最近の出来事

  1. 2020年7月21日(月)に,第28回研究センター研究会が,京都市下京区「キャンパスプラザ京都」において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMによって参加することも可能にしました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    松原崇充(奈良先端科学技術大学院大学)18:00~「確率共鳴に基づく生体模倣型触覚センサの触知覚感度強化」
       確率共鳴とは,弱い信号がノイズと共鳴して信号-ノイズ比が改善される現象である.自然界でも頻繁に観察されている. 我々は,生物の触覚における確率共鳴にヒントを得て,生体模倣触覚センサの感度を向上させるノイズの効果を検証した.実験では,触覚センサに取り付けた振動モータにノイズを印加し,10種類のサンドペーパーをなぞる触覚データをSVMで識別した. その結果,ノイズを加えることで大幅な精度向上を実現した.さらに,信号雑音比の改善も確認された.本講演では,これらの詳細に加えて,他のロボット触覚情報処理に関する我々の研究成果についても紹介した.

    麻生 武(奈良女子大学)18:45~ 「私的な意識の謎:痛みの概念の獲得から」
       「痛み」や「内的状態」の「私秘性」の意識は,単独者の孤独な思弁的反省からではなく,他者とのコミュニケーションの中で生まれてくるに違いない. 子どもが転んで痛くて泣きわめいても,大人はしばしば「痛みを感じる」当事者ではないにも関わらず自信をもって「痛くない,痛くない」と子どもを慰める. 大人は子どもの「リアルな気持」を差しおいて,子どもの気持ちを代弁する存在である.子どもは痛いのに「痛くない」と言われ,怖いのに「怖くない」と言われ,まずいのに「美味しいね」と言われて育つのである. おそらく,子どもは遅かれ早かれ,そのズレを感じ始めるに違いない.そこから,子どもは自分の感じる「痛み」や「心的状態」の「私秘性」を感じるようになっていくのだろう.しかし,それは生後2年目の子どもにはまだまだ手の届かない世界である. <私>とい意識の獲得も同様に謎に満ちている.「謎」が存在することを論じた.

  2. 2020年3月27日(金)に,第27回研究センター研究会が,公益財団法人大学コンソーシアム京都(京都市下京区キャンパスプラザ京都内)において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMを用いたTV研究会としました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    岡 耕平(滋慶医療科学大学院大学)17:30~「障害支援や医療福祉の分野における適応認知行動学的研究」
       適応認知行動学(Behavior Oriented Psychology)とは,実際の人間の活動場面において観察された行動の特徴について,その背景にある認知的メカニズムについて明らかにしようとする学問領域です. 本講演では筆者が障害福祉事業所や特別支援学校,あるいは病院で活動する中で観察した特徴的な行動について,適応認知行動学的な観点から行った研究結果について紹介いたしました. とくに「ゲーム依存という行動特性がどのように始まりそしてどのように終わるのか」について,発表者自身の体験も含めて,そのメカニズムを検証した知見を紹介しました.

    ズームで写しだされた画面.発表者が右下に写っています
    メイン会場のようすです.


    下野 孝一(東京海洋大学)18:10~「周辺の3次元刺激配置が空間定位と空間認知に及ぼす影響について」(東京からZOOMを通しての発表・参加)
       人間は日常3次元空間の中で生活している. そこでは異なる奥行きをもつ様々な対象が点在している. 最近われわれは,研究対象である刺激(当該刺激)の周辺に,奥行量の手がかりの1つである両眼視差をもつ刺激(奥行刺激)を提示すると,当該刺激の見えは,奥行知覚,方向知覚,数量知覚に関する従来の知見と異なることを発見した(たとえば,Aidaら, 2015a, b, 2020; Kusano & Shimono, 2018; Shimonoら, 2015, 2020). これらの発見は両眼視差で定義される奥行きが当該刺激の空間定位や空間認知に影響することを示唆している. 本講演ではこれらの発見を紹介するとともに,発見を説明する両眼視差処理負荷仮説を提案した. この仮説は,周辺刺激の奥行き(両眼視差)が視覚系に“負荷”を与えた結果,当該刺激の見えが変化すると仮定している. もしこの仮説が正しいとすれば,視差処理負荷は上記以外の見えにも影響する可能性がある.講演ではその可能性についても議論した. さらに講演では,奥行刺激の当該刺激の見えに影響するということが,視覚系の機能の中でどのような意味があるのか考えてみた.

  3. 2020年2月4日(火)に,第26回研究センター研究会が,京都リサーチパーク「たまり場」において開かれました.次の写真は講演光景です.

    演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    岡本真彦(大阪府立大学)18:00~「成人の分数表象の認知的特性」
       近年,分数の認知が心の中でどのように表象あるいは処理されているのかを明らかにしようとする研究が盛んに行われるようになってきています. というのも,分数の理解がそれ以降の算数・数学のカギとなっていることが分かり始めてきたからです. 例えば,欧米では小学校の分数の成績で中学校の関数などの成績が予測できること,つまり,小学校の分数ができるかどうかで中学校の数学の成績が決まるということを報告している研究があります. 日本でも教育現場では,古くから分数の獲得が難しい子どもがいると指摘されてきています. 分数は整数と違って,数(分母)が大きくなると量は小さくなるという性質があり,整数が獲得できてもその知識はそのままでは分数に使えないという特徴を持っています. 実際,我々の研究でも小学生は整数と小数は心の中で同じ一つの数直線の中で扱っているのに対して、分数は別の数直線として扱われている可能性を示唆する結果が得られています. 当日の講演では,分数の扱い方を調べるための実験を実際に体験してもらって,成人である大学生が分数を心の中でどのように表象しているか(扱っているか)に関する研究を紹介してみました.

    山西良典(立命館大学情報理工学部)18:45~「コミック工学とAI −漫画を工学する挑戦−」
       コミック工学は,2013年から草の根的な研究活動を広げ,工学的な技術によって漫画コンテンツの魅力を再発見し,新たな可能性を模索するために2019年に設立した新しい研究分野である.コミック工学研究会では,画像処理,言語処理,音情報処理,データベース,インタフェース,HCIといった様々な研究分野の研究者が一堂に会して,クリエイターから編集者,書店,読者まで,漫画を取り巻くあらゆる場面の課題や要求を工学的なアプローチによって解決するための議論を行っている.コミック工学は,漫画というコンテンツを中心に置き,コンテンツの特性を考慮した分析や処理,インタラクションデザインを提案していくコンテンツ指向研究として位置づけられる.本講演では,電子化がますます勢いを増す漫画の背景とともに出版社や書店に対するインタビューによって得られた知見を共有すると共に,これまでに発表されてきた代表的な研究事例を紹介した.また,漫画を読むという行動を人間のマルチメディア処理の一例として捉えた,エンタテインメントコンテンツの「楽しさ」の秘密に迫るアプローチの展望についても概説した.

  4. 近い将来の予定

    1. 基礎的要素の強い研究を中心にして、隔月に研究会を開催し、研究発表と意見交換を行います.研究会では、おもに本研究センターのメンバーと外部からお招きした方々の発表を行います.次回の研究会の予定は次のとおりです.
      日時:2020年9月下旬
      場所:びわこ・くさつキャンパス(BKC),大阪茨木キャンパス(OIC)あるいは京都駅周辺の適切な会場(後日ご案内します).