最近の出来事

  1. 2019年11月22日(金)に,第25回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス,B棟4F B412(研究会室2)において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    多田 美香里(関西福祉科学大学)17:15~「把持に関わる空間の認識について」
       把持の正確さに関する研究と,空間の大きさの見積もりに関する研究について報告する.対象を把持するとき,握り手(ハンドル)のある対象の把持は正確で速いと言われている.対象のどの部分をどのように把持すべきかがはっきりしているためであると考えられる.また把持の経験があるよく知っている対象の方が把持しやすく,さらにそれがよく知っている向きで置かれているときの方がより把持しやすいと考えられる.もし把持到達運動を繰り返し行った過去の経験からそのような効果が生じるのであれば,把持の経験が多い対象とそうでない対象とでは,ハンドルの有無の効果や,対象と観察者の空間配置による影響が異なるのではないかと考え,対象の形状(ハンドルの有無)と熟知性およびその配置による把持の正確さへの影響について検討した.一方で,把持には自らの手の動作に関わる空間の大きさも考慮する必要がある.そこで手の動作可能空間の変化に応じて空間の見積もりがどのように影響されるのかについても検討した.

    木村 貴彦(関西福祉科学大学)18:00~ 「三次元空間における視覚認知:観察者の前方空間と後方空間での比較」
       三次元空間内における注意特性については注意移動や注意配分などの観点から検討が行われてきた(Andersen,1990; Atchley et al., 1996など).しかしながら,多くの研究では両眼視差を用いた立体視環境で実験が行われ,人間の行動空間である実際空間で行われた研究は比較的少ない.我々は実際空間内での視覚的注意研究をこれまでに行ってきたが(木村他,2007; Kimura et al.,2009),これらの研究では観察者の前方空間に刺激が配置されていた.他方,日常生活では自動車の運転時のように,後方に広がる空間から鏡を用いて情報を獲得する場合もあり,三次元空間は観察者の後方にも広がっていると言える.また,鏡の中の対象は反転しているにも関わらず,我々は必要な情報を適切に獲得して行動に役立てている.
       そこで,本講演では観察者の前方空間と鏡を介した後方空間における物体の位置関係や注意配分について注目し,我々がこれまでに行ってきた研究を紹介する.まず,液晶シャッターを用いた瞬間提示事態において物体の位置を再生する課題を行い,前方空間と鏡を介した後方空間での物体認知について比較した.次に,奥行き方向での注意の移動特性について,空間手がかり法(Posner et al.,1980を用いて検討した.これらの実験で得られた知見から,観察者の前方空間と鏡を用いた後方空間における視覚認知特性について議論する.

  2. 2019年9月30日(月)に,第24回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC) エポック立命21 K305室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    江草浩幸 17:00~「逆さめがね実験における「正立の知覚」とは何か?-心理学的測定の難点-」
       逆さめがねとは,網膜像の左右,上下あるいはその両方を裸眼の場合とは逆の姿に変換する器具の総称である(今回は上下逆さの場合を取り上げる).現在,逆さめがね実験の目的は様々であるが,19世紀に始まったときは,「外界が正立して知覚されるために網膜像が逆転していることは必要か?」という問いに答えようとするものであった.すなわち,網膜像を正立させた場合,外界は逆さに見えたままなのか,それとも正立の知覚が生じることがあるのかを,逆さめがねの長期間連続装着によって確かめようとした.
       この実験で結論の根拠となるデータは,観察者による主観的体験の言語報告と実験者による客観的な行動(脳や筋肉の反応も含む)の観察・測定から得られる.ただ,この二種のデータは必ずしも一致しない.たとえば,逆さめがねの装着直後は,物がうまく掴めない,などの行動的不適応が生じるが,4,5日もすれば頻繁に行う行動は裸眼時とあまり変わらなくなる.このような適応性の回復が正立の知覚の行動的指標となる.一方,外界が安定的に正立して見えるようになった,とする言語報告はない.また,逆さめがねを外すと,行動上は不適応が再発するが,主観的には直ちに外界が正立して見える.では,正立の知覚を論じるのにどちらのデータに依拠すればよいのだろうか.逆さめがね実験に限らない心理学的測定の悩みの種である.

    都賀美有紀(立命館大学総合心理学部)17:30~「学習直後と遅延後の項目と順序の記憶における語長効果:項目と順序の過程分離手続きを用いた検討」
       買い物リストを覚える時など,順序だてて物事(項目)を覚えることがあるだろう.項目を覚えていないと実質的に順序を思い出せないことから,項目と順序の記憶については,順序の記憶が項目の記憶に依存しているとの指摘や(Conrad, 1965),それらが独立した記憶処理を持っているとする議論(Healy,1974)がなされてきた.近年,単語の語長(都賀・星野,2015)や単語の頻度(Mulligan, 2001)の違いが項目と順序の記憶に異なるパターンで影響を及ぼすことから,項目と順序の記憶は独立した処理過程を持つことが指摘されている.
       単語リストを学習した時,その単語の語長が与える影響は項目と順序の記憶で異なる.都賀・星野(2015)は,語長は項目の記憶には学習直後も遅延後も影響を示すが,順序の記憶には学習直後にしか影響を示さないことを,伝統的な保持テストである項目の自由再生課題と順序の再構成課題を用いて示した.
       しかし,これらの課題は項目と順序の記憶の両方の影響を受け,純粋にそれらの記憶を測定していない(Nairne & Kelley,2004).Nairne& Kelley(2004)はそれらを比較的純粋に推定することを目的として項目と順序の記憶についての過程分離手続きのパラダイムを提案している.
       本発表ではこのパラダイムを用いて,学習直後と遅延後の項目と順序の記憶における語長効果を検討した結果を報告した.語長効果は音韻情報に依存した現象とされる.項目と順序の記憶に音韻情報がどのようにかかわるのかを議論した.

  3. 2019年7月25日(木)に,第23回研究センター研究会が,OIC,B棟4F,研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    前田太郎(大阪大学・情報科学研究科)17:00~「VRとサイバネティクス:感覚重畳刺激と行動誘導インタフェースの構築」
       本講演ではサイバネティクスの観点から人間の感覚-運動特性を利用したインタフェースを提案している.GVS(前庭電気刺激)をはじめとする感覚重畳インタフェースを利用した行動支援技術の設計理念と応用例を紹介する.

    和田隆広(立命館大学・情報理工学部)17:45~「操縦型機械の操作性・快適性向上に関する研究」
       操縦型機械(自動車,建機,義足,遠隔操縦ロボットなど)に関する,操作性・快適性の要因の解明と,その向上技術に興味がある.その事始め(が10年も続いているが)として行っている,動揺病(乗物酔い)や反射眼球運動の計算モデルや,その人間機械システムへの応用に関する研究例などを紹介する.

近い将来の予定

  1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,隔月に研究会を開催し,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーと外部からお招きした方々の発表を行います.次回の研究会は,2月の初旬に開催することを予定しています.