これまでの研究会活動について
研究センター内において開かれた研究会を紹介します.研究会は2015年10月を初回として2か月ごとに開かれています.-
2024年7月20日(土)13:00-16:10,立命館大学大阪いばらきキャンパス H棟1Fテラスゲートにて,第50回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
長田 尚子 先生(立命館大学 共通教育推進機構) 『実践コミュニティにおける当事者研究としてのパターン・ランゲージ開発と活用』
変化の激しい時代,実践コミュニティの存在への期待は高まる傾向にあるが,コミュニティの参加者による議論に注目があたることは少ない.佐伯胖は,人類学的アプローチによる正統的周辺参加論について,「参加」する動機が語られていないこと,二人称的に関わり合う存在として人間を捉える必要があることを指摘している.本研究では,実践コミュニティへの参加者が,彼らの活動をパターン・ランゲージとしてまとめる過程の談話を用いて,当事者の視点でコミュニティの様相を捉える過程とその意義を検討する.パターン・ランゲージの開発事例としては,産学連携PBLを支援する学生アシスタントと教員のコミュニティ,教育改善を目指す大学横断型の教員コミュニティの2つを予定している.ある領域でのコツや経験則をパターンとして掘り起こし名前をつけて議論するという過程を当事者研究として捉え,認知科学研究者の皆様からのご意見を仰ぎたい.
城 綾実 先生(立命館大学 文学部) 『ジェスチャーが質問の組み立てに与える影響』
挨拶されたので挨拶を返す、質問に対して応答する。こういった行為タイプのペア関係のことを会話分析では隣接ペアと呼ぶ。隣接ペアは第一成分と第二成分で構成される。第一成分で遂行される行為タイプ(挨拶や質問など)が、隣接ペアの第二成分で産出される行為タイプ(挨拶の直後は挨拶、質問の直後は応答)を限定する。会話分析と呼ばれる領域では、こうした隣接ペアの制約関係について文法や言語形式の点からの多くの研究がなされてきた。発表者は、情報や説明が一定程度終わるまでの会話の流れにおいて、質問者のジェスチャーと応答者のジェスチャーにどういった関連性があるのかをこれまで検討してきた。本発表では、質問を組み立てる際に、ジェスチャーがどういった影響を相互行為に与えうるのかについて、言語やジェスチャー等のさまざまな資源が組み合わさる様相、発話者たちの知識の程度などの関係性について、現時点での研究内容を報告する。
布山 美慕 先生(立命館大学 文学部) 『文学・芸術鑑賞における不定性を伴う認知の可能性』
不定性や曖昧性は、芸術や文学をはじめとする人文学において、創造性や社会変革の一つの基盤として重要視されてきた。一方で、近年の日本社会や認知科学・心理学をはじめとする研究分野では、不定性や曖昧性はむしろ忌避や最小化すべき対象としてネガティブに捉えられることが多い。本発表では、人文学の指摘を振り返った上で、文学・芸術鑑賞における不定性を伴う認知の可能性を探究する実証研究を紹介する。具体的には、文学作品読解時の解釈の不定性の時系列推定、視覚芸術における混合感情(ネガティブ・ポジティブ感情の重ね合わせやネガティブ感情と美的感情の重ね合わせ)の研究を紹介する。くわえて、こういった不定性を伴う認知を、発表者らは量子確率論を用いてモデリングしている。この量子確率論を用いたモデリングについても簡単に紹介する。
村山 綾 先生(立命館大学 総合心理学部) 『内在的公正推論に関するこれまでの研究と今後の研究の構想』
他者に起こった不運の原因を、直接的で物理的な因果関係がないにもかかわらず、その人物の過去の道徳的失敗に求めることを内在的公正推論という。「日頃の行いが悪いからそんな目にあったのだ」は、典型的な内在的公正推論である。本発表では、主に欧米を中心に行われてきた内在的公正推論に関する先行研究、ならびに発表者がこれまでに行ってきた日本人を対象とした内在的公正推論に関する一連の研究について紹介する。具体的には、不運のみではなく幸運を対象とした検討や、欧米で内在的公正推論を強めるとされる信仰の効果が日本人を対象とした場合でも見られるのか検討した研究などを取り上げる。その後、比較文化心理学の観点から、日本人の内在的公正推論を強める要因に関する今後の研究展開について触れる。また、社会的場面で生じるコミュニケーションの齟齬という観点から、今後あらたに展開したいと考えている研究テーマの構想についても紹介したい。
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2024年5月9日(木)に第49回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
杉原厚吉 先生 (明治大学先端数理科学インスティテュート) 『絵から飛び出した不可能立体の世界』
「不可能立体」という言葉は、だまし絵を見たとき頭の中に浮かぶ架空の3次元構造という意味で使われ始めました。オランダの版画家エッシャーが作品の素材に使ったことでも有名です。その後、だまし絵と同じに見える立体を作るトリックもいくつか見つかりましたが、特別な視点から見たときだけ成立するトリックなので、絵の延長に過ぎませんでした。しかし、最近になって、視点をある範囲で動かしても「あり得ない」という感覚が起こり続ける立体錯視を見つけました。それを、数学的背景とともに紹介します。実在する立体を使ってあり得ない立体を表現することができますから、不可能立体が真に絵から立体へ飛び出したと言っていいでしょう。
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2023年12月15日(金)に第48回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
高橋康介 先生 (立命館大学) 『パレイドリアとアニマシーから視覚的認識に迫る』
人間の視覚的認識は、カメラのように単に入力を写し取るというものではなく、入力を手がかりとしてその入力を生み出した世界の構造を推論するという性質を持っています。パレイドリアとアニマシーという2つの知覚現象は、この性質が過剰に働いたものであると捉えることができます。本発表では、これらの知覚現象に関連するデモンストレーションを体験しながら、視覚的認識の仕組みについて議論を深めていきます。
大澤博隆 先生(慶應大学) 『エージェントへの社会性付与:人工他者による拡張社会像』
ヒューマンエージェントインタラクション(HAI)は、人間から見たときに意図があるように見える人工他者を社会に含めることで、人間にとってどのような効用が生まれ得るかを探る学問である。サイボーグ技術が我々個人の能力を拡張するように、HAIは、人工的他者を加えて我々が住む人間社会自体を拡張する技術である。HAIは対人ロボットからテレプレゼンス、ビデオゲーム、倫理やフィクションまで含めた広い領域を対象とする学問となりつつある。本発表では本研究者がこれまで行ってきた擬人化研究、教育研究、ゲーム研究、SFとエージェントに関するHAI研究を紹介し、未来社会のビジョンを描く。
https://www.ae.keio.ac.jp/introduction/lab-professor/osawa/ -
2023年10月27日(金)に第47回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
小鷹 研理 先生 (名古屋市立大学 芸術工学研究科 准教授)『「半自己」が媒介する身体像の再編成について』
発表者の主宰する小鷹研究室asは、「からだの錯覚」の研究を通して、身体感覚における自己と非自己の中間的な位相(半自己、ボディジェクト、ナムネス)に注目してきた。具体的には、身体が異なる様相を獲得するにあたって、自己感の発揮を阻むような要因が、かえって錯覚の誘導を促進しているようにみえる多数の事例を確認している。本発表では、以上の観点に立ち、小鷹研究室の近年の試みとして、ドリフトを抑制する選択的な身体変形錯覚(ダブルタッチ錯覚)、錯覚像が一意に定まらない背面セルフタッチ錯覚(BACK HAND LOCK HELPER)、数10cmの距離オーダーを有する皮膚変形錯覚(スライムハンド錯覚、ブッダの耳錯覚)、骨に対して触覚を覚える透触視錯覚(XRAYHEAD)、VR環境における幾何学的な身体イメージの獲得(キュービック体操)等について解説を行う。
https://lab.kenrikodaka.com/ -
2023年7月31日(木)に第46回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
西原 陽子 先生(立命館大学 情報理工学部 対話デザイン研究室) 『情報科学技術を用いたネットいじめの防止に関する研究』
本発表では,情報科学技術を用いたネットいじめの防止に関する研究を紹介します. 扱っているネットいじめは,いじめの対象者に対し悪口を投稿するものです.悪口の検出は,自然言語処理技術と深層学習技術を用いて行います.明らかな悪口だけでなく,造語や隠語の悪口も検出できることを紹介します.また,ネットいじめを真に防止するためには,投稿しようとする悪口を自ら取り下げてもらうことも重要と考えました.そこで,悪口投稿の取り下げに効果的なメッセージを中高生対象にWebアンケートを用いて調査しました.その結果を報告します.
山田 悟史 先生(立命館大学 理工学部建築学科 建築情報研究室) 『建築情報学における認知科学』
建築・都市デザイン分野には,空間に対する認知を扱う研究があります.山田が取り組んできた研究,これから取り組みたいと思っている研究をご紹介します.内容・題材はこちら(http://satoshi-bon.jp/publish/)のように様々です.現実空間を扱った近年の研究には,街路に対する訪問意欲を人の注視行動を含むマルチモーダル深層学習で推定する研究,屋外空間で自然環境に抱く印象を推定する研究,などがあります.VR空間を扱った研究には,現実空間との寸法知覚を比較する研究,居心地や体感時間を扱う研究,などがあります.認知科学に関連が深い?研究には,生成系AIと人の対話が認知に与える影響をデザインの視点から扱った研究があります.当日はこれらの研究にご助言賜れれば幸いです.
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2023年6月1日(木)に第45回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
鈴木 千晴 先生(立命館大学 総合心理学部) 『あいまい刺激への知覚現象としてのロールシャッハ・テスト』
左右対称のシミを何かに見立てることを求める心理検査であるロールシャッハ・テストは,物理的には不変の視覚刺激に対して多様な知覚体験が起こり,なおかつそれらが内発的に変化する現象である.私は,ロールシャッハ・テストと共通点を持つと考えられる認知課題を用い,課題中の事象関連電位(Event-related potential, ERP)をテスト上の指標によって比較することで,反応の個人差が生ずるメカニズムを推測してきた.また最近は,両義図形のようなあいまいな刺激への知覚課題を用いた実験を行なっているため,その結果も併せて紹介する.
渡邉 創太 先生(大阪教育大学) 『動物の錯視』
古くから現在に到るまで多種多様な錯視知覚が報告・研究されているが,その大きな理由は,こういった錯視知覚はヒトが持つ視覚システムの特性を明らかにする上で有用だと考えられているからである.同様のことは,ヒト以外の動物についても言えるため,比較研究者は,近年ヒト以外の動物を対象とした錯視研究を数多く実施・報告している.しかし,それらの数が増えるほどに,比較錯視研究の困難さが浮き彫りになってきたように思われる.私は鳥類を対象とした比較錯視研究に15年ほど携わってきたが,そもそも「その種(例えばハト)も○○錯視(例えばミュラー・リヤ―錯視)を知覚するの?」という疑問に対する答え,いわば比較錯視研究の最初の一歩でさえ,私達比較錯視研究者達は満足に踏み出すことができていないように感じる.ただヒトと種が違うというだけで,何がそんなに難しいのか.科学的手続きを踏んだ実験研究であれば,そんな問いに対する答えは容易に得られるのではないか.そう考えられる先生から良いご示唆を賜るため,私達が実施した,ミュラー・リヤ―錯視,エビングハウス錯視,デルブーフ錯視の研究を中心に,比較錯視研究の”成果”をご紹介する.
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2023年3月31日(木)に第44回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
山崎 大暉さん(総合心理学部永井研・学振PD) 『身体前後をまたぐ聴覚的な空間的注意シフト』
視覚の及ばない身体後方空間への注意は主に聴覚に頼り,危険検出や会話等で重要な役割を担う.視覚的注意が頭部方向に向きやすいことや,背後の音の定位精度が低いことから,身体前後の音における空間的注意シフトの有効性は方向によって異なる可能性がある.本研究では,参加者の前後に呈示した聴覚刺激に対する内発的注意課題を実施した.前後位置での刺激の出現確率を変化させ,内発的注意を操作した.実験の結果,後ろから前への注意シフトには,逆方向のシフトよりも大きな時間的コストが生じた.背後の音への注意維持に高い負荷がかかることで,後方から前方への注意シフトが非効率になった可能性がある.
竹島 遥貴 さん(総合心理学部高橋研) 『太斜線の傾き歪み錯視の実験的検討』
太斜線の傾き歪み錯視とは,太さのある線分の傾きが線分終端によって歪んで知覚され,その効果が長さによって異なるというものである(錯視コンテスト2022入賞).これまでの実験では,この錯視に影響する諸要因として,線分の長さ,線分の傾き,線分終端タイプ(水平,直角,垂直)の効果を検討した.その結果,線分が短いほど線分終端タイプによる影響が大きいことが明らかとなった.加えて,太さのある線分を平行四辺形と捉え,平行四辺形である場合と長辺のみがある場合の効果を比較検討した.その結果,平行四辺形である場合の方が,終端タイプの効果が大きく,傾き角の影響を受けづらくなるということが明らかとなった.
金村一輝さん『進化的リザバー計算機を用いた感覚器回路の獲得』
現在までに,2台のリザバー計算機(RC)を相互作用させることで,連続多感覚情報入力に含まれる特定の刺激ペアを検出し,文節化するモデルの提案を行った.今後は,各RC(以後,感覚モジュール)の回路最適化を行う.理論神経科学において,視覚系や聴覚系の回路形成には情報量最大化原理が有力であるとの報告がある.そこで本研究では,情報量最大化を軸に必要な制約下で進化的アルゴリズムを用いることで,感覚モジュールの最適な回路構造の獲得を目指す.本研究での成果は今後,脳機能解明への貢献だけでなく,回路構造獲得の点に対する議論を可能とするだろう.
森 海龍さん(情報理工学部 泉研) 『実道具への装着を必要としないワイヤー型力覚提示デバイスによる仮想オブジェクトへの接触感の評価』
VR技術を用いて現実感の高い体験を提供するために,触覚提示が注目されている.既存研究では仮想空間で道具を用いる際の触覚提示のために,実空間でも同形状の道具を用いる手法が提案されている.これに対し本研究では,実空間では道具を使わずに触覚を再現することを検討した.提案手法ではワイヤー型力覚提示デバイスを同形状の道具の代わりにコントローラに接続する.棒状の仮想道具を対象に,提案手法における道具の長さが違和感や手応え感に与える影響を比較検証した.その結果,道具の長さが50cm程度より短い場合,実道具を用いなくてもコントローラにワイヤー型力覚提示デバイスを接続することで,実道具使用時と同様の感覚が提供できることが示された.
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2023年2月9日(木)に第43回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
渡辺 英治 先生(基礎生物学研究所,北岡先生の御紹介) 『AIによる錯視現象の探求』
AI技術の発展に伴い,AIをヒトの視覚モデルとして活用する研究が進んでいる.私たちは大脳の情報処理理論のひとつである予測符号化(あるいは自由エネルギー原理)を実装したAIを用いて錯視現象の探求を試みている.錯視は,物理パラメータと知覚の乖離が顕著な例であり,これをテスト刺激にして予測符号化の検証を進めると同時に,錯視の生成メカニズムの追求を行っている.本会では, AI による錯視の再現,さらには AI と遺伝的アルゴリズムを組み合わせることで錯視が創作できることをご紹介し,新しいスタイルの視覚研究の話題提供としたい.また最近取り組み始めた大規模言語モデルの心理学的研究についても合わせてご紹介をする.
北川 智利先生(立命館大学, 木村先生の御紹介) 『音の身体性が心理情報処理に及ぼす影響』
私たちの身体に何かが触れる時,あるいは,私たちが身体を動かす時,ほとんど必ずと言っていいほど音が生じる.それは服が擦れるような微かな音かもしれないし,「何かを叩く」ような身体運動の結果として生じる音かもしれない.そのような身体と音との随伴関係を私たちは日々経験し学習している.身体に関連して生じるそのような音は,その音源,身体の状態,音源と身体の関係について,極めて高い精度の時間情報と,360度の空間情報を提供している.このような音の身体性が,身体知覚,触覚,感情に与える影響について紹介する.
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2022年12月6日(火)に第42回研究センター研究会を開催しました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
日本左利き協会 発起人 大路直哉先生(おおじなおや) 『右利き優位社会を生きる左利きの未来に向けて』
お招きいただいた研究会の関連分野については全くの門外漢で,かつ何事も好事家の領域を出ないものの『見えざる左手 ものいわぬ社会制度への提言』(三五館,1998年)ならびに『左ききでいこう!』(フェリシモ出版<共編著>,2000年)という二冊の左利き関連書籍を上梓しております. 今回,「生活者視点からの話題提供を」とのご依頼を野間春生教授から賜り参加させていただきます.ご提供する話題としましては「左利き視点から見た生活空間や道具,デバイスの現状」「日本左利き協会が行なった利き手アンケートのご紹介」「素人目線だからこそ抱く研究者が作成した利き手テスト判定基準への疑問」等を予定しています. こうした研究会で発表させていただくことは初めてですし浅学非才の若輩者でございます.ご提供できる話題は,ご参加されている研究者様の知的レベルからは程遠い「稚拙で子どもっぽい内容」ばかり.大変申し訳なく思いますが,「子どもの素朴な疑問ほど答えるのが難しい」とも言います。人生,半世紀を過ぎておりますが,私の話題提供がひとつでも「子どもの素朴な疑問」と感じていただけるならば,むしろ幸いです.
東山 先生 『触運動空間における自己の中心』
目を閉じて事物に触れたとき,それが体の右にあるのか左にあるのかを容易に判断することができます.このことは,触運動の手がかりを用いて方向を判断するときには「原点(自分の中心)」があることを示唆しています.同じことは視覚についても言えます.提示された点刺激が,正中面にあるのか,その右あるいは左にあるのかは触運動以上に容易にできます.この報告では,目を閉じた条件における触運動空間の原点に関する研究を紹介します.触運動空間の原点はどこにあるのか(体の中あるいは外),用いた手(右手,左手,両手)によって変化するのか,実験に用いられた触刺激の配置(近空間と遠空間)による影響はないのか,視空間の原点に比べて触運動空間の原点はどのくらい変動するのか,というのが今回の話題の中心となります.この研究は,下野孝一氏やW. J. Tam氏とかつて一緒に取り組んだ成果です(Shimono, K., Higashiyama, A., & Tam, W. J. (2001). Location of the egocenter in kinesthetic space. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 27(4), 848–861. https://doi.org/10.1037/0096-1523.27.4.848).
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2022年10月12日(水)に第41回研究センター研究会が,対面(OIC,B411)と遠隔(ZOOM)をもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
立命館大学情報理工学部 北野 勝則 先生 『神経集団ダイナミクスと認知機能』
従来の神経科学的研究では,計測技術の制約もあり,認識,意思決定,運動生成などの機能は,単一もしくは少数の神経細胞=ニューロンの”静的な”活動レベルにより表現されると考えられてきた.最近では,数十〜数百個のニューロン活動が記録可能となり,認知機能時における,これら神経細胞集団の活動動態を捉えることが可能になり,このような研究が増えつつある.それらの研究により,認知機能は神経集団の動的状態,それも細胞集団が理論上取りうるよりも制限された状態(低次元空間)で特徴付けられることがわかってきている.本発表では,このような脳の動的特性の認知機能における役割,検討されている背景メカニズムについて紹介する.
立命館大学総合心理学部 北岡明佳 先生 『色空間と色の錯視』
色の錯視は、文字通りいろいろある。それらの錯視画像の画素を色空間にプロットすれば、何か特徴的なことが見られるのであろうか。あるいは、色空間内の画素の分布だけから、その画像がどのような錯視を内包しているかを推定できるのであろうか。そういった問題を検討するために、本話題提供においては、色空間として、CIE Yxy、L*a*b*、MacLeod-Boynton、DKL、HSL、HSV、u'v'、L*u*v*を検討する。さらに、「輝度から計算する彩度」を定義し、新しい色空間「HCV」を提案する。この研究は途上であるが、暫定的結論としては、色空間を調べるだけでは、色の錯視の全貌は明らかにならないと考える。各種の色空間については、下記サイトを参照されたい。
http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/color_samples.html -
2022年7月29日(金)に第40回研究センター研究会が,対面(BKC, CC102)と遠隔(ZOOM)をもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
文学部 布山美慕 先生『量子確率を用いた文章理解研究の構想』
2010年頃から量子確率を用いた認知研究ー量子認知の研究ーが主に意思決定分野において進められ、非合理とされてきた認知の一部を数理的に説明する成果が報告されてきた.本発表では、量子確率を用いた文章理解研究の構想について、量子認知研究の枠組みをレビューした上で紹介する.一部予備的な実験結果についても発表する.これから展開予定の研究のため、本研究会にて多くの議論をいただけることを期待する.
立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構 専門研究員 村上嵩至 先生『Navon図形の視覚的印象に及ぼす観察者の気分の影響』
複数の小さな図形あるいは文字を規則的に配列することで,特定の大きな図形あるいは文字を表したものをNavon図形とよび,前者の小さな特徴を局所,後者の大きな特徴を大域とよぶ.われわれは,この図形の大域に焦点を合わせて見る場合と,局所に焦点を合わせて見る場合とでは,その図形に対して異なる印象をもつ.これらのどちらに焦点を当てるかは,図形それ自体がもつ要因(局所の数や密度,大域と局所の大きさなど)によって大きく左右される.しかし本発表では,さらに,観察者がもつ要因に注目し,その感情状態が及ぼす影響について検討する.具体的には,比較的弱いながらも一定時間持続する気分という感情状態が,肯定的(ポジティブ)であるか否定的(ネガティブ)であるかによって,Navon図形の視覚的印象に変化が生じることを検証した一連の実験とその結果について紹介する. -
4月1日付で認知科学研究センター長に野間春生(情報理工学部教授)が着任しました.
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2022年5月30日(月)に第39回研究センター研究会が,対面(OIC, B411研究会室)と遠隔(ZOOM)をもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
萩田 紀博 先生(大阪芸術大学芸術学部アートサイエンス学科⻑・教授):17:30〜 『ウイズコロナ社会後の人と機械の共生の在り方に関する科学技術の発展動向』調査研究プロジェクトでの提言について
ウィズコロナ社会後の人と機械の共生の在り方について,人工知能・ロボティクスに焦点をあて,その発展動向を調査する.倫理的・法的・社会的・経済的課題も考慮して,労働,教育,健康,スポーツ等の分野で,未来社会実装のための要件と施策を提言する.
後藤 智 先生(立命館大学・経営学部 准教授,デザイン科学研究センター ディレクター)18:15〜 “モノの意味の複声性へどう対処するか。-ロジカルシンキングとデザインシンキングの違い-”
近年の社会の多様性の発展に伴い,モノに対する人々の認知する意味も多様となっている(複声性).このような社会では,西欧の支配的な認識による世界の見方(ユニバース)に基づいたモノの設計から,それぞれの場所や時間に基づいた複声的な世界の見方(プルリバース)に基づいたモノのデザインが求められる.本講演では,複声的な世界におけるデザインを実践するための手法としてデザインシンキングをロジカルシンキングと比較しながら紹介する. -
2022年3月28日(月)に第38回研究センター研究会が,対面(OIC, AC342 セミナールーム)と遠隔(ZOOM)をもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
林 勇吾(総合心理学部)17:30~『協調的インタラクションによる学びの支援に向けて:ACT-Rを用いた説明活動時の知識利用に関する分析』
本研究室では,協調的なインタラクションを通じた学習者の学びを支援する学習支援システムのデザインとその評価を行っている.学習活動のファシリテーションを行う会話エージェントの設計に向けて,人間同士のインタラクションを形式的に分析することは,重要な研究フェーズの一つである.そこで本発表では,コンセプトマップを用いた学習者ペアの説明活動に関する実験的検討で得られた発話プロトコルから,学習者の知識利用法に関する分析結果を紹介する.また,認知アーキテクチャーACT-Rを用いた計算機シミュレーションによる学習者の知識検索の方略に関する最新の考察内容も紹介する.本発表では,この内容に先立って,認知科学の分野で長年扱われてきた認知アーキテクチャーACT-Rの簡単な紹介と,研究室で行っている会話エージェントを利用した協同学習支援に関する研究の紹介も行う予定である.
東山 篤規(総合心理学部)18:15~『床面傾斜の知覚と順応に寄与する視覚と体性感覚,およびその結合感覚』
目を閉じて傾斜した床面の上にしばらくいると,その床面が水平に感じられるようになります(体性感覚の順応).また,水平面上にいて,水平面から少し傾斜した面を見ていると,それが水平面に見えてきます(ギブソン効果とよばれる視覚の順応).この研究では,被験者が床面上で仰臥あるいは座位しているとき,体性感覚の順応と視覚の順応,および両者の相互作用を明らかにすることを試みています.被験者は,体性感覚的,視覚的,あるいは両感覚的に,水平面から-6°, 0°, あるいは6°に傾斜した床に3分間晒され(順応過程),その直後に,順応角のまわりの9検査角の傾斜を推定しました.おもな結果はつぎの通り.①推定値を検査角の一次関数として記述したとき,どの順応角においても高い適合度がえられました.これはギブソンの正規化説を支持し,ケーラーの飽和説に反します.②仰臥姿勢では,一次関数の勾配(傾斜の感度)は体性感覚と視覚条件においてともに低く結合条件において高くなったのに対して,座位姿勢では一次関数の勾配はすべての条件において高くなりました.これは,座位姿勢における垂直方向に対する視覚的・非視覚的手がかりの増加と,仰臥条件における体液の異常な圧力パターンとによって説明することができました.③どちらの姿勢でも,主観的水平(水平面と知覚することができる傾斜角)は,視覚条件よりも体性感覚条件において大きくなりました.④結合条件の主観的水平は,横臥姿勢では,体性感覚と視覚によって得られた主観的水平の中間値でしたが,座位姿勢では,視覚のみによって得られた主観的水平に一致しました. -
2022年2月3日(木)に第37回研究センター研究会が,ZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
和田 有史(食マネジメント学部)17:30~『食の多感覚知覚の展開 ー呼吸と味嗅覚統合+食味視覚化技術の開発ー』
新規の嗅覚提示装置を開発し,呼吸のタイミングが味嗅覚相互作用の重要な規定要因であることを発見した.また,官能評価で近年注目されているTemporal Dominance of sensationsという食味中の感覚印象の時間的変化をとらえる技法とSemantic Differential法を併用し,喫食中の食味印象を視覚的表現する技法を開発した.以上の2つの研究を中心に食における多感覚知覚について概観する.
松室 美紀(情報理工学部)18:15~『各身体部位の位置の知覚における複数部位間の相互作用の検討』
我々は自身の身体がどのようなものであり,現在どのような状態であるかという身体表象を持ち,それを利用し行動をしている.複数の先行研究で,大きさや素材,身体の構造等の身体表象の操作が可能であることが示されてきた.特に腕や体の位置は,ラバーハンドイリュージョンに代表される身体所有感に関する研究において,実際とは異なる位置に簡単に知覚されることが示されている.我々は,そのような身体の位置の知覚における,複数の身体部位間の相互作用の検討をおこなっている.例えば,「両腕の位置の知覚を操作する時は,両腕を同時に観察したほうが良いのか」,「一箇所の身体部位のみ知覚される位置を操作した場合,他の部位の位置の知覚に影響を与えるのか」などである.実験では,HMDを使用し,参加者本人またはアバタの身体(の一部)が実際とは異なる位置に表示されるよう設定した.そのようなずれた身体を観察しながら体を動かし,その後,身体を観察せずに行うテストでの動きが観察前からどの程度変化したかを測定した.本発表では,一連の研究におけるいくつかの実験とその結果を示す. -
2021年11月24日(水)に第36回研究センター研究会が,ZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
品川 啓介(テクノロジーマネジメント研究科)5:30~『学術研究における経路依存の発生過程および企業の研究開発への影響』
自然科学分野の専門の学術領域を構成する研究者集団には,蓄積された知識に囚われ他領域の進歩や現況の認識を欠いたまま,それぞれの研究に邁進してしまう現象が散見される.本稿ではこれを研究プロセスにおける経路依存と定義し,この(経路依存の)存在が科学の進歩の様相を分けた事例として青色発光ダイオード開発における発光素材料の開発競争を選び比較する.この競争では科学理論に基づき成功が期待されてきたZnSe研究において理論の新たな展開が見られないなか,期待されてこなかったGaN研究において画期的な科学の発見を基にした展開が生じたこと,ZnSe研究の研究者達はこのような状況下でも研究を継続したことが知られている.これについて,それぞれ定量分析(科学論文の書誌情報分析)と定性分析(研究者インタビューなど)を行うことで,経路依存が発生する過程と,それが企業の研究開発へ及ぼす影響を明らかにする.これを,企業における経営戦略策定において研究開発テーマを設定する際に勘案すべき重要事項として提案する.
松村 耕平・川上 雄大・渡邊 将太(情報理工学部)6:15~『感情の時系列的表現が可能な顔アイコンアニメーション作成システム』
感情を絵文字として表した顔アイコン(顔文字,Emoticon)がオンラインコミュニケーションを円滑にする目的で用いられてきています.これらは便利な一方でコミュニケーションの問題を生じる原因にもなっています.たとえば,顔アイコンにメッセージの送り手が持たせた意味が受け手の解釈と相違することによって誤解を招くことがあるでしょう.私たちは顔アイコンをアニメーションとすることによって感情を時系列として表現することができるシステムを開発しています.第一部では,その入力インタフェースの特徴,システムの応用としてオンラインレビューへと展開した最新の研究例について説明します.第二部では,システムの表現力を向上するための試みと,その試みに関連した問題と最新の研究成果について説明します.研究会では,これらの研究成果について議論したいと考えています. -
2021年9月30日(木)に第35回研究センター研究会が,BKCアドセミナリオA210教室およびZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
高橋 康介(総合心理学部)5:30~ 『顔認知の多様性』
(他者の)顔の認知が人々の社会的活動を支える重要な認知機能であることは言うまでもありません.多くの人は顔を見ることに過度に習熟しており,誰もが自分と同じような仕方で他者の顔を認識していると感じているかもしれません.顔認知に関する諸現象,例えば倒立効果(サッチャー錯視),整列効果(キメラ顔),魅力規定因などについて観察者の地理的文化的背景の影響が取り上げられることは稀です.一方で表情の表出と認識についてはなお文化的差異について見解が分かれています.私たちの研究チームではこのような顔認知の普遍性を検証するため世界各地のフィールドで顔認知に関する実験を行ってきました.絵文字の表情認知,モノやノイズ的パターンが顔に見えるパレイドリア現象,顔の描画などの一連の研究を通して,私たちが想像していた以上に多様な顔認知過程の一端が示されつつあります.例えばインターネット上のやりとりでよく使われる笑顔のスマイリー(J),これが誰にとっても笑顔に見えるわけことが示されました.本講演では私たちが取り組んできた顔認知の多様性に関する研究成果を紹介するとともに,フィールド実験という認知研究の可能性について議論しました.
高田 秀志(情報理工学部)6:15~ 『協調作業支援における音声エージェントの活用』
近年,Amazon EchoやGoogle Nestなどのように,音声で操作し,様々な情報を得ることのできる音声エージェントデバイスが利用され始めている.このようなデバイスは,主に家庭において,個人の活動を支援するのが目的であるが,一方で,オフィスなどにおける協調作業に対しては,どのような機能を果たすべきかを人間によって抽出したような研究に留まっている.本発表では,複数人がWebから情報を収集し,何らかの合意形成を図る「協調Web検索」と呼ばれる作業を対象として,Webページの検索と参加者間のページ共有を支援する機能を持つ音声エージェントを開発し,使い勝手,作業への関与度合い,アウェアネスの観点から評価を行った結果を紹介した.評価の結果は必ずしも良いものとは言えず,参加者の作業への関与度合いやアウェアネスは向上する傾向が認められるものの,使い勝手は有意に低下してしまった.このため,ジャーナル論文への投稿では二度の不採録となっている.音声エージェントは複数人が関わる協調作業のどのような場面に有効に機能するのかについて議論をした. -
2021年7月28日(水)に第34回研究センター研究会が,研究会室(OIC, B棟B414)およびZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
泉 朋子(情報理工学部)5:30~『災害時の避難行動を誘発する情報表現に関する研究』
災害発生時において情報の受け手に対し即座の避難行動を誘発する情報表現について研究をしている.大規模な地震が発生した場合,逃げ遅れることで津波や土砂災害などの二次被害に巻き込まれ命を落とすケースが多数報告されている.そこで本研究では,避難が必要となる津波を伴う大地震を想定し,スマートフォン上での提示する災害情報について複数のテキスト表現を検討し,人が最も避難しようと感じる表現を比較調査している.本発表ではこれまでの調査結果と,現在の取り組みについて紹介する.これまでの調査では,津波高を数字で提示する表現,津波高を身の回りの物の高さに例えて提示する表現,津波到達予想時刻をカウントダウン形式で提示する表現,住家の損壊予想を提示する表現,市の避難予想人数を提示する表現,通信インフラの損壊予想を提示する表現の6種類を比較した.その結果,恐怖喚起コミュニケーションを用いた住家の損壊予想を提示する表現が最も避難行動の誘発効果が高いことを確認した.
大石 衡聴(総合心理学部)6:15~『感情状態は言語処理に影響を及ぼすのか ー事象関連電位を指標としてー』
近年,感情状態が言語処理に影響を及ぼすという,新たな知見が積み重ねられている.その中でも興味深い発見として,文の統語的逸脱に敏感な P600 という事象関連電位 (Event-related potential: ERP) 成分がポジティブ感情状態の際には観察される一方でネガティブ感情状態の際には観察されないというものが挙げられる (e.g., 伏田・松原・片山, 2017; Yano, Suzuki, & Koizumi, 2018).このように感情状態の「違い」によって言語処理のされ方が異なることは示唆されているが,感情状態の「変化」が言語処理のされ方にどのような影響を及ぼすのかはまだ検討されていない.そこで本研究では,実験の前半と後半とで異なる感情誘導を試み,感情状態の変化によって統語的逸脱に対する脳反応に変化が生じるかどうかを検証した.中性感情に誘導した後で文を提示した前半では,正文(例:山田さんは椅子に座った.)に比べて非文(例:山田さんは椅子を座った.)で有意に大きな P600 が観察された.ポジティブ感情誘導後に文を提示した後半では,非文で前半と同様の P600 に加え,前頭部陰性電位も観察された.前頭部陰性電位は文の形態統語的逸脱を反映するとされる成分であり,本研究ではポジティブ感情誘導により覚醒度が上がったことによって脳が文の形態統語的側面にまで強く注意を向けるようになったと主張した. -
2021年5月24日(月)に第33回研究センター研究会がZOOMをもちいて開催されました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
安藤 潤人(情報理工学部)17:30~ 『微小面歪検出のためのゴム製人工皮膚層』
生産現場では製品検査として面歪検査と呼ばれる検査工程がある.この工程では作業者が製品の表面を触り,加工不良で生じた歪みや凹凸の有無を検査する.自動車の生産現場では十分に訓練された作業者が行っている作業であり,非常に困難な作業とされている.その面歪検査を簡易的に行えないかと考え,微小面歪のセンシングが目的である.センサとしてゴム製人工皮膚層と呼称する柔軟な触覚センサを開発した.このゴム製人工皮膚層を使って微小な表面の凹凸検出が可能であることを示した.また,センサ信号から表面形状の推定を試みた.面歪検査を例に挙げ,柔軟構造を利用した走査型触覚センシングについて述べた.
服部 雅史(総合心理学部)18:15~ 『思考の二重過程とその相互作用』
認知や思考が,無意識的で直感的・自動的な過程(タイプ1)と意識的で内省的・制御的な過程(タイプ2)からなるという二重過程の考えは,1970年代以降,多くの心理学者や認知科学者によって別個に提唱されてきた.しかし,タイプ1と2の相互作用について明らかになっていることは少ない.本発表では,両者の相互作用について明らかにするために,これまでに行ってきた洞察問題と潜在プライミングを用いた研究を紹介する.われわれの研究から明らかになってきたことは,(1) 意識的で複雑に見える問題解決過程も,さまざまな外部情報に無自覚的に大きく影響を受けること,(2) ただし,その影響は,プライミングによる処理の自動的促進といった単純な効果ではなく,意識の状態や個人の認知特性・性格特性・感情によって調整を受けて正にも負にもなりうること,である.こうした知見を踏まえて,意識と無意識の関係や,二重過程理論の意義と問題,今後の展望などについて話した. -
2021年2月8日(月)に,第31回研究センター研究会が,zoomを用いて開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
野間春生(情報理工学部) 17:30~ 『徹底的にヒトを模した触覚センサの識別技術と応用,事業化活動の紹介』
これまでに極小サイズのMEMS技術を応用した触覚センサの開発を進めている. このセンサそのものはヒトの触覚受容器と同程度のサイズで実装が可能である。このセンサを活用して、計測された信号処理の手段についても深層学習を応用してヒトの処理を模した仕組みを研究している. これらのセンサによる識別技術と応用,さらには,本年度に始めた本センサの大学発の事業化活動について紹介した.
林勇吾(総合心理学部) 16:16~『認知的コミュニケーション支援に向けて:協同学習場面での実験的検討』
本発表では,「高齢者の認知的コミュニケーションの支援に向けた学際的研究拠点の形成」(R-Giro4期採択,主宰:林勇吾)における認知的コミュニケーション支援の概要について簡単に取り上げた. そのうえで,現在,林研究室で研究してきた協同学習場面での認知的コミュニケーション支援に関するレビューを行った.
R-Giroのプロジェクトでは,実証的なエビデンスをもとに人の状態を理解するモデルを構築し,そのモデルをベースに情報システムを構築していく認知科学的な研究アプローチを採用している. 研究室で行った研究の例としては,小集団での人間の協同問題解決に関する研究がある(Hayashi, 2018, Cognitive Science). 本研究では,集団での人間の協同問題解決における協同相手の発話行動を実験的に操作するために実験装置として会話エージェントを構築した. また,別の研究では,ペアでの協同学習を教育用学習エージェント(Hayashi, 2020, International Journal of Computer-Supported Collaborative Learning)やプロンプト提示によるコミュニケーション支援を行っている(下條・林,in press,認知科学). これらの研究では,学習者や教師の発話内容を心理学実験により検討・分析したうえで,その内容をもとに実験のための支援システムを開発するアプローチにより進めている. 本発表では,今後の課題として,最新の認知科学・人工知能のモデル研究によりどのように研究を発展させることができるのか,さらにはR-Giroのプロジェクトにおいて心理学と情報工学の研究をどのように融合的に研究を行えるのかを議論した.
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2020年11月26日(木)に,第30回研究センター研究会が,コロナ・ウィルスの感染対策としてzoomを用いて開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
島川博光(情報理工学部) 17:30~ 『ふるまい,生理学信号を用いたモニタリング同調の検知と自己調整学習への応用』
学生が自主的に学ぶことを旨とする自己調整学習に効果的なグループワークを多くの教員が導入しようとしている. 成功しているグループワークでは,メンバは,他のメンバが何を考えているか,どのようにすれば各自の案を融和できるかを思考するモニタリングに従事する. モニタリングがメンバ間で同時期に起こっているとき,学びのために何が必要かを各メンバが強制されることなく考える自己調整学習が起こっていると考えられる. 与えられた課題をグループ内での議論を伴う協働により解く場合を考える. 本研究では,ひとりの教員が多数の学生グループを指導している教育現場で,グループワークを成功に導く手法を確立することを目指している. 今回の発表では,侵襲性が低いセンサを使いグループ内でのモニタリング状態をその場で把握し,教員に知らせる実験について紹介する. さらに,そこでの結果を踏まえ,議論,協働が活発化しないグループを,教員が成功に導けるように指導する環境として,どのようなものが考えられるかの一案を示し,みなさまからのご批判を仰ぐ.
北岡明佳(総合心理学部)18:15~ 『フットステップ錯視のレビュー』
フットステップ錯視(footstep illusion)とは,一定速度で動いている刺激の速度が,背景の縞模様と相互作用して,速く見えたり遅く見えたりする運動視の錯視(Anstis, 2001)である.フットステップ錯視は,運動する対象のエッジのコントラストに依存して知覚される速度が異なって見える現象であるという説明(Thompson, 1982)が有力である.それに加えて,Gregory and Heard (1983) が提案した幾何学的錯視,およびWade (1990) の隠し絵(hidden image)に類似した消失錯視によるポジションキャプチャとモーションキャプチャが重要な役割を演じていることを,本レビューでは指摘する.関連する錯視,たとえばキックバック錯視(kickback illusion: Howe, Thompson, Anstis, Sagreiya & Livingstone, 2006),キックフォーワード錯視(kick-forward illusion),でこぼこ道ドライブ錯視(driving-on-a-bumpy-road illusion),リバーストファイによるフットステップ錯視(the footstep illusion based upon reversed phi motion)などを考察する.
ズーム・ミィーティングの記念写真 -
2020年9月25日(金)に,第29回研究センター研究会が,立命館大学茨木キャンパスB棟4階 B413研究会室 において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMによって参加することも可能にしました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
丸山勝久(情報理工学部)17:30〜 『自動プログラム修正の可能性について』
ソフトウェア開発におけるプログラミングが人間による作業である以上,プログラム中にバグ(誤り)が存在することは避けられない.よって,誤りを取り除くデバッグは,ソフトウェアの信頼性の向上のために必須の作業である.近年,効率的なデバッグ作業の実現を目的とした自動プログラム修正(APR: Automated Program Repair)が注目を集めている.これは,バグのあるプログラムから完全自動でバグを取り除く技術であり,その成功例も報告されている.一般的に,自動プログラム修正では,バグを含むソースコードに対するテストケース(テストスイート)を用意する必要があり,テストケースの品質が自動プログラム修正の成否に大きな影響を与える.また,修正後のソースコードの品質も均一ではない. 本発表では,自動プログラム修正の最新技術を紹介し,我々が取り組んでいる遺伝的アルゴリズムに基づく手法や自動バグ修正の応用を紹介した.さらに,ソースコードに存在するバグやバグを含まないソースコードとはそもそも何を指すのか,ソースコードの品質とは何か,人間によるデバッグと機械によるデバッグに違いについても議論した.
東山篤規(総合心理学部)18:15~ 『並木実験によって示唆された視覚および触運動空間の幾何学』
視空間の現象を広範に記述する幾何学モデルのひとつにLuneburg-Blankモデルがある. このモデルを用いてIndowたちは,奥行方向につくられた非交叉並木と等距離並木の不一致を解釈して,視空間の幾何学は双曲的であるとした. 演者は,学生の頃から並木問題に興味をもってきたが,最近は,教示などの変数を厳格に統制した実験を実施したうえでモデルの前提条件を 少し変えることによって視空間をユークリッド幾何学的に解釈することができると思うようになってきた. そこで研究会では,並木問題の歴史的背景を紹介するとともに,視空間がユークリッド幾何学によって記述されうると思うようになった経緯について述べた. また目を閉じて触運動感覚のみをたよりにつくられた並木と視覚的を用いてつくられた並木の相違についても述べた. よって話の要点は1)視覚による並木実験の歴史的展望(平行線の定義問題を含めて),2)Luneburg-Blankモデルによる並木実験の解釈,3)演者の実験の紹介,4)並木をつくるにあたって用いられる視覚と触運動情報であった.
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2020年7月21日(月)に,第28回研究センター研究会が,京都市下京区「キャンパスプラザ京都」において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMによって参加することも可能にしました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
松原崇充(奈良先端科学技術大学院大学)18:00~「確率共鳴に基づく生体模倣型触覚センサの触知覚感度強化」
確率共鳴とは,弱い信号がノイズと共鳴して信号-ノイズ比が改善される現象である.自然界でも頻繁に観察されている. 我々は,生物の触覚における確率共鳴にヒントを得て,生体模倣触覚センサの感度を向上させるノイズの効果を検証した.実験では,触覚センサに取り付けた振動モータにノイズを印加し,10種類のサンドペーパーをなぞる触覚データをSVMで識別した. その結果,ノイズを加えることで大幅な精度向上を実現した.さらに,信号雑音比の改善も確認された.本講演では,これらの詳細に加えて,他のロボット触覚情報処理に関する我々の研究成果についても紹介した.
麻生 武(奈良女子大学)18:45~ 「私的な意識の謎:痛みの概念の獲得から」
「痛み」や「内的状態」の「私秘性」の意識は,単独者の孤独な思弁的反省からではなく,他者とのコミュニケーションの中で生まれてくるに違いない. 子どもが転んで痛くて泣きわめいても,大人はしばしば「痛みを感じる」当事者ではないにも関わらず自信をもって「痛くない,痛くない」と子どもを慰める. 大人は子どもの「リアルな気持」を差しおいて,子どもの気持ちを代弁する存在である.子どもは痛いのに「痛くない」と言われ,怖いのに「怖くない」と言われ,まずいのに「美味しいね」と言われて育つのである. おそらく,子どもは遅かれ早かれ,そのズレを感じ始めるに違いない.そこから,子どもは自分の感じる「痛み」や「心的状態」の「私秘性」を感じるようになっていくのだろう.しかし,それは生後2年目の子どもにはまだまだ手の届かない世界である. <私>とい意識の獲得も同様に謎に満ちている.「謎」が存在することを論じた.
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2020年3月27日(金)に,第27回研究センター研究会が,公益財団法人大学コンソーシアム京都(京都市下京区キャンパスプラザ京都内)において開かれました.研究会は,コロナ・ウィルスの感染を警戒してZOOMを用いたTV研究会としました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
岡 耕平(滋慶医療科学大学院大学)17:30~「障害支援や医療福祉の分野における適応認知行動学的研究」
適応認知行動学(Behavior Oriented Psychology)とは,実際の人間の活動場面において観察された行動の特徴について,その背景にある認知的メカニズムについて明らかにしようとする学問領域です. 本講演では筆者が障害福祉事業所や特別支援学校,あるいは病院で活動する中で観察した特徴的な行動について,適応認知行動学的な観点から行った研究結果について紹介いたしました. とくに「ゲーム依存という行動特性がどのように始まりそしてどのように終わるのか」について,発表者自身の体験も含めて,そのメカニズムを検証した知見を紹介しました.
ズームで写しだされた画面.発表者が右下に写っていますメイン会場のようすです
下野 孝一(東京海洋大学)18:10~「周辺の3次元刺激配置が空間定位と空間認知に及ぼす影響について」(東京からZOOMを通しての発表・参加)
人間は日常3次元空間の中で生活している. そこでは異なる奥行きをもつ様々な対象が点在している. 最近われわれは,研究対象である刺激(当該刺激)の周辺に,奥行量の手がかりの1つである両眼視差をもつ刺激(奥行刺激)を提示すると,当該刺激の見えは,奥行知覚,方向知覚,数量知覚に関する従来の知見と異なることを発見した(たとえば,Aidaら, 2015a, b, 2020; Kusano & Shimono, 2018; Shimonoら, 2015, 2020). これらの発見は両眼視差で定義される奥行きが当該刺激の空間定位や空間認知に影響することを示唆している. 本講演ではこれらの発見を紹介するとともに,発見を説明する両眼視差処理負荷仮説を提案した. この仮説は,周辺刺激の奥行き(両眼視差)が視覚系に“負荷”を与えた結果,当該刺激の見えが変化すると仮定している. もしこの仮説が正しいとすれば,視差処理負荷は上記以外の見えにも影響する可能性がある.講演ではその可能性についても議論した. さらに講演では,奥行刺激の当該刺激の見えに影響するということが,視覚系の機能の中でどのような意味があるのか考えてみた.
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2020年2月4日(火)に,第26回研究センター研究会が,京都リサーチパーク「たまり場」において開かれました.次の写真は講演光景です.
演者,時間,講演内容は次のとおりです.
岡本真彦(大阪府立大学)18:00~「成人の分数表象の認知的特性」
近年,分数の認知が心の中でどのように表象あるいは処理されているのかを明らかにしようとする研究が盛んに行われるようになってきています. というのも,分数の理解がそれ以降の算数・数学のカギとなっていることが分かり始めてきたからです. 例えば,欧米では小学校の分数の成績で中学校の関数などの成績が予測できること,つまり,小学校の分数ができるかどうかで中学校の数学の成績が決まるということを報告している研究があります. 日本でも教育現場では,古くから分数の獲得が難しい子どもがいると指摘されてきています. 分数は整数と違って,数(分母)が大きくなると量は小さくなるという性質があり,整数が獲得できてもその知識はそのままでは分数に使えないという特徴を持っています. 実際,我々の研究でも小学生は整数と小数は心の中で同じ一つの数直線の中で扱っているのに対して、分数は別の数直線として扱われている可能性を示唆する結果が得られています. 当日の講演では,分数の扱い方を調べるための実験を実際に体験してもらって,成人である大学生が分数を心の中でどのように表象しているか(扱っているか)に関する研究を紹介してみました.
山西良典(立命館大学情報理工学部)18:45~「コミック工学とAI −漫画を工学する挑戦−」
コミック工学は,2013年から草の根的な研究活動を広げ,工学的な技術によって漫画コンテンツの魅力を再発見し,新たな可能性を模索するために2019年に設立した新しい研究分野である.コミック工学研究会では,画像処理,言語処理,音情報処理,データベース,インタフェース,HCIといった様々な研究分野の研究者が一堂に会して,クリエイターから編集者,書店,読者まで,漫画を取り巻くあらゆる場面の課題や要求を工学的なアプローチによって解決するための議論を行っている.コミック工学は,漫画というコンテンツを中心に置き,コンテンツの特性を考慮した分析や処理,インタラクションデザインを提案していくコンテンツ指向研究として位置づけられる.本講演では,電子化がますます勢いを増す漫画の背景とともに出版社や書店に対するインタビューによって得られた知見を共有すると共に,これまでに発表されてきた代表的な研究事例を紹介した.また,漫画を読むという行動を人間のマルチメディア処理の一例として捉えた,エンタテインメントコンテンツの「楽しさ」の秘密に迫るアプローチの展望についても概説した.
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2019年11月22日(金)に,第25回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス,B棟4F B412(研究会室2)において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
多田 美香里(関西福祉科学大学)17:15~「把持に関わる空間の認識について」
把持の正確さに関する研究と,空間の大きさの見積もりに関する研究について報告する.対象を把持するとき,握り手(ハンドル)のある対象の把持は正確で速いと言われている.対象のどの部分をどのように把持すべきかがはっきりしているためであると考えられる.また把持の経験があるよく知っている対象の方が把持しやすく,さらにそれがよく知っている向きで置かれているときの方がより把持しやすいと考えられる.もし把持到達運動を繰り返し行った過去の経験からそのような効果が生じるのであれば,把持の経験が多い対象とそうでない対象とでは,ハンドルの有無の効果や,対象と観察者の空間配置による影響が異なるのではないかと考え,対象の形状(ハンドルの有無)と熟知性およびその配置による把持の正確さへの影響について検討した.一方で,把持には自らの手の動作に関わる空間の大きさも考慮する必要がある.そこで手の動作可能空間の変化に応じて空間の見積もりがどのように影響されるのかについても検討した.
木村 貴彦(関西福祉科学大学)18:00~ 「三次元空間における視覚認知:観察者の前方空間と後方空間での比較」
三次元空間内における注意特性については注意移動や注意配分などの観点から検討が行われてきた(Andersen,1990; Atchley et al., 1996など).しかしながら,多くの研究では両眼視差を用いた立体視環境で実験が行われ,人間の行動空間である実際空間で行われた研究は比較的少ない.我々は実際空間内での視覚的注意研究をこれまでに行ってきたが(木村他,2007; Kimura et al.,2009),これらの研究では観察者の前方空間に刺激が配置されていた.他方,日常生活では自動車の運転時のように,後方に広がる空間から鏡を用いて情報を獲得する場合もあり,三次元空間は観察者の後方にも広がっていると言える.また,鏡の中の対象は反転しているにも関わらず,我々は必要な情報を適切に獲得して行動に役立てている.
そこで,本講演では観察者の前方空間と鏡を介した後方空間における物体の位置関係や注意配分について注目し,我々がこれまでに行ってきた研究を紹介する.まず,液晶シャッターを用いた瞬間提示事態において物体の位置を再生する課題を行い,前方空間と鏡を介した後方空間での物体認知について比較した.次に,奥行き方向での注意の移動特性について,空間手がかり法(Posner et al.,1980を用いて検討した.これらの実験で得られた知見から,観察者の前方空間と鏡を用いた後方空間における視覚認知特性について議論する.
2019年9月30日(月)に,第24回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC) エポック立命21 K305室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
江草浩幸 17:00~「逆さめがね実験における「正立の知覚」とは何か?-心理学的測定の難点-」
逆さめがねとは,網膜像の左右,上下あるいはその両方を裸眼の場合とは逆の姿に変換する器具の総称である(今回は上下逆さの場合を取り上げる).現在,逆さめがね実験の目的は様々であるが,19世紀に始まったときは,「外界が正立して知覚されるために網膜像が逆転していることは必要か?」という問いに答えようとするものであった.すなわち,網膜像を正立させた場合,外界は逆さに見えたままなのか,それとも正立の知覚が生じることがあるのかを,逆さめがねの長期間連続装着によって確かめようとした.
この実験で結論の根拠となるデータは,観察者による主観的体験の言語報告と実験者による客観的な行動(脳や筋肉の反応も含む)の観察・測定から得られる.ただ,この二種のデータは必ずしも一致しない.たとえば,逆さめがねの装着直後は,物がうまく掴めない,などの行動的不適応が生じるが,4,5日もすれば頻繁に行う行動は裸眼時とあまり変わらなくなる.このような適応性の回復が正立の知覚の行動的指標となる.一方,外界が安定的に正立して見えるようになった,とする言語報告はない.また,逆さめがねを外すと,行動上は不適応が再発するが,主観的には直ちに外界が正立して見える.では,正立の知覚を論じるのにどちらのデータに依拠すればよいのだろうか.逆さめがね実験に限らない心理学的測定の悩みの種である.
都賀美有紀(立命館大学総合心理学部)17:30~「学習直後と遅延後の項目と順序の記憶における語長効果:項目と順序の過程分離手続きを用いた検討」
買い物リストを覚える時など,順序だてて物事(項目)を覚えることがあるだろう.項目を覚えていないと実質的に順序を思い出せないことから,項目と順序の記憶については,順序の記憶が項目の記憶に依存しているとの指摘や(Conrad, 1965),それらが独立した記憶処理を持っているとする議論(Healy,1974)がなされてきた.近年,単語の語長(都賀・星野,2015)や単語の頻度(Mulligan, 2001)の違いが項目と順序の記憶に異なるパターンで影響を及ぼすことから,項目と順序の記憶は独立した処理過程を持つことが指摘されている.
単語リストを学習した時,その単語の語長が与える影響は項目と順序の記憶で異なる.都賀・星野(2015)は,語長は項目の記憶には学習直後も遅延後も影響を示すが,順序の記憶には学習直後にしか影響を示さないことを,伝統的な保持テストである項目の自由再生課題と順序の再構成課題を用いて示した.
しかし,これらの課題は項目と順序の記憶の両方の影響を受け,純粋にそれらの記憶を測定していない(Nairne & Kelley,2004).Nairne& Kelley(2004)はそれらを比較的純粋に推定することを目的として項目と順序の記憶についての過程分離手続きのパラダイムを提案している.
本発表ではこのパラダイムを用いて,学習直後と遅延後の項目と順序の記憶における語長効果を検討した結果を報告した.語長効果は音韻情報に依存した現象とされる.項目と順序の記憶に音韻情報がどのようにかかわるのかを議論した.-
2019年7月25日(木)に,第23回研究センター研究会が,OIC,B棟4F,研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
前田太郎(大阪大学・情報科学研究科)17:00~「VRとサイバネティクス:感覚重畳刺激と行動誘導インタフェースの構築」
本講演ではサイバネティクスの観点から人間の感覚-運動特性を利用したインタフェースを提案している.GVS(前庭電気刺激)をはじめとする感覚重畳インタフェースを利用した行動支援技術の設計理念と応用例を紹介する.
和田隆広(立命館大学・情報理工学部)17:45~「操縦型機械の操作性・快適性向上に関する研究」
操縦型機械(自動車,建機,義足,遠隔操縦ロボットなど)に関する,操作性・快適性の要因の解明と,その向上技術に興味がある.その事始め(が10年も続いているが)として行っている,動揺病(乗物酔い)や反射眼球運動の計算モデルや,その人間機械システムへの応用に関する研究例などを紹介する.
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2019年4月20日(月)に,第22回研究センター研究会が,BKCエポック立命21 K305室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
田村昌彦(BKC社系研究機構)17:00~「選択肢数が不確かな状況における選択行動に与える影響」
不確かな状況において選択行動を行う際に,我々は事象の生起確率を基に意思決定を行うと考えられてきた.しかし,我々はヒューリスティックを用いるなど,しばしば非規範的な意思決定を行う(たとえば,Tversky&Kahneman, 1974).この原因として,我々が確率見積もりを適切に行うことが困難であることが指摘されている.他方,近年では,認知処理の二重性が指摘されている(Evans&Stanovich, 2013).この観点によると,我々には確率見積もりを行うプロセスと,情動ベースのバイアスが介入するプロセスの2種類によって意思決定を行うと捉えられている.これまでの研究では,情動ベースのバイアスが介入するプロセスでは,予期的な公開や,記憶の歪みが作用していると指摘されているが,定量的な特性など明らかにされていない点が多い.
本研究では,確率見積もりが困難な状況において,情動ベースのバイアスが介入するプロセスがどのような性質を有するのかについて検討した.中でも,選択肢の数が選択変更に与える影響について実験的に検討した.具体的には,確率見積もりが困難な状況として,モンティホール問題を用い,提示される扉数を操作することで選択肢の数を操作した.その結果,選択肢の数の増加に伴い,推定される選択変更率の上限が増加することが明らかになった.このことは,選択肢の数が増加するにしたがって,選択変更を抑制する情動的なバイアスが弱まると考えられる.
田中省作(文学部コミュニケーション学域)17:30~ 「形状と誤りで描く日本手話の指文字マップ」
手話の「指文字」は,音声言語のアルファベットに相応し,日本手話(以後,適宜「手話」と略記)には日本語の五十音に対応する指文字が存在する.手話の実際のコミュニケーションでは,指文字の出現は語に相応する手話単語に比べ相当に低いものの,新語や外来語などにも使われる重要な表現法である(たとえば,4/1の新元号の発表の際にも使われた).また,手話学習の入門テキストの見返しに指文字が提示されることも多く,手話学習の入口の一つでもある.
その手話の指文字の表出と読取の誤りの一因に,指文字間の形状の類似性が考えられている.そこで本研究は,動きが伴わない41の指文字を対象とし,手指形状を7つの特徴(手の向き・掌の向き・小指の情報・薬指の情報・中指の情報・人差指の情報・親指の情報)で表し,誤りデータを考慮しつつ,指文字を低次元空間に布置する方法を提案する.提案手法ではまず,表出や読取時に誤りが起こった指文字間から,捨象されやすい特徴を求める.そして,それらの情報に基づき,各指文字の形状を変形し,多次元尺度構成法によって布置する.実験の結果,誤りがより近接したマップが生成され,さらに未観測の誤りの予測可能性や,学習者は掌の向き・手の向き・親指の情報の順に捨象しやすいこと,形状が原因ではない誤りの検出や新たな原因の一端(学習順序・単位による混乱)が示唆された.
小池千恵子(薬学部創薬科学科)18:00~「脊椎動物網膜が視覚情報を捉えるしくみ」
脊椎動物網膜は中枢神経系に属し,5種類の神経細胞と1種類のグリア細胞からなる階層構造を持つ.本セミナーでは,視覚情報を神経シグナルに変換する視細胞の役割と,視細胞から視覚情報を受け取った双極細胞が,視覚情報をON・OFF経路に分解する仕組みについて説明する. - 2019年度の日本心理学会(9月11日水~13日金,大阪いばらきキャンパス)においてシンポジュウム「本当に協調的なインタラクションは学びを支援するのか?」(企画者:林勇吾・山本博樹・藤本学)を後援しました.
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2019年3月25日(月)に,第21回研究センター研究会が,OIC,B棟4F研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
松室 美紀(情報理工学部 リアリティメディア研究室)17:00~「身体のメンタルモデルと身体所有感の変化が痛み知覚に与える影響」
自身の身体のメンタルモデルは,行動の決定のために重要な役割を果たす.そこで,本研究では.視覚情報により身体のメンタルモデルを変化させることを試み,その痛み知覚への影響を検討した.特に,身体所有感の変化による効果との比較を行った.身体所有感とは自身の身体や対象物が自身の一部であるという感覚を指し,その強さは痛み知覚に影響することが先行研究で指摘されている.本研究ではMR技術を用い参加者の前腕を透明に見せ,参加者のメンタルモデルと痛みの知覚の変化を測定した.その結果,身体所有感よりも,腕を透明にすることにより生じる実体のなさが,痛み知覚を減少させることが示された.
満田 隆(情報理工学部)17:30~「選ぶために最後に見る,触る,嗅ぐ:二者択一選好課題における意思決定メカニズム」
二つの候補からどちらか好きなほうを選択する場合,人は通常,両候補を交互に繰り返し見比べて決定する.一方,コンピュータが二者択一を行う場合は,それぞれを独立に1回ずつ評価して,評価点が高いほうを選ぶので見比べる必要はない.人はなぜ,見比べる動作を必要とするのか?多くの研究は,二つの画像から一つを選ぶ場合,人は選ぶ画像を最後に見る傾向があることを報告している.これまでの実験で,この傾向は視覚に限らず,触覚や嗅覚を用いた選好課題でも生じることを確認した.また,好き嫌いとは関係のない基準で選択する課題でも同じ傾向が生じることを確認した.本発表では,候補への接触方法が選択に与える影響を紹介するとともに,単純接触効果や意思決定メカニズムとの関連について議論する. -
2019年1月21日(月)に,第20回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス (BKC) エポック立命21 K305室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
山田泰己(情報理工学部リアリティメディア研究室)17:00~「視・聴覚刺激が錯覚現象 R-V Dynamics Illusionに与える影響の分析」
R-V Dynamics Illusionとは,実物体 (R) と仮想物体 (V) の異なる運動状態の際に発生する錯覚現象である.これまでに実物の剛体に対して液体が揺れる視覚刺激を提示すると,実際よりも物体を軽く知覚する現象を発見した.次なるステップとしてこの視覚刺激を液体から剛体に変更した場合にも同錯覚現象が発生するのか確認した.更に視覚刺激を剛体とすると物体が衝突したときの音の印象が強くなるため,視覚刺激だけでなく,聴覚刺激の影響が大きくなると考えられる.そこで,聴覚刺激も付与した場合に,錯覚現象にどのような影響を与えるのか実験・分析した内容を発表する.
周娟(j-zhou)(情報理工学部協調メディア研究室)17:30~「小学校での協調学習支援におけるマルチマウスクイズシステムの利用」
小学校教育では,児童を学習に動機づけることが重要であり,楽しく学習できるような雰囲気を作るために協調学習という形態を用いた授業実践がしばしばみられる.このような授業へのICT利用は重要な課題である.Single Display Groupware(SDG)は,1つのディスプレイを共有しながら複数人にマウスなどの入力デバイスを操作できるようにしたComputer Supported Collaborative Learning (CSCL)モデルである.このSDGの概念に基づき,1つの画面を共有しながら複数人が同時にクイズを答えるシステムであるマルチマウスクイズ(MMQ)とクイズを編集する機能を実装したマルチマウスクイズエディタからなるマルチマウスクイズシステムが開発された.本発表は,MMQを用いたさまざまな授業実践を紹介し,博物館学習で行った授業実践の具体例を挙げながら,システムの有効性及び児童たちの学習効果を紹介する. -
2018年11月23日(金)に,第19回研究センター研究会が,大阪・いばらきキャンパス(OIC)B棟研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
破田野 智美(立命館大学)5:00~「人物写真の印象を変える,距離・大きさの見え方」
写真を見ると,写し撮られたものの様子がすっかりわかったような気持ちになる.パスポートの証明写真や旅行先での風景の写真は,それを見れば対面しなくても雰囲気を把握できるからこそ撮影されるのだろう.画面上の像は光学的法則に従っており,写真を特定の場所から眺めれば,そのときの網膜像は実物を見た場合とよく一致するため,写真が現実を代替する媒体だと感じても無理はない.
しかし,撮影方法によって見え方が異なることも,われわれは経験的に知っている.このため,景色は美しさが伝わるよう,人物であれば魅力を引き出すように,写す角度や構図などに工夫を凝らす.その結果,同一人物を高身長に見せたり可愛らしく見せたりする撮影方法が編み出されてきたし,最近では,写真の撮りようによって顔立ちが大きく変わって見える「角度詐欺」が話題となった.
この少し矛盾するような体験は,撮影方法と知覚,そして印象の連鎖として整理できる可能性がある.これを確かめるため,カメラの位置を変えて人物の身体や顔を撮影し,各部位の大きさの見え方と,体形や相貌の印象とを測定し,両者の関係を重回帰式で表した.その結果,人物とカメラとの位置関係によって画面上の像が変化し,各部位の大きさが変わって見え,体形や顔だちの印象が変わる様子を捉えることができた.
渋谷 郁子(大阪成蹊短期大学)5:30~「子どもの両手協調運動における調節過程」
手指運動は,日常的な動作の繰り返しを通じて,生後数年の間に急速に発達していく.多くの子どもは就学までに食事や更衣などの基礎動作を習得し,描画や書字,工作といった活動にも親しむようになる.その一方,手指運動に不器用さやぎこちなさが存在する場合には,これらの動作や活動が広範に障害され,生活の質が低下したり学業達成の妨げになったりする恐れがある.
本研究は,小学校1年生47名を対象として,子どもの手指運動の巧緻性に影響を与える要因を,ハサミの操作を題材として検討したものである.ハサミ操作の正確さと速さを算出し,課題のパフォーマンスとした.それぞれの中央値を基準として,「正確・高速」群,「正確・低速」群,「不正確・高速」群,「不正確・低速」群の4群を設けて子どもを分類した.各群において,最も顕著な結果を示した4名の子どもを対象に,紙の持ち替え数,ハサミの開閉数,ハサミを持つ側の肘の角度などの指標から,肩や肘といった上肢の運動について検討を加えた.その結果,紙の持ち替えを頻繁に行うこと,ハサミを頻繁に開閉させること,ハサミを持つ側の肘の角度が大きいことなどが,ハサミの巧緻性を低減させる要因であることが示唆された.いずれも,紙を持つ側である非利き手の手首の柔軟性が関係していた.発表ではこれらの結果をもとに,子どもの手指運動の巧緻性を高める支援について考察した. -
2018年9月27日(木)に,第18回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
光廣 可奈子(文学研究科 博士後期課程)5:00~「顔の美しさ・好ましさ・魅力評価の相違―提示時間の効果からの検討―」
他者の顔を「美しいけれど,好きでない」や「魅力的だが,美しくない」と感じることがあるように,われわれの日常経験では,美しさ,好ましさ,魅力の評価が常に一致するとは限らない.しかし,従来の顔研究の中でこれら三つの評価は十分に区別して検討されないことが多い.本研究では,顔全体および顔のパーツ(目,鼻,口)の提示時間の違いが,美しさ,好ましさ,魅力評価へ与える影響を比較することから,三つの評価の違いを検討した.実験参加者は,刺激の提示時間(20ms,100ms,1000ms,時間制限なし)ごとに,四つのグループにランダムに分けられ,顔全体および顔のパーツの美しさ,好ましさ,魅力について7段階で評定した.その結果,顔全体および顔のパーツの評価は,評価項目にかかわらず20msという非常に短い時間で,刺激を十分に見たときと同じレベルで行えるが,刺激の提示時間の影響は評価項目によって異なることが分かった.美しさの評価は刺激の提示時間の影響を受けないのに対し,好ましさと魅力では提示時間が長くなると顔のパーツの評価が変化した.これらの結果から,好ましさおよび魅力と美しさは,異なるプロセスによって評価される可能性が示唆された.
對梨 成一(文学部)5:30~「坂道の見かけの縦断勾配に及ぼす双眼鏡の効果―虚像とその網膜像による仮説―」
机上に置かれた水平な矩形の用紙を数メートル離れた位置から双眼鏡で観察したとき,その用紙の像は歪み,水平な縦断勾配は上り坂に,矩形である形は近小遠大(逆遠近)に,用紙の前辺から後辺までの奥行きは短縮し,視点から用紙までの距離も短縮し,その大きさは大きく見える.本研究では,双眼鏡で生じるこれらの歪みのうち,見かけの縦断勾配が測定された.独立変数は双眼鏡を通して観察したときと双眼鏡なしで観察したときであり,従属変数は坂道の見かけの縦断勾配を水平に調整したときの角度であった.その結果,双眼鏡を通して観察したとき坂道は,双眼鏡なしで観察したときよりも著しく上り坂に見えた.双眼鏡による歪みをその虚像および虚像の網膜像と比較することによって,縦断勾配・距離・奥行きの歪みは心理学的現象,形と大きさの歪みは光学的現象に分類された.双眼鏡による縦断勾配の歪みは,その虚像の形あるいは虚像の網膜像の形,距離の短縮,視野の狭窄の要因によって生じると説明された. - 本研究センターとの共催のもと,日本認知科学会第35回大会(8月30日〜9月1日)と日本認知心理学会第16回大会(9月1日~9月2日)が立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開かれました.本センターの分科会である「説明研究会」(主宰 山本博樹)が,シンポジウム『本当に認知研究は説明実践に貢献してきたのか?-「分かりやすい説明」をめぐるアポリアへの挑戦-』を実施しました.約300人の方々の参加を得ました.
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認知科学研究センター主催の「力触覚技術応用コンソーシアム研究会」が9月12日(水)18時より,立命館大学東京キャンパス第4教室において開催されました.企業及ぶ大学・研究所関係者30人余りが参加され,活発な情報の交換が行われました.
詳細はこちらから -
2018年7月27日(木)に,第17回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)B棟研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
大井翔(情報理工学部)5:00~「振り返り認知リハビリテーション支援システムと認知トレーニングソフトについて」
高次脳機能障害者のための社会復帰に向けた振り返り認知リハビリテーション支援システムを開発している.振り返り支援システムは,行動モニタリング・理解,行動予測,介助,声掛け,ヘルプ機能,振り返りのフェーズから構成されており,症例自身の気づきの誘発やリハビリテーションに対する意欲付けができる.
本研究では,大阪府立障がい者自立センターに入所する記憶障害や注意障害の症例に対して調理・掃除リハビリテーションを対象とし,生活行動ナビゲーションを活用し,振り返り認知リハビリテーションについて効果検証を行った事例を紹介し,振り返り支援システムの自動化に向けた取り組みについて述べる. また,神経心理学の専門家と共同で開発したワーキングメモリと注意機能を訓練する認知トレーニングソフトも紹介する.訓練ソフトの効果検証については,今年度行っている段階である.
高田 秀志 情報理工学部教授 5:30~「プログラミングによる創造的思考の育成」
社会が高度化するにともなって,すでに構築された知識を習得・活用するだけでなく,自ら新しい問題を発見し,解決策を見つけ出していく「創造的思考」が重要になっている.我々はすでに10年以上に渡ってビジュアルプログラミング環境を活用した教育活動を推進しているが,現代の社会において求められている思考力・判断力・表現力等を育成するための方策としてはまだまだ不十分な点が多い.今回の発表では,まず,プログラミングによって創造的思考を育成することに対する基本的な考え方として,MITのMitchel Resnick教授らによって提唱されているCreative Learning Spiralや日本におけるプログラミング教育の目的,Computational Thinkingについて概観する.その後、我々の研究室で行っている研究として,相互評価を導入したスモールステップ化プログラミング学習ツールを紹介する.本ツールは,子供たちが意味のあるプロジェクトに取り組む上で,プロジェクトを進めていくための手順をいくつかのステップに分けて提示し,さらに,子供たち同士の相互評価を取り入れることで,プログラミングの導入期に必要な足場を与える.さらに,導入期以降のより高度なプログラミングが行えるように学習を進めていくためのツールとして開発を行っている演繹型プログラミング学習ツールを紹介する. -
2018年5月24日(木)に,第16回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
高橋英之(大阪大学 基礎工学研究科)5:00~ 「自分自身を見つめ直すためのロボット」
発表者は,人間と相互作用するロボットの研究を行っているが,それはコミュニケーション相手のレプリカを創る行為ではなく,人間が自分自身について自問自答する場づくりにロボットのテクノロジーが生かせるのではないかという狙いから行っている.今回の発表では,被験者自身の意見をロボットに発話させることで外在化させ,その意見を被験者自身に否定させる,という経験を創り出すことで,被験者自身の価値観や考えを内的に変容させるシステムについて紹介した.このシステムの狙いは,自分自身の考えについて客観的な視点から批判的に疑い続けることは一つの思考の在り方であり,このような自分の意見を外在化するシステムを構築することで,外部からの手助け無しで自らの思考を深めることにつなげられたら良い,という想いがある.予備実験の結果,システムの使用前後で一定数の被験者が価値観を変容させること,特に日常的に自らの行動規範としていない価値観については特に変容しやすいことが示された.その上で,外的に価値を提供するのではなく,自問自答を通じて自らの内的な価値を発見する,そういう場の構築をサービスとして提供することの可能性を“地蔵”というキーワードから議論した.
和田有史(本学 食マネジメント学部)5:30~「呼吸と連動した後鼻腔経路嗅覚刺激による味覚強度増強効果」
嗅覚により知覚される味の強度が変化することは古くから知られてきた.特に後鼻腔経路と口腔内感覚の混同はしばしば報告されてきた.日常生活において,におい分子は呼気や吸気と共に嗅上皮細胞に運ばれ,嗅覚受容体に受容されるため,呼吸のタイミングと嗅覚経路の関係は強い可能性がある.そこで,呼吸と連動した後鼻腔,前鼻腔の両経路からの嗅覚刺激呈示が味覚強度の増強を引き起こすかを検討した.
実験参加者は嗅覚刺激を受けながら溶液の味の強度を評価させる課題をおこなった.嗅覚刺激にはバニラエッセンスを,味覚刺激にはショ糖溶液を用いた.嗅覚刺激呈示には,参加者の呼吸と連動して刺激を呈示できるにおい呈示装置を開発し,使用した.味覚刺激呈示では,溶液の入ったシリンジを参加者に持たせ,指示に合わせてプランジャーを押し込ませて溶液を飲ませた.その後,VASを用いて味の強度の評価を求めた.
その結果,各条件のVASによる溶液の味の評価得点について,におい呈示条件と溶液濃度条件の二元配置の分散分析を行った.その結果,両要因の主効果が有意であった.さらに,事後検定を行ったところ,後鼻腔経路条件がにおいなし条件と比較して溶液の味の強度評価得点が有意に高かった.
また,塩味を増強するといわれる匂い刺激と食塩溶液を用いて実験を行ったところ同様の嗅覚による味覚増強効果が得られた.
これらの結果は,呼吸と連動した嗅覚刺激呈示においては,後鼻腔経路からのにおい呈示が味覚強度の増強を引き起こすことを示す一方で,前鼻腔経路でのにおいの効果はないもしくは,微弱である可能性を示唆している. -
2018年3月26日(月)に,第15回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)フューチャープラザ4F研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
多田昌裕(近畿大学 理工学部) 17:00~17:45「高齢運転者は本当に危険なのか?~運転行動面・心理面からの検討の試み~」
世界一の超高齢大国であるわが国において,元気高齢者の社会活躍を推進することは重要な課題のひとつである.一方,ニュースなどで高齢者による交通事故が報道されることも多く,「高齢運転者=危険」という認識が社会で広まりつつある.筆者らはこれまで,アイカメラやウェアラブルセンサなどを用い,高齢運転者の公道上(一般道,高速道)の運転行動を計測・解析してきた.また近年は,高齢運転者の行動面に着目するだけでなく,なぜそのような行動をするに至ったのか,その内的状況に着目した研究を進めている.本発表では,これまでに計測した700人以上の高齢運転者のデータをもとに,高齢者は本当に危険なのか,そして超高齢社会における安全な交通社会実現のために,情報技術がどのように貢献できるか議論するための話題を提供したいと考えている.
服部雅史(立命館大学総合心理学部・教授)17:45~17:30「認知の二重性と問題解決のパラドックス」
私たちの認知は,タイプの違う二つの過程からなるという考えがある.これを総称して二重過程理論と呼ぶが,この考えは,心理学ではかなり古くからさまざまな研究者が異なることばで指摘してきた.2種類の過程とは,直感的で非意識的,自動的なタイプ1過程と,熟慮的で意識的,ワーキングメモリを必要とするタイプ2過程である.よくある誤解は,タイプ1は誤りやすく,タイプ2がその誤りを正すというものである.しかし,実際には必ずしもそうとは限らず,近年ではむしろ,タイプ1が規範的で(ベイズ的合理性を満たし),タイプ2が誤りの原因となるという見方すらある.注意すべきは,タイプ1と2の乖離が,問題解決におけるパラドックス的な現象と深く関わっている点である.パラドックス的な現象とは,正解するために十分な知識があるのにそれを使えないことや,問題から離れたときによいアイデアが浮かんでくるといったことである.認知の二重性,特に二つの過程の関係性や相互作用の解明は,私たちが創造的になるためにどうしたらよいかについてのヒントをもたらす.本研究発表では,私の研究室でこれまでに実施してきたいくつかの実験結果を紹介しながら,この難問についてオーディエンスと一緒に考え,今後の研究の展開について考えを深めたい. -
「説明研究会」の発足および「つまづき研究分科会」の解散について
センター内に設置されていた「つまづき研究分科会」を解散し,新たに「説明研究会」の発足させました. -
2018年1月25日(木)に,第14回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
谷口忠大(情報理工学部)17:00~17:45「実世界感覚情報に基づく言語獲得の構成論~記号創発ロボティクスによる認知科学に向けて~」
Computational models that can reproduce human developmental and long-term learning process have been widely explored. However, we have not obtained a computational model that enables a robot to learn physical skills and linguistic communication skills automatically through its sensorimotor interaction with its environment. Symbol emergence in robotics is a research field in which cognitive models that form symbol or representation systems in a bottom-up manner have been developed. In this talk, I talked about symbol emergence in robotics and its related topics. In particular, I focused on a word discovery task where double articulation analysis performs a central role. I introduced a nonparametric Bayesian method for unsupervised word discovery, nonparametric Bayesian double articulation analyzer and its applications. I also talked about a language acquisition and spatial concept formation method.
Reference- Tadahiro Taniguchi, Takayuki Nagai, Tomoaki Nakamura, Naoto Iwahashi, Tetsuya Ogata, and Hideki Asoh, Symbol Emergence in Robotics: A Survey, Advanced Robotics, 30(-), (11-12)706-728, 2016. DOI:10.1080/01691864.2016.1164622
- Akira Taniguchi, Yoshinobu Hagiwara, Tadahiro Taniguchi and Tetsunari Inamura, Online Spatial Concept and Acquisition with Simultaneous Localization and Mapping, IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 2017
田浦秀幸(言語教育情報研究科)17:00~18:15「第2言語習得開始年齢と脳内コネクトーム」
This study explores if L2 is processed qualitatively differently from L1, depending on the L2 onset age. To date, psycholinguists have tested Lenneberg’s critical period hypothesis (1967) inconclusively, with results supporting it (i.e., Johnson and Newport, 1989; DeKeyser, 2005; Abrahamsson and Hyltenstam, 2009) and opposing it (i.e., Hakuta, Bialystok, and Wiley, 2003: Hernandez, Li, and MacWhinney, 2005; Birdsong, 2006). Neurolinguists have examined the hypothesis with interesting results, as shown by Kim, Relkin, Lee, and Hirsch’s fMRI study (1997) which revealed that the identical region in Broca’s area was activated in early bilinguals’ L1 and L2 use, something which was not observed in late bilinguals. A more precise age for this, was identified by Weber-Fox and Nerille (1996) who said that that language plasticity in the left hemisphere is complete and more activation in the right hemisphere was inevitable when the L2 was acquired after age 11.
This study examines the issue of L2 onset age based on data from bilinguals whose two languages (Japanese and English) are linguistically distant and whose L2 onset age varies in comparison to those students studying English from a junior high school level.
The research followed 59 Japanese-English bilinguals and as a control group, 10 Japanese learners of English. The bilinguals acquired their L2 (English) through extensive exposure and use, differing only in L2 onset age; before birth (Group 1, N=10), at birth (Group 2, N=10), age 1-3 years (Group 3, N=10), 4 -5 years (Group 4, N=10), 6-9 years (Group 5, =10), and 16-22 years (Group 6, N=9). Control Group 7 (N=10) started studying English at junior high school in Japan. All participants (N=69) resided in Japan at the time of data-collection, and had acquired Japanese as their L1.
A Verbal Fluency Task (VFT) was used to collect behavioural and brain activation data. This task included letter and category tasks in both Japanese and English. A 42-channel Shimadzu OMM-3000 was used to collect fNIRS data from Broca’s area and its homologous area in the right hemisphere every 130 ms.
The preliminary analyses thus far suggest a clear age effect on the right hemispheric brain activation but no significant differences in Broca’s area or in the behavioural data. The right hemispheric involvement is statistically higher as the L2 onset age increases. The presentation will include full analyses and show brain region connectivity with plausible explanations. -
2017年12月1日~3日に,本研究センターとの共催のもと,日本基礎心理学会第35回大会が立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開かれました.
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2017年11月30日(木)に,第13回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC) フューチャープラザ4F研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
肥後克己 (立命館大学グローバル・イノベーション研究機構) 17:00~17:30:「ワーキングメモリとその神経機構」本発表では,言語理解や思考,記憶などの人間の高次認知機能を支える認知システムであるワーキングメモリについて,その基礎的な知見と神経基盤についての概説を述べる。ワーキングメモリはなんらかの活動に必要な情報を一時的に保持・処理する役割を持つ。Baddeley(1986)によって提案されたモデルがワーキングメモリ研究の始まりであり,主に3つの要素(中央実行系・音韻ループ・視空間スケッチパッド)から構成されるという点は現在でも変わっていない。ワーキングメモリモデルを援用した応用研究においてしばしば問題となる「短期記憶との違い」については,二重貯蔵モデル(Atkinson & Shifrin,1968)の問題点(Warrington & Shallice,1969;Shallice & Warrington,1970)を考慮するとわかりやすい。短期記憶とワーキングメモリの最大の違いは,情報処理を想定している点であり,この情報処理を担うワーキングメモリシステムの構成要素が中央実行系である。このようなワーキングメモリの機能を測る実験課題として,リーディングスパンテスト(Daneman & Carpenter,1980;日本語版は苧阪,2002)がある。リーディングスパンテストは文章の音読と文中の単語記憶を同時に課す課題であり,文章理解課題の成績と相関があることが特徴である。リーディングスパンテスト遂行中の脳活動を計測した研究(Just,Carpenter, & Keller, 1996;Bunge et al., 2000)によって,ワーキングメモリにはDLPFC,ACCの働きが重要であることが示唆されている.
京屋郁子(総合心理学部)17:30~18:00:「抽象概念をどのように表現するか:抽象概念の構造と表現形式」 これまでの概念研究,カテゴリ研究では,「木」「魚」などの具体的な自然概念や,実験者が恣意的に作成した人工概念が用いられてきた.しかし,「愛」「勇気」などの抽象概念の特性を検討した研究は存在するもののそれほど多くなく,また,それらを含めた包括的な概念モデル,カテゴリ化モデルは提唱されていない.そこでまず本発表では,具象概念と抽象概念を比較することによって得られる抽象概念の構造的特性,表現形式的特性を報告した.構造の点では,具象概念は特徴・階層的であり,抽象概念は関係・並列的であるという先行研究がある.これらの先行研究を受けて行った発表者の2次連想を認める連想実験では,具象語に対する連想は複数次の連想がおこりやすく,連想が深くなりやすい一方で,抽象語に対する連想は刺激語付近に留まる傾向が認められた.しかし刺激語を増やすなど,さらなる検証が必要であることを報告した.また,表現形式の点では,抽象概念はより具体的な情報によって支えられているという概念メタファ仮説がLakoffらによって提唱されている.しかし,発表者の連想実験で具象語と抽象語とを比較したところ(京屋, 2014),必ずしも抽象概念と具体的な情報との繋がりは強くないことが示された.さらに,これらの結果をもとに抽象概念の特性をどのように概念モデル,カテゴリ化モデルに反映させるべきなのかを検討した. -
2017年9月29日(木)に,第12回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)のエポック立命21のK305号室において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
永井聖剛(総合心理学部)16:30~17:00:「大きなモノみて力強く! −知覚刺激が発揮筋力に与える影響−」:刺激−反応適合性研究に関しては空間次元について検討したものが多いが(e.g., Simon & Berbaum, 1990),少数ながら刺激の物理的強度と反応強度(「強い」あるいは「弱い」キー押し)との間の刺激—反応適合性,すなわち,大きい,明るいなど物理強度が大きい刺激に対し強い反応が適合していることが報告されている(Romaiguère et al., 1993).我々はさらに,刺激の単純な物理的性質だけでなく,より抽象化された概念的レベルでの刺激情報が反応出力システムと共有されていることが示唆する結果を示した.また,抽象化レベルでの情報共有は運動出力間でも生じること,すなわち,大きな声を出しているときには,小さな声を出しているときよりも,描画される円の大きさが大きくなることも見出した.したがって,刺激の物理量に関する情報,運動の強さ/大きさに関する情報は,知覚と運動との区別なく,抽象レベルで(例,大-小,強-弱)共通に表現され,相互に影響を与えるものと考えられる.
この仮説に則って近年では,刺激—反応適合性パラダイムによらない実験事態で,刺激サイズや刺激が示唆するパワーと発揮される握力との関係を調べた。その結果,サイズが大きい刺激やレスラー画像に対しサイズが小さい刺激や乳幼児画像よりも大きな握力が発揮されることも示した.
佐藤隆夫(総合心理学部)17:00~17:30:「モノを見るメカニズム」 -
9月19日に大阪いばらきキャンパス(OIC)フューチャープラザ3Fコロキウムにおいて,立命館大学「力触覚応用コンソーシアム」の初回の会合が開かれました.企業関係者30名あまりの方々にお集まりいただき,成功裏に会を終えることができました.野間春生の司会進行のもとにつぎの講演が行われました.
東山 篤規「触覚の心理学的アプローチ」
杉山 進「Siピエゾ抵抗効果を用いた力・触覚センサの実用化」
寒川 雅之「マイクロカンチレバとエラストマを用いた触覚センサの開発と質感計測への応用」
下江 輝「ディープラーニングを用いた素材識別の試み」
この後,懇親会(OICフューチャープラザ1Fイベントホール3)がもたれ,懇親会場では,企業側からの参加者との間で有益な交流ができました. - 学振外国人特別研究員の Valeria Casoldi 氏が8月16日にイタリアから来日され,大阪いばらきキャンパス(OIC) B棟5Fの認知科学研究センターの部屋を研究拠点に活動しています.滞在期間は10月まで.お見かけになることがあれば,お声がけください.
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2017年7月27日(木)に,第11回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)大阪いばらきフューチャープラザ4F研究会室2において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
木村 朝子,橋口哲志(立命館大学情報理工学部)16:30~17:15:「複合現実型視覚刺激が触力覚知覚に与える影響」現実空間と仮想空間を実時間で重ね合わせる複合現実 (Mixed Reality; MR) 空間において,視覚や聴覚による触力覚への影響といった多感覚刺激を活用する研究が注目を集めている.MR空間では,実物体にCGを重畳描画することで実物体の外観を視覚的に変更することができる.一方,人の触力覚は,視覚から影響を受けることが一般に知られていることから,現実空間に重畳描画される人工的な視覚情報(以降,MR型視覚刺激と呼ぶ)が触力覚に影響を及ぼす可能性は高い.本発表では,我々がこれまでに発見したMR型視覚刺激によるいくつかの視触力覚錯覚現象を紹介した.具体的には,実物体と重心位置の異なるCG画像を重畳描画した場合に,重心位置が複合現実型視覚刺激に引きずられ,知覚される重心位置が変化する錯覚現象 (Shape-COG Illusion) や,実物体(剛体)と仮想物体(液体)の運動状態が異なる場合に,力覚を通して実物体の運動知覚に影響を及ぼす錯覚現象 (R-V Dynamics Illusion) などが挙げられる.
不二門 尚(大阪大学大学院医学系研究科)17:15~18:15:「医学的立場から見た立体視:小児の斜視と立体視障害,3D映像と眼の疲労」 HMDを用いた仮想現実(VR)の映像は広く普及しつつあるが,VRでは両眼に視差のある3D映像が用いられ,眼の輻湊系と調節系が解離するため、眼が疲れやすいという問題点がある.視差の大きな3D映画を見た後,内斜視が誘発された小児の症例が報告されたことなどから,近年では3D映画で用いる視差は基本的に1°以内に制限されている.立体視は6歳位まで発達期にあり,この間に眼の平行性が保たれないと立体視機能が失われるため,小児の3D映像視聴は注意する必要がある.一方立体視の弱い,斜視治療後の症例においては,通常の立体視検査で立体視(-)であっても飛び出しの大きな3Dアトラクションは立体的に見える可能性がある.逆にこのような症例では,視差の小さい3D映画は立体的に見えない.今後教育の現場で3D映像が使用される場合には,このような点に配慮する必要がある. - 2017年6月25日(日)10時50分~に,「CHI勉強会2017」が,東京,北海道,関西の3会場をコンピュータでつないで開催されました.関西会場は,認知科学研究センターの支援のもと大阪いばらきキャンパス(OIC)のB棟カンファレンス室が充てられました(幹事団の一人が松村耕平).
- 2017年6月17日(土)に,日本認知科学会主催「知覚と行動モデリング(P&P)研究会」が,認知科学研究センターとの共催のもと,大阪いばらきキャンパス(OIC) B棟1階で開催されました.
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2017年5月26日(金)に,第10回研究センター研究会が,びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命K305において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
大石衡聴(総合心理学部)16:30~17:00:「脳の律動的活動から文処理過程を探る試み」オンラインで言語情報(特に文のレベル)を処理している際の脳活動について検討するにあたっては,一般的には外的事象に関連して惹起される一過性の脳電位変動である事象関連電位 (Event-related potentials: ERPs) が指標として用いられている.それに対して発表者は,自発脳波データに時間周波数解析を実施することによって観察される脳の律動的活動 (oscillatory activity) を指標とすることで,従来の事象関連電位を指標とした研究手法では検証が困難であった文処理過程に付いても検討が可能となることを示すための研究を実施している.具体的には,「予測との不一致」という事象が発生していない場合の文処理過程の内容について検討するにあたって脳の律動的活動の変化パターンを観察することの有用性を実証している(事象関連電位は「予測との不一致」に伴い惹起される).本発表では,処理のある過程で文の心的表象が二つ以上構築可能な文と一つのみの文とを呈示した際の脳波を比較し,前者のみでα帯域(8−13ヘルツ)で有意に大きな事象関連脱同期 (Event-related desynchronization) が観察されたというデータを公表した.それをもとに,事象関連電位のみならず,脳の律動的活動もあわせて用いることによって文処理システムの実態により深く迫ることができると主張した.
小松原哲太(言語教育センター)17:00~17:30「凝縮された意味理解をもたらすカテゴリー化の文脈調整」言語を用いたコミュニケーション方略の中で,語の意味を柔軟に転用するレトリックの表現は,効率的かつ印象的な意味伝達を可能にしている.提喩は,一般的な類によって特殊例を表す (e.g. 甘いもの>菓子) ,あるいは特定の例によってカテゴリー全体を表す (e.g. ごはん>食物) レトリックである.提喩のようなレトリックが日常言語においても重要な役割を担っていることは,一般には知られていない.本発表では,認知言語学の立場 (e.g. Langacker 2008) から,日本語の提喩を考察対象として,提喩が,日常的な名づけの体系から脱し,新しい視点からターゲットとなる概念の特定の側面を際立たせ,浮き彫りにする効果をもつことを示した.本発表で論じた言語現象は,日常言語の意味伝達が,厳密な推論と計算のプロセスにもとづくものであるというよりは,慣習的な言語知識とコミュニケーションの文脈との関係を柔軟に調整するプロセスを基盤としていることを示唆している.参加者との質疑応答では,具体事例の観察にもとづいて,カテゴリー化と意味理解に関する問題が提起され,建設的な意見交換を行うことができた.
岡本雅史(文学部)17:30〜18:00「漫才対話のマルチモーダル分析に基づくコミュニケーション支援:コミュニケーション能力の向上から教育コンテンツのデザインまで」:本発表では,漫才対話をコミュニケーション実践と情報伝達様式という2つの観点から検討した.従来の漫才研究が「お笑い」という話芸の一典型としてどのようにユーモアを生成させているかという観点の研究が主であったのに対し,本発表では,岡本(2007)で提案した〈オープンコミュニケーション〉という,直接の対話者以外の第三者に開かれた対話様式を漫才対話が取ることに着目し,そうした対話の場の外に向けられる外部指向性が視線と身体方向というコミュニケーションのモダリティ間のギャップによって実現されていることを明らかにした.一方,言語学的にはツッコミ発話が先行発話行為,先行発話内容,対話者の非言語行動,という複数のレベルにまたがる不適切性の指摘として実現されることを示し,そうした複数レベルにまたがる言及の指向性が,ヒトの事態把握における高次認知能力としての理解プロセスの解明に繋がる可能性を示唆した.このように漫才対話をコミュニケーション的に捉える本研究は,次世代コミュニケーション能力の育成や対話型の教示コンテンツのデザインの指針の策定に寄与するものであると考えられる.
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2017年3月31日(金)に,第9回研究センター研究会が,大阪いばらきキャンパス(OIC)B棟4Fの研究会室1において開かれました.演者,時間,講演内容は次のとおりです.
山本博樹(総合心理学部)16:00~17:00 「授業デザイナ-に課された支援的説明の難題」:本発表では,授業デザイナ-に課された支援的説明の難題について,理論と実践の両面から検討した.そもそも,教師が授業デザイナ-と称して授業に関与し始めたのは,Norman (1988) により「自称」デザイナ-の身勝手さが糾弾され,学習者中心に軸が移行し,支援重視へとデザイン原則が転換した後,である.よって,「本当の」授業デザイナ-とは,学習支援に献身的な努力をする者を指すはずである.特に,リアルな学習支援の場面では支援的説明の提供という形をとると考えられる.この実践事例として,読解に苦戦する二部中学校へ通う生徒への支援として,教師が自作教材を作成し,メタ説明をデザインした授業実践を紹介した (山本, 2009).しかし,併せて,支援的説明を始発させるはずの支援要請の把握時に,児童生徒が支援要請を表出しなかったり,表出された要請を支援者が捏造したりするという難題が生じることもデ-タや事例を基に指摘した.この難題の解消を目指すとき,学習者の「つまずき」(failure) を主体性の発露とみなし,この発露を支援要請として受給するというロジックに一定の可能性があることを述べた.発表では,このロジックに対する解釈や考察,今後の課題について相互に意見交換を行った.
春日彩花(大阪大学)17:00~17:30 「学習者の「つまずき」の一側面:素朴な概念に着目して」: 学習のつまずきに関わる要素の1つとして,日常生活の中で構築される素朴な概念(プリコンセプション)を取り上げた.プリコンセプションは,学校で教えられる概念(科学的概念)とは必ずしも一致しないものの,首尾一貫性があり,日常生活では問題が生じず繰り返し使われるため,強固で変化しにくいという特徴がある.本発表では,プリコンセプションから科学的概念への変容過程を調べるために行った実験を,特に概念変容に至らなかったケースに注目して報告した.実験では,大学(院)生67名に中学校で学習する力学課題を提示した.その結果,多くの対象者が,科学的概念と不一致のプリコンセプションを所持していた.さらに,概念変容モデル(Hashweh, 1986)に基づいて教材を作成し,全問正答者を除く52名に提示した後,事後テストを行った.その結果,プリコンセプションを科学的概念へと変容した「概念変容群」,プリコンセプションを維持し続けた「プリコンセプション維持群」,プリコンセプションを一部変化させた「プリコンセプション変容群」の3パターンが存在していたことが分かった.また,①プリコンセプションと科学的概念の違いが正確に認識されないこと,②科学的概念に対して生じた疑問が解消されないこと,③プリコンセプションより科学的概念のほうが有用であると認識されないことによって,科学的概念への変容が達成されない可能性が示された.
北村尊義(情報理工学部)17:30~18:00 「続けるためのICTの利用」:本発表では,つまずきに関する話題提供として,(1)つまずき克服のための支援方策と,(2)そもそもつまずかないようにする方策の研究を1件ずつ紹介しました.(1)は,環境配慮行動の習慣化につまずくという課題に対して,ゲーミフィケーションを用いる研究です.ゲーミフィケーションは困難な課題にゲーム要素を取り入れることで実践を容易にする手法ですが,環境配慮行動の場合は実践したかどうかの計測が難しい行動が多く存在し,導入が難しいという問題がありました.本研究では,この問題に対し,仮想エージェントとの信頼構築をすすめる恋愛ゲーミフィケーションを提案し,評価しました.(2)は,カーナビゲーションを使い始めのうちは音声案内による指示がわからない,距離感がつかめずに間違えるというつまずきに対して,パーソナライズ化した自分のつぶやき(「あとちょいで左」など)を利用するという手法の研究です.自分のつぶやきをカーナビゲーションの音声案内に用いることの効果については不明な部分が多いのですが,本研究の実験結果では一般的な音声案内と比べての正答率が有意に高いとう結果を得ることができました.(1)と(2)はともにICTの可能性を活用する研究であり,つまずきの克服とつまずきの撤廃という両方向からのアプローチについてのディスカッションを求めました.
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2017年3月15日(水)16時30分~びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命K306.
Hiroshi Ono(York大学) 特別セミナー「Revising cyclops and his eye」
両眼視空間のサイクロピアン・アイに関する研究を紹介した.サイクロピアン・アイとは,両眼(2つの光学的原点)を使って物を見ているにもかかわらず,その物の視方向が特定の方向に見える(視覚的原点は1つ)現象である.
セミナーでは,認知科学のさまざまな研究者から積極的な意見が出され.日本語と英語が混在したセミナーになった. -
2017年1月30日(月)16時30分~びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21 K306
島川博光 「生活行動の丁寧さからの高齢者の生活意欲の推定」
近年,独居高齢者が要介護状態に陥らないように,彼らに生活意欲を高く維持してもらう必要がある.日常生活の乱れは,独居高齢者の身体的かつ精神的な衰えをあらわすと考えられるため,生活意欲が低下する前兆と捉えることができる.
本発表では,日常の生活行動を識別し,識別された各生活行動の丁寧さを判定する手法を提案する. 本手法では,高齢者のプライバシーを考慮して輝度分布センサを用いる.輝度分布センサから得られる輝度を用いて機械学習することで生活行動を識別する.識別された各生活行動について,人の体幹の動かし方の違いから生活行動の丁寧さを判定するモデルを作成する.
手法の評価実験として,掃除,調理,食器洗いといった三つの生活行動における識別率と,掃除を実施する丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いを検証した.識別結果のF値は それぞれ0.975,0.912,0.927となり,すべての生活行動で9割を越える精度で識別した.丁寧さを判定するモデルの当てはまり度合いをあらわすNagelkerke R2 は0.599となった.本手法を用いて作成したモデルは,日常生活から長期的に輝度データを取得し,生活意欲の低下を認知するために問題ない精度であると考えられる.
林 勇吾 「異なる視点に基づく人間/人間の協同問題解決:エージェントを用いた実験的検討」
本発表では,協同問題解決研究で検討されている諸問題を取り上げ,異なる視点に基づくインタラクション方略の有効性や妥当性基準の違いによって発生する葛藤状態について紹介した.そしてその知見をベースに,図地反転の原理を応用して作成した異なる視点に基づく協同問題解決のための実験課題を紹介した(林・三輪・森田,2007).本課題を用いた問題解決者ペアの発話プロトコル分析により,自身の視点への固着(バイアス)が他者視点の誤解やコミュニケーションの齟齬を引き起こしていることが確認された.また本発表では,複数人で行う協同問題解決において,どのような要因が視点取得やコミュニケーションの齟齬に影響を及ぼすのかについての紹介も行った.この検討に際しては,ネットワーク上で動作する複数の自律型の対話エージェントを人間のサクラとして開発し,メンバーの視点の多様性や葛藤の度合いを操作した(林・小川,2012).本実験システムを用いて得られた成果として,グループ内に異なる視点を有する少数派が存在した場合において,グループ内に同数の異なる視点を有する場合よりも異なる他者の視点を取得しようとする傾向が確認された.発表では,これらの結果に対する解釈や考察,今後の課題についての意見交換を行った.
東山篤規「鏡の中の空間的広がり」
鏡の中に移されるターゲットの虚像までの知覚された距離や奥行きについて話した.平面鏡を用いてたとえば20m離れたターゲットを映したとき,ターゲットは光学的には虚像として鏡の中に定位するが,われわれがその虚像を観察したとき,虚像の実際の位置ではなく,それよりも近い位置(14m)に定位しているように知覚される.このような距離の短縮化は,反射面の小さな鏡に対していっそう促進される.また凸面鏡を用いてターゲットを映したとき,凸面鏡からターゲットの虚像までの距離は,鏡の曲率の増加に伴って小さくなるが,虚像までの知覚された距離は,これに反して,鏡の曲率の増加に伴って大きくなる.これらの事実は,ターゲットの虚像を観察したとき,虚像が定位する位置にターゲットが位置しているように見えていないことを意味する.また,ターゲットを3種類の金属鏡(銀,青銅,白銅)を使って映したとき,銀メッキのされた通常の鏡よりも,青銅や白銅で作られた鏡の方が,虚像までの見かけの距離が大きく,虚像間の見かけの奥行きも大きくなることが報告された. -
2016年11月21日(月)17:00~衣笠キャンパス洋洋館 6F第1研究会室
下江輝(情報理工学部野間研究室)「触覚センサによる素材識別に関する研究紹介」
ひとの触覚特性を模した機械学習モデルを用いセンサデータを解析することで,ひとの触覚を機械上で表現しようと考えている.ひとの感覚受容器の代わりとしてのMEMS触覚センサを用いて得られるデータからどの程度の識別が可能であるか調べるため,機械学習にて解析したところ,28種の素材を80%以上の精度で認識することが可能と分かった.今後、ひとが認識過程として持っているであろう,教師なしの学習などでモデルを拡張していき,人工触覚の実現を目指す.
佐藤克成(奈良女子大学)「人の知覚特性を利用した温冷感提示手法」
触感を記録・再生する技術の中で,温冷感の提示技術は,環境の状態認識や触対象の識別を実現するために必要な要素である.しかし既存の温冷感提示技術には,時間応答性の悪さや放熱器による装置の大型化など,課題が多い.これらの課題を解決するために,人の知覚特性を活用した手法を提案している.本講演ではその1つとして,温刺激と冷刺激を並置することで実現した,時間応答性の高い小型な温冷感提示装置を紹介する.
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2016年9月20日4時30分〜 びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21,K306
土田宣明 「運動抑制に影響する要因の年齢差」
本発表では,運動コントロールへの加齢効果とその特性を,運動抑制の失敗に注目して検討した.対象となったのは,若年成人35名と高齢者35名であった。2種類のスイッチを用い,複数の条件のもとで,スイッチを押し分ける(あるいは握り分ける)課題を実施し,分析を行った.主たる実験の結果は,以下の2点であった.1)高齢者では反応タイプや音刺激が運動抑制の失敗に強く影響していること.2)若年成人は全体的に運動抑制の失敗は少ないものの,視覚刺激からの誘導要因が強く影響していることが分かった.以上のことから,運動抑制に影響する要因には年齢差が存在すること,高齢者においては,運動に付随する神経興奮が運動抑制に強く影響することが示唆された.その他,今後の課題について報告し,意見交換を行った。
東山篤規 「視覚面の傾斜の異方性」
きめの勾配は,平面が傾いて見えるためには必要な刺激条件とされている.本発表では,さまざまなきめのパターンを用いて,その傾きに異方性があるのかどうかということを話題にした.実験では,床,天井,左向き側壁,右向きの側壁を表す各パターンの勾配を変えて,その見かけの傾きを被験者に評定させた.実験の結果によれば,床パターンが前額面にもっとも近くに見え,他の3面はそれよりも大きく傾いたように見えた.また,きめの勾配のうち,もっとも大きく面を傾ける勾配は,遠近勾配であり,運動勾配は,遠近勾配ほど強力な効果を持ちえなかった.
平井慎一 「柔らかい触覚センサ」
本発表では,柔らかい素材を用いた触覚センサを紹介した.一つ目は,感圧導電布を用いたセンサである.感圧導電布は,伸縮により抵抗が変化する感圧導電糸を織って作る.このセンサは,触覚,滑り覚,近接覚を実現することができる.布センサを用いて,8種類のテクスチャーを識別した結果を示した.二つ目は,柔らかい指先に埋め込むことが可能な力覚センサである.このセンサは,磁石と磁場を検出するホール素子から構成される.指先の変形によって生じる磁石の動きをホール素子で検出することにより,指先に作用する力を計測することができる.このセンサを内蔵した指先で物体を把持し,操作すると,把持物体と他の物体との接触や衝突を検知することができた.
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2016年7月1日4時30分〜 衣笠キャンパス 洋洋館 6F 第2研究会室
岡本雅史 「情報デザインの認知言語学的アプローチ―情報デザインから関係デザインへ」
田浦秀幸 「心理言語学研究におけるブレーンイメージングデータ」
大石衡聴 「言語理解過程における一般的認知機能の役割について」
- 2016年5月27日4時30分〜 びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21,K305
矢藤優子 「行動計測機器を用いた幼児の認知・社会的行動発達の指標化」
松村耕平 「自動車内インタラクションのデザイン」
丸山勝久 「ソフトウェア進化支援におけるプログラム理解活動の可視化」
- 2016年3月17日4時30~ 衣笠キャンパス学而館第2研究会室
林勇吾 「擬人化エージェントを用いたインタラクションに関する認知科学的研究」
島川博光 「ふるまいの測定からのモティベーションの同定」
山本博樹 「高校生への説明と理解支援モデル」 - 2016年1月15日4時30~ びわこ・くさつキャンパス(BKC)エポック立命21,K308
篠田博之 「視覚研究とその応用」
服部雅史 「論理的推論の確率モデルと推論の対称性」
高田秀志 「帰納型プログラミング学習環境構築の試み」 - 2015年10月9日4時00~ 衣笠キャンパス学而館第4研究会室
北岡明佳 「並置混色と明るさ・色の錯視の関係」
野間春生 「ヒトの触覚機能の再現を目指す触覚センサの開発」
田中省作 「速読教材における多様な「チャンク」の同定」