenneberg’s critical period hypothesis (1967) inconclusively, with results supporting it (i.e., Johnson and Newport, 1989; DeKeyser, 2005; Abrahamsson and Hyltenstam, 2009) and opposing it (i.e., Hakuta, Bialystok, and Wiley, 2003: Hernandez, Li, and MacWhinney, 2005; Birdsong, 2006). Neurolinguists have examined the hypothesis with interesting results, as shown by Kim, Relkin, Lee, and Hirsch’s fMRI study (1997) which revealed that the identical region in Broca’s area was activated in early bilinguals’ L1 and L2 use, something which was not observed in late bilinguals. A more precise age for this, was identified by Weber-Fox and Nerille (1996) who said that that language plasticity in the left hemisphere is complete and more activation in the right hemisphere was inevitable when the L2 was acquired after age 11.
            This study examines the issue of L2 onset age based on data from bilinguals whose two languages (Japanese and English) are linguistically distant and whose L2 onset age varies in comparison to those students studying English from a junior high school level.
            The research followed 59 Japanese-English bilinguals and as a control group, 10 Japanese learners of English. The bilinguals acquired their L2 (English) through extensive exposure and use, differing only in L2 onset age; before birth (Group 1, N=10), at birth (Group 2, N=10), age 1-3 years (Group 3, N=10), 4 -5 years (Group 4, N=10), 6-9 years (Group 5, =10), and 16-22 years (Group 6, N=9). Control Group 7 (N=10) started studying English at junior high school in Japan. All participants (N=69) resided in Japan at the time of data-collection, and had acquired Japanese as their L1.
            A Verbal Fluency Task (VFT) was used to collect behavioural and brain activation data. This task included letter and category tasks in both Japanese and English. A 42-channel Shimadzu OMM-3000 was used to collect fNIRS data from Broca’s area and its homologous area in the right hemisphere every 130 ms.
            The preliminary analyses thus far suggest a clear age effect on the right hemispheric brain activation but no significant differences in Broca’s area or in the behavioural data. The right hemispheric involvement is statistically higher as the L2 onset age increases. The presentation will include full analyses and show brain region connectivity with plausible explanations.
  4. 2017年12月1日~3日に,本研究センターとの共催のもと,日本基礎心理学会第35回大会が立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開かれました.
  5. 2017年11月30日(木)に,第13回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC) フューチャープラザ4F研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    肥後克己 (立命館大学グローバル・イノベーション研究機構) 17:00~17:30:「ワーキングメモリとその神経機構」本発表では,言語理解や思考,記憶などの人間の高次認知機能を支える認知システムであるワーキングメモリについて,その基礎的な知見と神経基盤についての概説を述べる。ワーキングメモリはなんらかの活動に必要な情報を一時的に保持・処理する役割を持つ。Baddeley(1986)によって提案されたモデルがワーキングメモリ研究の始まりであり,主に3つの要素(中央実行系・音韻ループ・視空間スケッチパッド)から構成されるという点は現在でも変わっていない。ワーキングメモリモデルを援用した応用研究においてしばしば問題となる「短期記憶との違い」については,二重貯蔵モデル(Atkinson & Shifrin,1968)の問題点(Warrington & Shallice,1969;Shallice & Warrington,1970)を考慮するとわかりやすい。短期記憶とワーキングメモリの最大の違いは,情報処理を想定している点であり,この情報処理を担うワーキングメモリシステムの構成要素が中央実行系である。このようなワーキングメモリの機能を測る実験課題として,リーディングスパンテスト(Daneman & Carpenter,1980;日本語版は苧阪,2002)がある。リーディングスパンテストは文章の音読と文中の単語記憶を同時に課す課題であり,文章理解課題の成績と相関があることが特徴である。リーディングスパンテスト遂行中の脳活動を計測した研究(Just,Carpenter, & Keller, 1996;Bunge et al., 2000)によって,ワーキングメモリにはDLPFC,ACCの働きが重要であることが示唆されている.

    京屋郁子(総合心理学部)17:30~18:00:「抽象概念をどのように表現するか:抽象概念の構造と表現形式」 これまでの概念研究,カテゴリ研究では,「木」「魚」などの具体的な自然概念や,実験者が恣意的に作成した人工概念が用いられてきた.しかし,「愛」「勇気」などの抽象概念の特性を検討した研究は存在するもののそれほど多くなく,また,それらを含めた包括的な概念モデル,カテゴリ化モデルは提唱されていない.そこでまず本発表では,具象概念と抽象概念を比較することによって得られる抽象概念の構造的特性,表現形式的特性を報告した.構造の点では,具象概念は特徴・階層的であり,抽象概念は関係・並列的であるという先行研究がある.これらの先行研究を受けて行った発表者の2次連想を認める連想実験では,具象語に対する連想は複数次の連想がおこりやすく,連想が深くなりやすい一方で,抽象語に対する連想は刺激語付近に留まる傾向が認められた.しかし刺激語を増やすなど,さらなる検証が必要であることを報告した.また,表現形式の点では,抽象概念はより具体的な情報によって支えられているという概念メタファ仮説がLakoffらによって提唱されている.しかし,発表者の連想実験で具象語と抽象語とを比較したところ(京屋, 2014),必ずしも抽象概念と具体的な情報との繋がりは強くないことが示された.さらに,これらの結果をもとに抽象概念の特性をどのように概念モデル,カテゴリ化モデルに反映させるべきなのかを検討した.
  6. 「説明研究会」の発足および「つまづき研究分科会」の解散について
    センター内に設置されていた「つまづき研究分科会」を解散し,新たに「説明研究会」の発足させました.

近い将来の予定

  1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います.次回の研究会は,7月下旬に大阪・いばらきキャンパス(OIC)で行う予定です.
  2. 2018年には,本研究センターとの共催のもと,日本認知科学会第35回大会(8月30日〜9月1日)と日本認知心理学会第16回大会(9月1日~9月2日)が立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開かれます.本センターの分科会である「説明研究会」(主宰 山本博樹)が,シンポジウム「本当に認知研究は説明実践に貢献してきたのか?-「分かりやすい説明」をめぐるアポリアへの挑戦-」を企画する予定です.