研究活動 過去の研究会の記録 刊行物 その他の活動 受賞

これまでの研究会活動について

研究センター内において開かれた研究会を紹介します.研究会は2015年10月を初回として2か月ごとに開かれています.
  1. 2018年3月26日(月)に,第15回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)フューチャープラザ4F研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    多田昌裕(近畿大学 理工学部) 17:00~17:45「高齢運転者は本当に危険なのか?~運転行動面・心理面からの検討の試み~」
    世界一の超高齢大国であるわが国において,元気高齢者の社会活躍を推進することは重要な課題のひとつである.一方,ニュースなどで高齢者による交通事故が報道されることも多く,「高齢運転者=危険」という認識が社会で広まりつつある.筆者らはこれまで,アイカメラやウェアラブルセンサなどを用い,高齢運転者の公道上(一般道,高速道)の運転行動を計測・解析してきた.また近年は,高齢運転者の行動面に着目するだけでなく,なぜそのような行動をするに至ったのか,その内的状況に着目した研究を進めている.本発表では,これまでに計測した700人以上の高齢運転者のデータをもとに,高齢者は本当に危険なのか,そして超高齢社会における安全な交通社会実現のために,情報技術がどのように貢献できるか議論するための話題を提供したいと考えている.

    服部雅史(立命館大学総合心理学部・教授)17:45~17:30「認知の二重性と問題解決のパラドックス」
    私たちの認知は,タイプの違う二つの過程からなるという考えがある.これを総称して二重過程理論と呼ぶが,この考えは,心理学ではかなり古くからさまざまな研究者が異なることばで指摘してきた.2種類の過程とは,直感的で非意識的,自動的なタイプ1過程と,熟慮的で意識的,ワーキングメモリを必要とするタイプ2過程である.よくある誤解は,タイプ1は誤りやすく,タイプ2がその誤りを正すというものである.しかし,実際には必ずしもそうとは限らず,近年ではむしろ,タイプ1が規範的で(ベイズ的合理性を満たし),タイプ2が誤りの原因となるという見方すらある.注意すべきは,タイプ1と2の乖離が,問題解決におけるパラドックス的な現象と深く関わっている点である.パラドックス的な現象とは,正解するために十分な知識があるのにそれを使えないことや,問題から離れたときによいアイデアが浮かんでくるといったことである.認知の二重性,特に二つの過程の関係性や相互作用の解明は,私たちが創造的になるためにどうしたらよいかについてのヒントをもたらす.本研究発表では,私の研究室でこれまでに実施してきたいくつかの実験結果を紹介しながら,この難問についてオーディエンスと一緒に考え,今後の研究の展開について考えを深めたい.
  2. 「説明研究会」の発足および「つまづき研究分科会」の解散について
    センター内に設置されていた「つまづき研究分科会」を解散し,新たに「説明研究会」の発足させました.
  3. 2018年1月25日(木)に,第14回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    谷口忠大(情報理工学部)17:00~17:45「実世界感覚情報に基づく言語獲得の構成論~記号創発ロボティクスによる認知科学に向けて~」
            Computational models that can reproduce human developmental and long-term learning process have been widely explored. However, we have not obtained a computational model that enables a robot to learn physical skills and linguistic communication skills automatically through its sensorimotor interaction with its environment. Symbol emergence in robotics is a research field in which cognitive models that form symbol or representation systems in a bottom-up manner have been developed. In this talk, I talked about symbol emergence in robotics and its related topics. In particular, I focused on a word discovery task where double articulation analysis performs a central role. I introduced a nonparametric Bayesian method for unsupervised word discovery, nonparametric Bayesian double articulation analyzer and its applications. I also talked about a language acquisition and spatial concept formation method.
    Reference
    1. Tadahiro Taniguchi, Takayuki Nagai, Tomoaki Nakamura, Naoto Iwahashi, Tetsuya Ogata, and Hideki Asoh, Symbol Emergence in Robotics: A Survey, Advanced Robotics, 30(-), (11-12)706-728, 2016. DOI:10.1080/01691864.2016.1164622
    2. Akira Taniguchi, Yoshinobu Hagiwara, Tadahiro Taniguchi and Tetsunari Inamura, Online Spatial Concept and Acquisition with Simultaneous Localization and Mapping, IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 2017

    田浦秀幸(言語教育情報研究科)17:00~18:15「第2言語習得開始年齢と脳内コネクトーム」
            This study explores if L2 is processed qualitatively differently from L1, depending on the L2 onset age. To date, psycholinguists have tested Lenneberg’s critical period hypothesis (1967) inconclusively, with results supporting it (i.e., Johnson and Newport, 1989; DeKeyser, 2005; Abrahamsson and Hyltenstam, 2009) and opposing it (i.e., Hakuta, Bialystok, and Wiley, 2003: Hernandez, Li, and MacWhinney, 2005; Birdsong, 2006). Neurolinguists have examined the hypothesis with interesting results, as shown by Kim, Relkin, Lee, and Hirsch’s fMRI study (1997) which revealed that the identical region in Broca’s area was activated in early bilinguals’ L1 and L2 use, something which was not observed in late bilinguals. A more precise age for this, was identified by Weber-Fox and Nerille (1996) who said that that language plasticity in the left hemisphere is complete and more activation in the right hemisphere was inevitable when the L2 was acquired after age 11.
            This study examines the issue of L2 onset age based on data from bilinguals whose two languages (Japanese and English) are linguistically distant and whose L2 onset age varies in comparison to those students studying English from a junior high school level.
            The research followed 59 Japanese-English bilinguals and as a control group, 10 Japanese learners of English. The bilinguals acquired their L2 (English) through extensive exposure and use, differing only in L2 onset age; before birth (Group 1, N=10), at birth (Group 2, N=10), age 1-3 years (Group 3, N=10), 4 -5 years (Group 4, N=10), 6-9 years (Group 5, =10), and 16-22 years (Group 6, N=9). Control Group 7 (N=10) started studying English at junior high school in Japan. All participants (N=69) resided in Japan at the time of data-collection, and had acquired Japanese as their L1.
            A Verbal Fluency Task (VFT) was used to collect behavioural and brain activation data. This task included letter and category tasks in both Japanese and English. A 42-channel Shimadzu OMM-3000 was used to collect fNIRS data from Broca’s area and its homologous area in the right hemisphere every 130 ms.
            The preliminary analyses thus far suggest a clear age effect on the right hemispheric brain activation but no significant differences in Broca’s area or in the behavioural data. The right hemispheric involvement is statistically higher as the L2 onset age increases. The presentation will include full analyses and show brain region connectivity with plausible explanations.
  4. 2017年12月1日~3日に,本研究センターとの共催のもと,日本基礎心理学会第35回大会が立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開かれました.
  5. 2017年11月30日(木)に,第13回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC) フューチャープラザ4F研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    肥後克己 (立命館大学グローバル・イノベーション研究機構) 17:00~17:30:「ワーキングメモリとその神経機構」本発表では,言語理解や思考,記憶などの人間の高次認知機能を支える認知システムであるワーキングメモリについて,その基礎的な知見と神経基盤についての概説を述べる。ワーキングメモリはなんらかの活動に必要な情報を一時的に保持・処理する役割を持つ。Baddeley(1986)によって提案されたモデルがワーキングメモリ研究の始まりであり,主に3つの要素(中央実行系・音韻ループ・視空間スケッチパッド)から構成されるという点は現在でも変わっていない。ワーキングメモリモデルを援用した応用研究においてしばしば問題となる「短期記憶との違い」については,二重貯蔵モデル(Atkinson & Shifrin,1968)の問題点(Warrington & Shallice,1969;Shallice & Warrington,1970)を考慮するとわかりやすい。短期記憶とワーキングメモリの最大の違いは,情報処理を想定している点であり,この情報処理を担うワーキングメモリシステムの構成要素が中央実行系である。このようなワーキングメモリの機能を測る実験課題として,リーディングスパンテスト(Daneman & Carpenter,1980;日本語版は苧阪,2002)がある。リーディングスパンテストは文章の音読と文中の単語記憶を同時に課す課題であり,文章理解課題の成績と相関があることが特徴である。リーディングスパンテスト遂行中の脳活動を計測した研究(Just,Carpenter, & Keller, 1996;Bunge et al., 2000)によって,ワーキングメモリにはDLPFC,ACCの働きが重要であることが示唆されている.

    京屋郁子(総合心理学部)17:30~18:00:「抽象概念をどのように表現するか:抽象概念の構造と表現形式」 これまでの概念研究,カテゴリ研究では,「木」「魚」などの具体的な自然概念や,実験者が恣意的に作成した人工概念が用いられてきた.しかし,「愛」「勇気」などの抽象概念の特性を検討した研究は存在するもののそれほど多くなく,また,それらを含めた包括的な概念モデル,カテゴリ化モデルは提唱されていない.そこでまず本発表では,具象概念と抽象概念を比較することによって得られる抽象概念の構造的特性,表現形式的特性を報告した.構造の点では,具象概念は特徴・階層的であり,抽象概念は関係・並列的であるという先行研究がある.これらの先行研究を受けて行った発表者の2次連想を認める連想実験では,具象語に対する連想は複数次の連想がおこりやすく,連想が深くなりやすい一方で,抽象語に対する連想は刺激語付近に留まる傾向が認められた.しかし刺激語を増やすなど,さらなる検証が必要であることを報告した.また,表現形式の点では,抽象概念はより具体的な情報によって支えられているという概念メタファ仮説がLakoffらによって提唱されている.しかし,発表者の連想実験で具象語と抽象語とを比較したところ(京屋, 2014),必ずしも抽象概念と具体的な情報との繋がりは強くないことが示された.さらに,これらの結果をもとに抽象概念の特性をどのように概念モデル,カテゴリ化モデルに反映させるべきなのかを検討した.
  6. 2017年9月29日(木)に,第12回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)のエポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    永井聖剛(総合心理学部)16:30~17:00:「大きなモノみて力強く! −知覚刺激が発揮筋力に与える影響−」:刺激−反応適合性研究に関しては空間次元について検討したものが多いが(e.g., Simon & Berbaum, 1990),少数ながら刺激の物理的強度と反応強度(「強い」あるいは「弱い」キー押し)との間の刺激—反応適合性,すなわち,大きい,明るいなど物理強度が大きい刺激に対し強い反応が適合していることが報告されている(Romaiguère et al., 1993).我々はさらに,刺激の単純な物理的性質だけでなく,より抽象化された概念的レベルでの刺激情報が反応出力システムと共有されていることが示唆する結果を示した.また,抽象化レベルでの情報共有は運動出力間でも生じること,すなわち,大きな声を出しているときには,小さな声を出しているときよりも,描画される円の大きさが大きくなることも見出した.したがって,刺激の物理量に関する情報,運動の強さ/大きさに関する情報は,知覚と運動との区別なく,抽象レベルで(例,大-小,強-弱)共通に表現され,相互に影響を与えるものと考えられる.
    この仮説に則って近年では,刺激—反応適合性パラダイムによらない実験事態で,刺激サイズや刺激が示唆するパワーと発揮される握力との関係を調べた。その結果,サイズが大きい刺激やレスラー画像に対しサイズが小さい刺激や乳幼児画像よりも大きな握力が発揮されることも示した.

    佐藤隆夫(総合心理学部)17:00~17:30:「モノを見るメカニズム」
  7. 9月19日に大阪いばらきキャンパス(OIC)フューチャープラザ3Fコロキウムにおいて,立命館大学「力触覚応用コンソーシアム」の初回の会合が開かれました.企業関係者30名あまりの方々にお集まりいただき,成功裏に会を終えることができました.野間春生の司会進行のもとにつぎの講演が行われました.

    東山 篤規「触覚の心理学的アプローチ」
    杉山 進「Siピエゾ抵抗効果を用いた力・触覚センサの実用化」
    寒川 雅之「マイクロカンチレバとエラストマを用いた触覚センサの開発と質感計測への応用」
    下江 輝「ディープラーニングを用いた素材識別の試み」

    この後,懇親会(OICフューチャープラザ1Fイベントホール3)がもたれ,懇親会場では,企業側からの参加者との間で有益な交流ができました.
  8. 学振外国人特別研究員の Valeria Casoldi 氏が8月16日にイタリアから来日され,大阪いばらきキャンパス(OIC) B棟5Fの認知科学研究センターの部屋を研究拠点に活動しています.滞在期間は10月まで.お見かけになることがあれば,お声がけください.
  9. 2017年7月27日(木)に,第11回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)大阪いばらきフューチャープラザ4F研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    木村 朝子,橋口哲志(立命館大学情報理工学部)16:30~17:15:「複合現実型視覚刺激が触力覚知覚に与える影響」現実空間と仮想空間を実時間で重ね合わせる複合現実 (Mixed Reality; MR) 空間において,視覚や聴覚による触力覚への影響といった多感覚刺激を活用する研究が注目を集めている.MR空間では,実物体にCGを重畳描画することで実物体の外観を視覚的に変更することができる.一方,人の触力覚は,視覚から影響を受けることが一般に知られていることから,現実空間に重畳描画される人工的な視覚情報(以降,MR型視覚刺激と呼ぶ)が触力覚に影響を及ぼす可能性は高い.本発表では,我々がこれまでに発見したMR型視覚刺激によるいくつかの視触力覚錯覚現象を紹介した.具体的には,実物体と重心位置の異なるCG画像を重畳描画した場合に,重心位置が複合現実型視覚刺激に引きずられ,知覚される重心位置が変化する錯覚現象 (Shape-COG Illusion) や,実物体(剛体)と仮想物体(液体)の運動状態が異なる場合に,力覚を通して実物体の運動知覚に影響を及ぼす錯覚現象 (R-V Dynamics Illusion) などが挙げられる.

    不二門 尚(大阪大学大学院医学系研究科)17:15~18:15:「医学的立場から見た立体視:小児の斜視と立体視障害,3D映像と眼の疲労」 HMDを用いた仮想現実(VR)の映像は広く普及しつつあるが,VRでは両眼に視差のある3D映像が用いられ,眼の輻湊系と調節系が解離するため、眼が疲れやすいという問題点がある.視差の大きな3D映画を見た後,内斜視が誘発された小児の症例が報告されたことなどから,近年では3D映画で用いる視差は基本的に1°以内に制限されている.立体視は6歳位まで発達期にあり,この間に眼の平行性が保たれないと立体視機能が失われるため,小児の3D映像視聴は注意する必要がある.一方立体視の弱い,斜視治療後の症例においては,通常の立体視検査で立体視(-)であっても飛び出しの大きな3Dアトラクションは立体的に見える可能性がある.逆にこのような症例では,視差の小さい3D映画は立体的に見えない.今後教育の現場で3D映像が使用される場合には,このような点に配慮する必要がある.
  10. 2017年6月25日(日)10時50分~に,「CHI勉強会2017」が,東京,北海道,関西の3会場をコンピュータでつないで開催されました.関西会場は,認知科学研究センターの支援のもと大阪いばらきキャンパス(OIC)のB棟カンファレンス室が充てられました(幹事団の一人が松村耕平).
  11. 2017年6月17日(土)に,日本認知科学会主催「知覚と行動モデリング(P&P)研究会」が,認知科学研究センターとの共催のもと,大阪いばらきキャンパス(OIC) B棟1階で開催されました.
  12. 2017年5月26日(金)に,第10回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命K305において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    大石衡聴(総合心理学部)16:30~17:00:「脳の律動的活動から文処理過程を探る試み」オンラインで言語情報(特に文のレベル)を処理している際の脳活動について検討するにあたっては,一般的には外的事象に関連して惹起される一過性の脳電位変動である事象関連電位 (Event-related potentials: ERPs) が指標として用いられている.それに対して発表者は,自発脳波データに時間周波数解析を実施することによって観察される脳の律動的活動 (oscillatory activity) を指標とすることで,従来の事象関連電位を指標とした研究手法では検証が困難であった文処理過程に付いても検討が可能となることを示すための研究を実施している.具体的には,「予測との不一致」という事象が発生していない場合の文処理過程の内容について検討するにあたって脳の律動的活動の変化パターンを観察することの有用性を実証している(事象関連電位は「予測との不一致」に伴い惹起される).本発表では,処理のある過程で文の心的表象が二つ以上構築可能な文と一つのみの文とを呈示した際の脳波を比較し,前者のみでα帯域(8−13ヘルツ)で有意に大きな事象関連脱同期 (Event-related desynchronization) が観察されたというデータを公表した.それをもとに,事象関連電位のみならず,脳の律動的活動もあわせて用いることによって文処理システムの実態により深く迫ることができると主張した.

    小松原哲太(言語教育センター)17:00~17:30「凝縮された意味理解をもたらすカテゴリー化の文脈調整」言語を用いたコミュニケーション方略の中で,語の意味を柔軟に転用するレトリックの表現は,効率的かつ印象的な意味伝達を可能にしている.提喩は,一般的な類によって特殊例を表す (e.g. 甘いもの>菓子) ,あるいは特定の例によってカテゴリー全体を表す (e.g. ごはん>食物) レトリックである.提喩のようなレトリックが日常言語においても重要な役割を担っていることは,一般には知られていない.本発表では,認知言語学の立場 (e.g. Langacker 2008) から,日本語の提喩を考察対象として,提喩が,日常的な名づけの体系から脱し,新しい視点からターゲットとなる概念の特定の側面を際立たせ,浮き彫りにする効果をもつことを示した.本発表で論じた言語現象は,日常言語の意味伝達が,厳密な推論と計算のプロセスにもとづくものであるというよりは,慣習的な言語知識とコミュニケーションの文脈との関係を柔軟に調整するプロセスを基盤としていることを示唆している.参加者との質疑応答では,具体事例の観察にもとづいて,カテゴリー化と意味理解に関する問題が提起され,建設的な意見交換を行うことができた.

    岡本雅史(文学部)17:30〜18:00「漫才対話のマルチモーダル分析に基づくコミュニケーション支援:コミュニケーション能力の向上から教育コンテンツのデザインまで」:本発表では,漫才対話をコミュニケーション実践と情報伝達様式という2つの観点から検討した.従来の漫才研究が「お笑い」という話芸の一典型としてどのようにユーモアを生成させているかという観点の研究が主であったのに対し,本発表では,岡本(2007)で提案した〈オープンコミュニケーション〉という,直接の対話者以外の第三者に開かれた対話様式を漫才対話が取ることに着目し,そうした対話の場の外に向けられる外部指向性が視線と身体方向というコミュニケーションのモダリティ間のギャップによって実現されていることを明らかにした.一方,言語学的にはツッコミ発話が先行発話行為,先行発話内容,対話者の非言語行動,という複数のレベルにまたがる不適切性の指摘として実現されることを示し,そうした複数レベルにまたがる言及の指向性が,ヒトの事態把握における高次認知能力としての理解プロセスの解明に繋がる可能性を示唆した.このように漫才対話をコミュニケーション的に捉える本研究は,次世代コミュニケーション能力の育成や対話型の教示コンテンツのデザインの指針の策定に寄与するものであると考えられる.
  13. 2017年3月31日(金)に,第9回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)B棟4Fの研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.

    山本博樹(総合心理学部)16:00~17:00 「授業デザイナ-に課された支援的説明の難題」:本発表では,授業デザイナ-に課された支援的説明の難題について,理論と実践の両面から検討した.そもそも,教師が授業デザイナ-と称して授業に関与し始めたのは,Norman (1988) により「自称」デザイナ-の身勝手さが糾弾され,学習者中心に軸が移行し,支援重視へとデザイン原則が転換した後,である.よって,「本当の」授業デザイナ-とは,学習支援に献身的な努力をする者を指すはずである.特に,リアルな学習支援の場面では支援的説明の提供という形をとると考えられる.この実践事例として,読解に苦戦する二部中学校へ通う生徒への支援として,教師が自作教材を作成し,メタ説明をデザインした授業実践を紹介した (山本, 2009).しかし,併せて,支援的説明を始発させるはずの支援要請の把握時に,児童生徒が支援要請を表出しなかったり,表出された要請を支援者が捏造したりするという難題が生じることもデ-タや事例を基に指摘した.この難題の解消を目指すとき,学習者の「つまずき」(failure) を主体性の発露とみなし,この発露を支援要請として受給するというロジックに一定の可能性があることを述べた.発表では,このロジックに対する解釈や考察,今後の課題について相互に意見交換を行った.

    春日彩花(大阪大学)17:00~17:30 「学習者の「つまずき」の一側面:素朴な概念に着目して」: 学習のつまずきに関わる要素の1つとして,日常生活の中で構築される素朴な概念(プリコンセプション)を取り上げた.プリコンセプションは,学校で教えられる概念(科学的概念)とは必ずしも一致しないものの,首尾一貫性があり,日常生活では問題が生じず繰り返し使われるため,強固で変化しにくいという特徴がある.本発表では,プリコンセプションから科学的概念への変容過程を調べるために行った実験を,特に概念変容に至らなかったケースに注目して報告した.実験では,大学(院)生67名に中学校で学習する力学課題を提示した.その結果,多くの対象者が,科学的概念と不一致のプリコンセプションを所持していた.さらに,概念変容モデル(Hashweh, 1986)に基づいて教材を作成し,全問正答者を除く52名に提示した後,事後テストを行った.その結果,プリコンセプションを科学的概念へと変容した「概念変容群」,プリコンセプションを維持し続けた「プリコンセプション維持群」,プリコンセプションを一部変化させた「プリコンセプション変容群」の3パターンが存在していたことが分かった.また,①プリコンセプションと科学的概念の違いが正確に認識されないこと,②科学的概念に対して生じた疑問が解消されないこと,③プリコンセプションより科学的概念のほうが有用であると認識されないことによって,科学的概念への変容が達成されない可能性が示された.

    北村尊義(情報理工学部)17:30~18:00 「続けるためのICTの利用」:本発表では,つまずきに関する話題提供として,(1)つまずき克服のための支援方策と,(2)そもそもつまずかないようにする方策の研究を1件ずつ紹介しました.(1)は,環境配慮行動の習慣化につまずくという課題に対して,ゲーミフィケーションを用いる研究です.ゲーミフィケーションは困難な課題にゲーム要素を取り入れることで実践を容易にする手法ですが,環境配慮行動の場合は実践したかどうかの計測が難しい行動が多く存在し,導入が難しいという問題がありました.本研究では,この問題に対し,仮想エージェントとの信頼構築をすすめる恋愛ゲーミフィケーションを提案し,評価しました.(2)は,カーナビゲーションを使い始めのうちは音声案内による指示がわからない,距離感がつかめずに間違えるというつまずきに対して,パーソナライズ化した自分のつぶやき(「あとちょいで左」など)を利用するという手法の研究です.自分のつぶやきをカーナビゲーションの音声案内に用いることの効果については不明な部分が多いのですが,本研究の実験結果では一般的な音声案内と比べての正答率が有意に高いとう結果を得ることができました.(1)と(2)はともにICTの可能性を活用する研究であり,つまずきの克服とつまずきの撤廃という両方向からのアプローチについてのディスカッションを求めました.
  14. 2017年3月15日(水)16時30分~びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命K306.
    Hiroshi Ono(York大学) 特別セミナー「Revising cyclops and his eye」
    両眼視空間のサイクロピアン・アイに関する研究を紹介した.サイクロピアン・アイとは,両眼(2つの光学的原点)を使って物を見ているにもかかわらず,その物の視方向が特定の方向に見える(視覚的原点は1つ)現象である.
    セミナーでは,認知科学のさまざまな研究者から積極的な意見が出され.日本語と英語が混在したセミナーになった.
  15. 2017年1月30日(月)16時30分~びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21 K306
    島川博光 「生活行動の丁寧さからの高齢者の生活意欲の推定」
    近年,独居高齢者が要介護状態に陥らないように,彼らに生活意欲を高く維持してもらう必要がある.日常生活の乱れは,独居高齢者の身体的かつ精神的な衰えをあらわすと考えられるため,生活意欲が低下する前兆と捉えることができる.
    本発表では,日常の生活行動を識別し,識別された各生活行動の丁寧さを判定する手法を提案する. 本手法では,高齢者のプライバシーを考慮して輝度分布センサを用いる.輝度分布センサから得られる輝度を用いて機械学習することで生活行動を識別する.識別された各生活行動について,人の体幹の動かし方の違いから生活行動の丁寧さを判定するモデルを作成する.
    手法の評価実験として,掃除,調理,食器洗いといった三つの生活行動における識別率と,掃除を実施する丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いを検証した.識別結果のF値は それぞれ0.975,0.912,0.927となり,すべての生活行動で9割を越える精度で識別した.丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いをあらわすNagelkerke R2 は0.599となった.本手法を用いて作成したモデルは,日常生活から長期的に輝度データを取得し,生活意欲の低下を認知するために問題ない精度であると考えられる.

    林 勇吾 「異なる視点に基づく人間/人間の協同問題解決:エージェントを用いた実験的検討」
    本発表では,協同問題解決研究で検討されている諸問題を取り上げ,異なる視点に基づくインタラクション方略の有効性や妥当性基準の違いによって発生する葛藤状態について紹介した.そしてその知見をベースに,図地反転の原理を応用して作成した異なる視点に基づく協同問題解決のための実験課題を紹介した(林・三輪・森田,2007).本課題を用いた問題解決者ペアの発話プロトコル分析により,自身の視点への固着(バイアス)が他者視点の誤解やコミュニケーションの齟齬を引き起こしていることが確認された.また本発表では,複数人で行う協同問題解決において,どのような要因が視点取得やコミュニケーションの齟齬に影響を及ぼすのかについての紹介も行った.この検討に際しては,ネットワーク上で動作する複数の自律型の対話エージェントを人間のサクラとして開発し,メンバーの視点の多様性や葛藤の度合いを操作した(林・小川,2012).本実験システムを用いて得られた成果として,グループ内に異なる視点を有する少数派が存在した場合において,グループ内に同数の異なる視点を有する場合よりも異なる他者の視点を取得しようとする傾向が確認された.発表では,これらの結果に対する解釈や考察,今後の課題についての意見交換を行った.

    東山篤規「鏡の中の空間的広がり」
    鏡の中に移されるターゲットの虚像までの知覚された距離や奥行きについて話した.平面鏡を用いてたとえば20m離れたターゲットを映したとき,ターゲットは光学的には虚像として鏡の中に定位するが,われわれがその虚像を観察したとき,虚像の実際の位置ではなく,それよりも近い位置(14m)に定位しているように知覚される.このような距離の短縮化は,反射面の小さな鏡に対していっそう促進される.また凸面鏡を用いてターゲットを映したとき,凸面鏡からターゲットの虚像までの距離は,鏡の曲率の増加に伴って小さくなるが,虚像までの知覚された距離は,これに反して,鏡の曲率の増加に伴って大きくなる.これらの事実は,ターゲットの虚像を観察したとき,虚像が定位する位置にターゲットが位置しているように見えていないことを意味する.また,ターゲットを3種類の金属鏡(銀,青銅,白銅)を使って映したとき,銀メッキのされた通常の鏡よりも,青銅や白銅で作られた鏡の方が,虚像までの見かけの距離が大きく,虚像間の見かけの奥行きも大きくなることが報告された.
  16. 2016年11月21日(月)17:00~衣笠キャンパス洋洋館 6F第1研究会室
    下江輝(情報理工学部野間研究室)「触覚センサによる素材識別に関する研究紹介」
    ひとの触覚特性を模した機械学習モデルを用いセンサデータを解析することで,ひとの触覚を機械上で表現しようと考えている.ひとの感覚受容器の代わりとしてのMEMS触覚センサを用いて得られるデータからどの程度の識別が可能であるか調べるため,機械学習にて解析したところ,28種の素材を80%以上の精度で認識することが可能と分かった.今後、ひとが認識過程として持っているであろう,教師なしの学習などでモデルを拡張していき,人工触覚の実現を目指す.

    佐藤克成(奈良女子大学)「人の知覚特性を利用した温冷感提示手法」
    触感を記録・再生する技術の中で,温冷感の提示技術は,環境の状態認識や触対象の識別を実現するために必要な要素である.しかし既存の温冷感提示技術には,時間応答性の悪さや放熱器による装置の大型化など,課題が多い.これらの課題を解決するために,人の知覚特性を活用した手法を提案している.本講演ではその1つとして,温刺激と冷刺激を並置することで実現した,時間応答性の高い小型な温冷感提示装置を紹介する.
  17. 2016年9月20日4時30分〜 びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21,K306
    土田宣明 「運動抑制に影響する要因の年齢差」
    本発表では,運動コントロールへの加齢効果とその特性を,運動抑制の失敗に注目して検討した.対象となったのは,若年成人35名と高齢者35名であった。2種類のスイッチを用い,複数の条件のもとで,スイッチを押し分ける(あるいは握り分ける)課題を実施し,分析を行った.主たる実験の結果は,以下の2点であった.1)高齢者では反応タイプや音刺激が運動抑制の失敗に強く影響していること.2)若年成人は全体的に運動抑制の失敗は少ないものの,視覚刺激からの誘導要因が強く影響していることが分かった.以上のことから,運動抑制に影響する要因には年齢差が存在すること,高齢者においては,運動に付随する神経興奮が運動抑制に強く影響することが示唆された.その他,今後の課題について報告し,意見交換を行った。

    東山篤規 「視覚面の傾斜の異方性」
    きめの勾配は,平面が傾いて見えるためには必要な刺激条件とされている.本発表では,さまざまなきめのパターンを用いて,その傾きに異方性があるのかどうかということを話題にした.実験では,床,天井,左向き側壁,右向きの側壁を表す各パターンの勾配を変えて,その見かけの傾きを被験者に評定させた.実験の結果によれば,床パターンが前額面にもっとも近くに見え,他の3面はそれよりも大きく傾いたように見えた.また,きめの勾配のうち,もっとも大きく面を傾ける勾配は,遠近勾配であり,運動勾配は,遠近勾配ほど強力な効果を持ちえなかった.

    平井慎一 「柔らかい触覚センサ」
    本発表では,柔らかい素材を用いた触覚センサを紹介した.一つ目は,感圧導電布を用いたセンサである.感圧導電布は,伸縮により抵抗が変化する感圧導電糸を織って作る.このセンサは,触覚,滑り覚,近接覚を実現することができる.布センサを用いて,8種類のテクスチャーを識別した結果を示した.二つ目は,柔らかい指先に埋め込むことが可能な力覚センサである.このセンサは,磁石と磁場を検出するホール素子から構成される.指先の変形によって生じる磁石の動きをホール素子で検出することにより,指先に作用する力を計測することができる.このセンサを内蔵した指先で物体を把持し,操作すると,把持物体と他の物体との接触や衝突を検知することができた.
    fig1 fig2
  18. 2016年7月1日4時30分〜 衣笠キャンパス 洋洋館 6F 第2研究会室
    岡本雅史 「情報デザインの認知言語学的アプローチ―情報デザインから関係デザインへ」
    田浦秀幸 「心理言語学研究におけるブレーンイメージングデータ」
    大石衡聴 「言語理解過程における一般的認知機能の役割について」
  19. 2016年5月27日4時30分〜 びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21,K305
    矢藤優子 「行動計測機器を用いた幼児の認知・社会的行動発達の指標化」
    松村耕平 「自動車内インタラクションのデザイン」
    丸山勝久 「ソフトウェア進化支援におけるプログラム理解活動の可視化」
  20. 2016年3月17日4時30~ 衣笠キャンパス学而館第2研究会室
    林勇吾  「擬人化エージェントを用いたインタラクションに関する認知科学的研究」
    島川博光 「ふるまいの測定からのモティベーションの同定」
    山本博樹 「高校生への説明と理解支援モデル」
  21. 2016年1月15日4時30~ びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21,K308
    篠田博之 「視覚研究とその応用」
    服部雅史 「論理的推論の確率モデルと推論の対称性」
    高田秀志 「帰納型プログラミング学習環境構築の試み」
  22. 2015年10月9日4時00~ 衣笠キャンパス学而館第4研究会室
    北岡明佳 「並置混色と明るさ・色の錯視の関係」
    野間春生 「ヒトの触覚機能の再現を目指す触覚センサの開発」
    田中省作 「速読教材における多様な「チャンク」の同定」