認知科学研究センター

本研究センターの意義と目的

認知活動の範囲
本研究センターでは,ヒトの認知活動(感覚,知覚,注意,記憶,思考,推理,言語など)の基礎的な過程の解明をめざします。右図は,わたしたちが考える認知活動を,駆動変数の位置(認知活動を制御する変数が内側にあるのか外側にあるのか)と心的変数の関与度(認知活動において心的世界が貢献する程度)を用いて表現したものです.これが本研究センターの研究範囲です.本研究センターでは,環境に対する人間の適応を軸にして,各認知活動を記述し,その機能を解明するとともに,その背後にある機構を特定し,さらに認知過程の相互関係を明らかにすることを目的にしています.また場面を限定した応用的な問題にも研究の範囲を広げ,人間と環境,人間と人間,人間と機械の創発的協働を実現する俯瞰的な認知科学的体系の構築をめざします.

処理の深さに沿った認知過程

認知過程は,さまざまなレベルから構成されるといわれています.われわれは,それを初期認知,後期認知,言語に分けて研究を進めています.
  1. 初期認知:外界についての情報は,物理的エネルギーのパタンという形で感覚器官に到達し,そののち心的な表現形式に変換されます.その心的表現形式のうち初期の認知過程において生成されるとされる,色と明るさ,錯視,空間知覚,感覚間相互作用などを研究対象にし,その過程の記述,機能,機構を明らかにします.
  2. 後期認知:われわれは,初期認知の過程で形成された心的表現に,さらに何段階もの処理を加えて,高次の複雑な心的表現形式をつくりだします.ここでは,推理,思考,理解など,おもに言語や概念の内的操作によって活性化する認知過程を研究の対象にし,その過程の記述,機能,機構を明らかにします.
  3. 言語:後期認知の過程では言語(概念)が重要なはたらきをします.言語は,推理,思考,理解の機能が持続的かつ精密に展開されるためには,不可欠の道具であるといってもよいでしょう.ここでは,言語を認知活動の一環として捉えた分析あるいは言語(コーパス)の認知科学的分析を行います.

文理融合

認知科学は,文理を超えてさまざまな研究分野が交差する領域です.本研究センターでは,とくにロボッティクスに代表される情報理工学との文理融合を図ります.ロボットは,人間のように知覚し,話し,思考するようにつくられますが,ロボットとヒトの認知を比較することによって,すなわち分析的アプローチと構成論的アプローチの両方法をとることによって認知活動の本質に迫ります.

発達時間に沿った認知過程

本研究センターでは,認知活動の研究対象を大人だけでなく子どもや高齢者にも広げています。認知の経年的変化をとらえることによって,何が契機になって,子どもにおいては認知の多様な発達が促され,高齢者においては認知活動の低下と可塑性が生じるのかを明らかにします.

実用化と社会との連携

本研究センターは,認知科学に関心をもち,その研究に従事している者が結集し,全国の認知科学研究の拠点のひとつになることを目指します.同時に,本研究センターは,応用的・実用的な研究を推進することによって,社会との連携を積極的に深めていきます.