最近の出来事

  1. 2017年4月17日(月)に,センターの新運営委員として,仲谷善雄,木村朝子,谷口忠大(いずれも情報理工学部教授)の新規加入が認められました.
  2. 2017年4月1日(土)に,認知科学研究センターの拠点を衣笠キャンパスから大阪いばらきキャンパスに移しました.
  3. 2017年3月31日(金)に,第9回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパスB棟4Fの研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    山本博樹(総合心理学部)16:00~17:00 「授業デザイナ-に課された支援的説明の難題」:本発表では,授業デザイナ-に課された支援的説明の難題について,理論と実践の両面から検討した.そもそも,教師が授業デザイナ-と称して授業に関与し始めたのは,Norman (1988) により「自称」デザイナ-の身勝手さが糾弾され,学習者中心に軸が移行し,支援重視へとデザイン原則が転換した後,である.よって,「本当の」授業デザイナ-とは,学習支援に献身的な努力をする者を指すはずである.特に,リアルな学習支援の場面では支援的説明の提供という形をとると考えられる.この実践事例として,読解に苦戦する二部中学校へ通う生徒への支援として,教師が自作教材を作成し,メタ説明をデザインした授業実践を紹介した (山本, 2009).しかし,併せて,支援的説明を始発させるはずの支援要請の把握時に,児童生徒が支援要請を表出しなかったり,表出された要請を支援者が捏造したりするという難題が生じることもデ-タや事例を基に指摘した.この難題の解消を目指すとき,学習者の「つまずき」(failure) を主体性の発露とみなし,この発露を支援要請として受給するというロジックに一定の可能性があることを述べた.発表では,このロジックに対する解釈や考察,今後の課題について相互に意見交換を行った.

    春日彩花(大阪大学)17:00~17:30 「学習者の「つまずき」の一側面:素朴な概念に着目して」: 学習のつまずきに関わる要素の1つとして,日常生活の中で構築される素朴な概念(プリコンセプション)を取り上げた.プリコンセプションは,学校で教えられる概念(科学的概念)とは必ずしも一致しないものの,首尾一貫性があり,日常生活では問題が生じず繰り返し使われるため,強固で変化しにくいという特徴がある.本発表では,プリコンセプションから科学的概念への変容過程を調べるために行った実験を,特に概念変容に至らなかったケースに注目して報告した.実験では,大学(院)生67名に中学校で学習する力学課題を提示した.その結果,多くの対象者が,科学的概念と不一致のプリコンセプションを所持していた.さらに,概念変容モデル(Hashweh, 1986)に基づいて教材を作成し,全問正答者を除く52名に提示した後,事後テストを行った.その結果,プリコンセプションを科学的概念へと変容した「概念変容群」,プリコンセプションを維持し続けた「プリコンセプション維持群」,プリコンセプションを一部変化させた「プリコンセプション変容群」の3パターンが存在していたことが分かった.また,①プリコンセプションと科学的概念の違いが正確に認識されないこと,②科学的概念に対して生じた疑問が解消されないこと,③プリコンセプションより科学的概念のほうが有用であると認識されないことによって,科学的概念への変容が達成されない可能性が示された.

    北村尊義(情報理工学部)17:30~18:00 「続けるためのICTの利用」:本発表では,つまずきに関する話題提供として,(1)つまずき克服のための支援方策と,(2)そもそもつまずかないようにする方策の研究を1件ずつ紹介しました.(1)は,環境配慮行動の習慣化につまずくという課題に対して,ゲーミフィケーションを用いる研究です.ゲーミフィケーションは困難な課題にゲーム要素を取り入れることで実践を容易にする手法ですが,環境配慮行動の場合は実践したかどうかの計測が難しい行動が多く存在し,導入が難しいという問題がありました.本研究では,この問題に対し,仮想エージェントとの信頼構築をすすめる恋愛ゲーミフィケーションを提案し,評価しました.(2)は,カーナビゲーションを使い始めのうちは音声案内による指示がわからない,距離感がつかめずに間違えるというつまずきに対して,パーソナライズ化した自分のつぶやき(「あとちょいで左」など)を利用するという手法の研究です.自分のつぶやきをカーナビゲーションの音声案内に用いることの効果については不明な部分が多いのですが,本研究の実験結果では一般的な音声案内と比べての正答率が有意に高いとう結果を得ることができました.(1)と(2)はともにICTの可能性を活用する研究であり,つまずきの克服とつまずきの撤廃という両方向からのアプローチについてのディスカッションを求めました.
  4. 認知科学研究センター主催「特別セミナー」を,2017年3月15日(水)16時30分よりBKCキャンパス・エポック立命K306において開催しました.

    カナダのYork大学のHiroshi Ono教授を迎えて,Revising cyclops and his eyeという演題のもと,両眼視空間のサイクロピアン・アイをテーマとしてセミナーを開催しました.
    サイクロピアン・アイとは,両眼(2つの光学的原点)を使って物を見ているにもかかわらず,その物の視方向が特定の方向に見える(視覚的原点は1つ)現象です. セミナーでは,認知科学のさまざまな研究者から積極的な意見が出されました.日本語と英語が混在したセミナーになりました.
  5. 2017年1月30日(月)に,第8回研究センター研究会が,BKCエポック立命21 K306において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    島川博光 16:30~ 「生活行動の丁寧さからの高齢者の生活意欲の推定」:近年,独居高齢者が要介護状態に陥らないように,彼らに生活意欲を高く維持してもらう必要がある.日常生活の乱れは,独居高齢者の身体的かつ精神的な衰えをあらわすと考えられるため,生活意欲が低下する前兆と捉えることができる.
    本発表では,日常の生活行動を識別し,識別された各生活行動の丁寧さを判定する手法を提案する. 本手法では,高齢者のプライバシーを考慮して輝度分布センサを用いる.輝度分布センサから得られる輝度を用いて機械学習することで生活行動を識別する.識別された各生活行動について,人の体幹の動かし方の違いから生活行動の丁寧さを判定するモデルを作成する.
    手法の評価実験として,掃除,調理,食器洗いといった三つの生活行動における識別率と,掃除を実施する丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いを検証した.識別結果のF値は それぞれ0.975,0.912,0.927となり,すべての生活行動で9割を越える精度で識別した.丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いをあらわすNagelkerke R2 は0.599となった.本手法を用いて作成したモデルは,日常生活から長期的に輝度データを取得し,生活意欲の低下を認知するために問題ない精度であると考えられる.

    林 勇吾 17:00~ 「異なる視点に基づく人間/人間の協同問題解決:エージェントを用いた実験的検討」:本発表では,協同問題解決研究で検討されている諸問題を取り上げ,異なる視点に基づくインタラクション方略の有効性や妥当性基準の違いによって発生する葛藤状態について紹介した.そしてその知見をベースに,図地反転の原理を応用して作成した異なる視点に基づく協同問題解決のための実験課題を紹介した(林・三輪・森田,2007).本課題を用いた問題解決者ペアの発話プロトコル分析により,自身の視点への固着(バイアス)が他者視点の誤解やコミュニケーションの齟齬を引き起こしていることが確認された.また本発表では,複数人で行う協同問題解決において,どのような要因が視点取得やコミュニケーションの齟齬に影響を及ぼすのかについての紹介も行った.この検討に際しては,ネットワーク上で動作する複数の自律型の対話エージェントを人間のサクラとして開発し,メンバーの視点の多様性や葛藤の度合いを操作した(林・小川,2012).本実験システムを用いて得られた成果として,グループ内に異なる視点を有する少数派が存在した場合において,グループ内に同数の異なる視点を有する場合よりも異なる他者の視点を取得しようとする傾向が確認された.発表では,これらの結果に対する解釈や考察,今後の課題についての意見交換を行った.

    東山篤規 17:30~「鏡の中の空間的広がり」:鏡の中に移されるターゲットの虚像までの知覚された距離や奥行きについて話した.平面鏡を用いてたとえば20m離れたターゲットを映したとき,ターゲットは光学的には虚像として鏡の中に定位するが,われわれがその虚像を観察したとき,虚像の実際の位置ではなく,それよりも近い位置(14m)に定位しているように知覚される.このような距離の短縮化は,反射面の小さな鏡に対していっそう促進される.また凸面鏡を用いてターゲットを映したとき,凸面鏡からターゲットの虚像までの距離は,鏡の曲率の増加に伴って小さくなるが,虚像までの知覚された距離は,これに反して,鏡の曲率の増加に伴って大きくなる.これらの事実は,ターゲットの虚像を観察したとき,虚像が定位する位置にターゲットが位置しているように見えていないことを意味する.また,ターゲットを3種類の金属鏡(銀,青銅,白銅)を使って映したとき,銀メッキのされた通常の鏡よりも,青銅や白銅で作られた鏡の方が,虚像までの見かけの距離が大きく,虚像間の見かけの奥行きも大きくなることが報告された.
  6. 2017年1月13日(金)に総合心理学主催の第26回イグノーベル賞知覚賞受賞の記念講演会(演者:東山篤規)が開かれ,認知科学研究センターが協力しました.
  7. 20116年11月22日(火)に情報理工学部主催の第26回イグノーベル章知覚賞受賞の記念講演会(演者:東山篤規,場所:エポック立命21,エポックホール)が開かれ,認知科学研究センターが協力しました.
  8. 2016年11月21日(月)に,第7回研究センター研究会が,衣笠キャンパス洋洋館 6階第1研究会室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
    下江輝(情報理工学部野間研究室)17:00~「触覚センサによる素材識別に関する研究紹介
    ひとの触覚特性を模した機械学習モデルを用いセンサデータを解析することで,ひとの触覚を機械上で表現しようと考えている.ひとの感覚受容器の代わりとしてのMEMS触覚センサを用いて得られるデータからどの程度の識別が可能であるか調べるため,機械学習にて解析したところ,28種の素材を80%以上の精度で認識することが可能と分かった.今後,ひとが認識過程として持っているであろう,教師なしの学習などでモデルを拡張していき,人工触覚の実現を目指す.

    佐藤克成(奈良女子大学)17:30~18:30 人の知覚特性を利用した温冷感提示手法
    触感を記録・再生する技術の中で,温冷感の提示技術は,環境の状態認識や触対象の識別を実現するために必要な要素である.しかし既存の温冷感提示技術には,時間応答性の悪さや放熱器による装置の大型化など,課題が多い.これらの課題を解決するために,人の知覚特性を活用した手法を提案している.本講演ではその1つとして,温刺激と冷刺激を並置することで実現した,時間応答性の高い小型な温冷感提示装置を紹介する.

近い将来の予定

  1. 基礎的要素の強い研究を中心にして,2か月ごとに研究会を開催して,研究発表と意見交換を行います.研究会では,おもに本研究センターのメンバーが発表を行います
  2. 学内の諸学部・研究科間の連携に止まらず,他大学の認知科学の研究者との連携も深めていきます.
  3. 国外の認知科学の研究者を招待した講演会や認知科学の諸学会と共催した講演会を計画しています.